【新刊のお知らせ】「1日1論文 30日で薬剤師としてレベルアップ!医学論文の活かし方」
2020年10月22日に金芳堂さんから新刊「1日1論文、30日で、薬剤師としてレベルアップ!医学論文の活かし方」が発売になります。
「論文を読む」とは言うものの、そこから得た情報を具体的に現場でどう活用すれば良いのか、他の薬剤師はどんな感じ方をしているのか、どんなところが気になったのか、自分と異なる意見になった背景や理由は何だろうか・・・1人で論文を読んでいるだけではなかなか気付けない、「多様性」に触れられる論文抄読会やEBMワークショップの良さを何とか本として再現できないか、日頃から勉強会等でお世話になっている上田昌宏先生・青島周一先生と一緒に考えて作りました。
「1日1論文、30日で、薬剤師としてレベルアップ!医学論文の活かし方」の特徴
本書は、薬剤師が知っておきたい各分野の有名なランドマーク論文を「お題論文」として、26人の薬剤師の先生方からの「自分はこの論文をどう読み、現場でどう活かしたか」をまとめたものです。論文に書かれた内容、その論文で使われている専門用語を簡単に解説した後、1つの論文に対して3~4人の薬剤師による解釈や具体的な活用方法の紹介が続く構成になっています。
論文を読むことで、皆に共通する何か1つの明確な「正解」や「行動指針」がわかると思っている人は少なくありません。しかし実際には、同じ論文を読んでも、気になるポイントや解釈が人によって様々に異なることがあります。場合によっては真逆の意見になることすらあります。同じ薬剤師であっても立場や経験・価値観は人それぞれに異なるため、これはある意味当然のことと言えます。
大切なのは、こうした相違が生まれた背景や理由を探り、自分の知らなかった価値観や見えていなかった世界を知ることです。自分たちが日々接する患者さんにも、その人にはその人の大切な価値観があります。自分の意見はどういった価値観に影響を受けているものなのか・・・他の人と意見を交わしてその傾向や色合いを知り、さらに自分とは異なる意見を生むような価値観の多様性を受け止める懐の深さを身につけてこそ、目の前の患者さんそのひと個人にとっての「最善の医療」を柔軟に考えることができるようになると思っています。
勉強会を開催しづらい今、本書をこうした「多様性」に触れられる機会として、1人で勉強しているだけではなかなか得にくい気付きのきっかけとして役立ててもらえたら嬉しいです。
・・・なお今回も、空きスペースは色んな小ネタ・Tipsが所狭しと並んでいますので、そちらも楽しんでいただけたらと思います。
本書籍の5つの特徴:勉強や実務に役立つよう意識したポイント
1. 論文から得た情報を実際の現場・業務でどう活かしたのか、色々な切り口で紹介
2. 見開きで論文の内容を簡単に紹介しているので、論文に抵抗のある人でも読みやすい
3. 論文を読む際によく”壁”になる専門用語や統計知識も、同じページ内にすぐ解説がある
4. 「誰が書いた意見か」はわからない構成になっているので、先入観なく色んな意見に触れられる
5. 興味が湧いたらすぐに論文そのものを読める「サポートページ(金芳堂Webサイト内)」付き
「論文を難しい」と感じるのは、実は「英語だから」ではなく「使われている用語がわからない」「そもそも何を目的にした文章なのかわからない」という要因が大きいこともあります。そういった「わからない」を一つずつ解消しながら、1日1論文をテーマに、30日で読み終わる構成です(*´ω`*)
・Twitterで紹介していただきました。
めちゃくちゃに読みやすいです。こういうのをブログでやってるドクターはたまに見るけど、書籍として複数の人の目と手を通過した記事はやはり圧倒的に読みやすいし、さまざまな概念も初歩からきちんと押さえてあるし、何より筆力が高い。学生が最初に読んでもいい、現場の医療者がじっくり読むのもいい pic.twitter.com/NLTEDcHmpx
— 病理医ヤンデル (@Dr_yandel) December 10, 2020
・レビューも書いていただいています。
https://www.rincos-diary.com/entry/2020/11/18/203655
≪書籍データ≫
◆書籍名:1日1論文、30日で、薬剤師としてレベルアップ!医学論文の活かし方
◆出版社:金芳堂
◆発売日:2020/10/22
◆目次:公式ページから目次・前書き、執筆者一覧を確認できます
【お題論文】
1.健康な成人のインフルエンザに対する、新薬「バロキサビル」 vs 旧薬「オセルタミビル」
N Engl J Med. 2018; 379: 913-923. PMID: 30184455/CAPSTONE-1試験
2.介護施設に居住している認知症患者の肺炎に対する、抗菌薬投与の有益性
Arch Intern Med 2010; 170: 1102-1107. PMID: 20625013/CASCADE試験
3.風邪に対する抗菌薬投与は、肺炎をどのくらい予防するか
Ann Fam Med. 2013; 11: 165-172. PMID: 23508604
4.「うがい」の習慣は、風邪の予防にどのくらい役立つか
Am J Prev Med. 2005; 29: 302-307. PMID: 16242593
5.風邪の初期に飲む市販薬 「葛根湯」 vs 「パブロンゴールドA」
Intern Med. 2014; 53: 949-956. PMID: 24785885
6.風邪で小児が夜間に咳をしている際、「ハチミツ」で症状を軽減できるか
Pediatrics. 2012; 130: 465-471. PMID: 22869830
7.アレルギー性鼻炎に対する、新薬「ビラスチン」 vs 旧薬「フェキソフェナジン」
Allergol Int. 2017; 66: 97-105. PMID: 27421817
8.CVDリスクを抱える2型糖尿病患者に対する、厳格な血糖降下療法の有益性
N Engl J Med. 2008; 358: 2545-2559. PMID: 18539917/ACCORD試験
9.DPP-4阻害薬の「サキサグリプチン」は、糖尿病患者の心血管イベントを抑制するか
N Engl J Med. 2013; 369: 1317-1326. PMID: 23992601/SAVOR-TIMI53 試験
