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似た薬の違い 市販薬・OTC

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『トラベルミン』と『トラベルミンR』、同じ乗り物酔い止めの薬の違いは?~効果と副作用、旅行のタイプによる使い分け

回答:口の乾きにくい『トラベルミン』、眠くなりにくい『トラベルミンR』

 『トラベルミン』と『トラベルミンR』は、どちらもOTC医薬品として販売されている乗り物酔いの薬です。

 『トラベルミン』は、口が渇きにくい薬です。
 『トラベルミンR』は、眠くなりにくい薬です。

 そのため、水をよく飲むようになってトイレが近くなると困る人は『トラベルミン』、眠くなると困る人は『トラベルミンR』を選ぶのが基本になります。

 

回答の根拠①:乗り物酔いに対する効果の比較

 『トラベルミン』は第一世代の抗ヒスタミン薬「ジフェンヒドラミン」を中心とした製剤、『トラベルミンR』は抗コリン薬「スコポラミン」を中心とした製剤です。

※『トラベルミン』の配合成分
 ジフェンヒドラミン、ジプロフィリン
※『トラベルミンR』の配合成分
 スコポラミン、ジフェニドール、カフェイン、ピリドキシン

 「ジフェンヒドラミン」のような第一世代の抗ヒスタミン薬と「スコポラミン」のような抗コリン薬は、どちらも乗り物酔いに対する効果が確認されている薬ですが、その効果に大きな差はなさそうです1,2)。そのため、基本的には”どちらを選んでも良い”と言えます。

1) Am Fam Physician.90(1):41-6,(2014) PMID:25077501
2) Cochrane Database Syst Rev . 2022 Oct 17;10(10):CD012715. PMID:36250781

 

乗り物酔いは「治療」よりも「予防」が効果的

 乗り物酔いは、症状がはっきり現れてから薬を飲んで「治療」をするより、なんともない状態のうちに予め薬を飲んでおく「予防」の方が確実な効果を期待できます2,3)。そのため、乗り物酔いの対策を考える際には、苦手な乗り物に乗り込む前、まだ快適な環境にいる状況で薬を服用しておくことをお勧めします。

 なお、乗り物酔いの「予防」効果については「スコポラミン」のような抗コリン薬の方が、「治療」効果については「ジフェンヒドラミン」のような第一世代の抗ヒスタミン薬の方が、それぞれやや有利な可能性がある…とする報告があります2,4)が、まだ明確ではありません。

3) BMJ.343:d7430,(2011) PMID:22138695
4) CNS Neurosci Ther.22(8):715-22,(2016) PMID:27160425

回答の根拠②:よくある副作用の違いで使い分ける

 効果はあまり変わらない2つの薬ですが、「ジフェンヒドラミン」のような第一世代の抗ヒスタミン薬は眠くなりやすい、「スコポラミン」のような抗コリン薬では口が渇きやすい、といったように、よく現れる副作用にははっきりと違いがあります。そのため、”どんな副作用が出ると困るのか”という視点で選ぶのが賢い使い分けになります。

抗コリン薬を含まない『トラベルミン』は、口が渇きにくい

 抗コリン薬の「スコポラミン」はほとんど眠くならないですが、口の乾きがより強く現れやすい、という特徴があります2)。口の乾きがあっても大して気にならない人も多いですが、中にはこの口の乾きが気になって水分摂取量が多くなり、結果として”トイレが近くなる”ことがあります。

 そのため、気軽にトイレに行けない自動車やバス、電車での移動がある旅行の場合は、『トラベルミン』のように「スコポラミン」を含まない商品を選んでおくのが無難です。

抗ヒスタミン薬を含まない『トラベルミンR』は、眠くなりにくい

 「ジフェンヒドラミン」のような第一世代の抗ヒスタミン薬は、副作用で眠くなりやすいという特徴があります1,2)。寝ているとあまり乗り物酔いしない5)ので、苦手な乗り物の移動時間は”眠ってやり過ごす”ことも良い方法になりますが、移動時間も会話や景色を楽しみたい場合には不向きです。
 また、あまり効き目が長続きしてしまうと、観光地に到着してからも眠気が残っていて、肝心の観光やショッピングの時間もぼんやりしたまま、といった事態も起こりかねません。