10.SGLT-2阻害薬「エンパグリフロジン」は、糖尿病患者の心血管イベントを抑制するか
N Engl J Med. 2015; 373: 2117-2128. PMID: 26378978/EMPA-REG OUTCOME試験
11.SGLT-2阻害薬「カナグリフロジン」は、糖尿病患者で腎保護効果を発揮するか
N Engl J Med. 2019; 380: 2295-2306. PMID: 30990260/CREDENCE試験
12.減量や生活習慣の改善は、2型糖尿病の発症を抑制するか
N Engl J Med. 2002; 346: 393-403. PMID: 11832527
13.脂質異常症の男性に対する、「プラバスタチン」の一次予防効果
N Engl J Med. 1995; 333: 1301-1307. PMID: 7566020/WOSCOPS試験
14.「フェノフィブラート」は、2型糖尿病を伴う脂質異常症患者の心血管イベントを抑制するか
Lancet. 2005; 366: 1849-1861. PMID: 16310551/FIELD試験
15.「エゼチミブ」を「シンバスタチン」に追加することの有益性
N Engl J Med. 2015; 372: 2387-2397. PMID: 26039521/IMPROVE-IT試験
16.「ARB」と「ACE阻害薬」に期待された、併用による上乗せ効果
N Engl J Med. 2008; 358: 1547-1559. PMID: 18378520/ONTARGET試験
17.高血圧患者に対する、120mmHg未満を目指した厳格な降圧治療の有益性
N Engl J Med. 2015; 373: 2103-2116. PMID: 26551272/SPRINT試験
18.「Ca拮抗薬」や「ACE阻害薬」は、「サイアザイド系利尿薬」よりも優れているか
JAMA. 2002; 288: 2981-2997. PMID: 12479763/ALLHAT試験
19.80歳以上の高齢者に対する、降圧治療の有効性と安全性
N Engl J Med. 2008; 358: 1887-1898. PMID: 18378519/HYVET試験
20.心不全に禁忌とされてきた「β遮断薬」は、心不全の治療薬となり得るか
Lancet. 1999; 353: 9-13. PMID: 10023943/CIBIS-II試験
21.アルドステロン拮抗薬「スピロノラクトン」は、心不全患者の予後を改善するか
N Engl J Med. 1999; 341: 709-717. PMID: 10471456/RALES試験
22.心筋梗塞後の不整脈を、抗不整脈薬で抑制することの有益性
N Engl J Med. 1991; 324: 781-788. PMID: 1900101/CAST試験
23.心房細動患者に対する、新薬「アピキサバン」 vs 旧薬「ワルファリン」
N Engl J Med. 2011; 365: 981-992. PMID: 21870978/ARISTOTLE試験
24.動脈硬化性疾患の患者に対する、新薬「クロピドグレル」 vs 旧薬「アスピリン」
Lancet. 1996; 348: 1329-1339. PMID: 8918275/CAPRIE試験
25.高尿酸血症患者に対する、新薬「フェブキソスタット」 vs 旧薬「アロプリノール」
N Engl J Med. 2018; 378: 1200-1210. PMID: 29527974/CARES試験
26.ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌は、自覚症状のない人でも有益か
Cochrane Database Syst Rev. 2015; (7): CD005583. PMID: 26198377
27.SSRI/SNRIに抵抗性のあるうつ病患者に対する、NaSSA「ミルタザピン」の上乗せ効果
Health Technol Assess. 2018; 22: 1-136. PMID: 30468145
28.がん治療において、「補完代替医療」を選択することのリスク
JAMA Oncol. 2018; 4: 1375-1381. PMID: 30027204
29.HPVワクチンの接種は、子宮頸部上皮内腫瘍(子宮頸がんの前病変)を減らすか
BMJ. 2019; 365: l1161. PMID: 30944092
30.認知機能障害が軽度のうちから、「コリンエステラーゼ阻害薬」を服用することの有益性
Cochrane Database Syst Rev. 2012(; 9): CD009132. PMID: 22972133
【コラム】
臨床試験で気をつけなければならない、いろいろな「バイアス」 / 「臨床試験」と「人体実験」の違いは? / Intention to Treat解析とper protocol解析 / エビデンスレベル / 相反する結果を示した論文に出合った時は? / 双子座と天秤座の患者には「アスピリン」が効かない? / HPVワクチンは今も「定期接種」の対象
【Tips】
PECO / RCTが適さない研究テーマ / 漢方薬の英語表記 / 新薬についての情報源 / 平均値と中央値 / 内的妥当性と外的妥当性 / プラセボ群を設定する理由 / 背景疑問と前景疑問 / 評価項目の区別 / αエラーとβエラー / 除外基準 / 患者背景がわかるTable1 / 類似研究との比較 / 昔の論文は読みにくい? / 撤回論文 / 二重盲検が難しい研究 / 中間解析 / サブグループ解析 / スピン / 利益相反(COI) / 薬の効果をどう表現するか
既刊・「比較と使い分け」シリーズもよろしくお願いします
2017年10月発売の「薬の比較と使い分け100(第11刷)」、2019年11月発売の「OTC医薬品の比較と使い分け(第3刷)」、どちらも増刷のたびに新しい情報を書き加えています。それぞれ羊土社さんの公式ページから更新情報を確認できますので、ぜひ活用してくださいませ。
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