 こういった”眠くなると困る”という人の場合には、『トラベルミンR』のように「抗ヒスタミン薬」を含まない商品を選んでおくのが無難です。

5) Aviat Space Environ Med.77(12):1213-23,(2006) PMID:17183916

 

薬剤師としてのアドバイス①:1日の使用回数も大事な選択基準

 乗り物酔いの薬は、1日の使用回数が1回のものから3回のものまで色々ありますが、この使用回数も商品選びの際の重要な選択基準になります。

 1日1回の服用で良い薬は、1回飲めばそれだけで効果が長続きするため、まとまった長時間の移動がある海外旅行などの際には便利です。しかし、効果と一緒に副作用も長引くため、細切れな移動をする旅行では、途中に立ち寄った観光地でも眠い、といったことが起こります。
 一方、1日に2~3回服用できる薬は、必要に応じてピンポイントのタイミングで使用できるため、細切れな移動を伴う国内旅行などに向いています。また、1回薬を飲んでも「まだ飲める薬が残っている」という安心感が強い”御守り効果”として作用することもあります。

 

薬剤師としてのアドバイス②:ほとんどの商品は両方の成分を含む

 現在、日本で市販されている乗り物酔いの薬のほとんどは「第一世代の抗ヒスタミン薬」と「抗コリン薬」の両方を配合したもののため、安易に薬を選ぶと両方の薬を服用することになります。これでは最悪の場合、眠気と口の乾きのどちらの副作用にも悩まされることになります。

 特に副作用に困らないのであれば問題ありませんが、眠気や口の乾きがあると旅行に支障を来たす場合には、『トラベルミン』や『トラベルミンR』のように”片方の薬だけの商品”を選ぶのがお勧めです。

 

ポイントのまとめ

1. 『トラベルミン』は抗ヒスタミン薬の製剤で、眠くなりやすいが口の乾きは少なめ
2. 『トラベルミンR』は抗コリン薬の製剤で、眠くならないが口は乾きやすい
3. いま販売されている乗り物酔いの薬のほとんどは、両方の成分を含む

 

 

カタログスペックの比較

◆効能・効果
トラベルミン:乗物酔いによるめまい・吐き気・頭痛の予防及び緩和
トラベルミンR:乗物酔いによるめまい・吐き気・頭痛の予防及び緩和

◆配合されている有効成分
トラベルミン:ジフェンヒドラミン、ジプロフィリン
トラベルミンR:スコポラミン、ジフェニドール、カフェイン、ピリドキシン

◆乗り物酔いに効果を発揮する中心的な薬
トラベルミン:ジフェンヒドラミン(第一世代の抗ヒスタミン薬)
トラベルミンR:スコポラミン(抗コリン薬)

◆1日の使用回数
トラベルミン:3回まで(1箱6回分)
トラベルミンR:2回まで(1箱6回分)

◆使える年齢
トラベルミン:15歳以上
トラベルミンR:11歳以上

◆製造販売元
トラベルミン:エーザイ
トラベルミンR:エーザイ

 

+αの情報:「音楽」や「ガム」も乗り物酔いに効果的

 軽い吐き気を感じてきたときに、自分の好きな音楽を聴きながら呼吸を整えることで、薬物治療の半分くらいの効果があることがわかっています8)。また、ペパーミント味のガムを噛むことでも、乗り物酔いの症状を緩和できる、と報告されています9)。

 薬では副作用や使用回数の問題から使い勝手が悪い際には、こうした”非薬物療法”も一緒に試してみてください。

8) J Travel Med.200310(2):108-11,(2003) PMID:12650654
9) 人間工学 43(6):341-8,(2007)

~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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