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似た薬の違い 高血圧 心不全 未分類

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『セララ』・『ミネブロ』・『ケレンディア』、同じミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の違いは?~降圧効果と適応症

回答:心不全に使う『セララ』、降圧効果が強めの『ミネブロ』、腎保護を目的に使う『ケレンディア』

 『セララ(一般名:エプレレノン)』、『ミネブロ(一般名:エサキセレノン)』、『ケレンディア(一般名:フィネレノン)』は、いずれも「ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)」に分類される薬です。

 『セララ』は、主に心不全の治療に使われます。
 『ミネブロ』は、降圧効果が強めで、高血圧治療に用いられます。
 『ケレンディア』は、降圧よりも腎臓の保護を主目的に使います。

 どの薬にも血圧を下げる作用はありますが、心不全がある人には『セララ』、血圧をしっかり下げたい場合には『ミネブロ』、血圧をあまり下げずに腎保護効果を得たい場合には『ケレンディア』を選ぶのが一般的です。

 

回答の根拠①:MRAの適応症の違い

 「エプレレノン」「エサキセレノン」「フィネレノン」は、いずれもレニン・アンジオテンシン系の最下流にある「アルドステロン」の作用をブロックすることで、血圧を下げたり、心臓や腎臓を保護したりする効果を発揮する薬です。 

 基本的な作用メカニズムは同じですが、降圧効果の強さや使用実績などから適応症が異なり、「エプレレノン」は高血圧や心不全1)、「エサキセレノン」は高血圧2)、「フィネレノン」は慢性腎臓病3)に使われています。

※MRAの適応症

高血圧心不全2型糖尿病を合併する慢性腎臓病
エプレレノン
エサキセレノン
フィネレノン

 1) セララ錠 インタビューフォーム
 2) ミネブロ錠 インタビューフォーム
 3) ケレンディア錠 インタビューフォーム

 

回答の根拠②:「エプレレノン」~心不全に対する使用実績が豊富な”Fantastic Four”の一角

 MRAは、SGLT-2阻害薬やβ遮断薬、ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)と並んで、心不全治療の中核を担う「Fantastic Four」の一角に挙げられている薬4)です。

 現在のところ心不全に対して保険適用があるMRAは「エプレレノン」と「スピロノラクトン」だけですが、「エプレレノン」は「スピロノラクトン」よりも性関連の副作用が少なく、また心不全の悪化や死亡を防ぐ効果が高いという報告5)もあるため、心不全治療の中心的な薬として広く用いられています。

 4) Eur Heart J.42(6):681-683,(2021) PMID:33447845
 5) BMC Cardiovasc Disord.24(1):489,(2024) PMID:39271992

  

回答の根拠③:「エサキセレノン」~降圧効果が高めなMRA

 「エサキセレノン」は、2.5mgで「エプレレノン」50mgとほぼ同等、5mgに増量するとより高い降圧効果を得られること6)、さらに夜間の血圧上昇をよりしっかりと抑えること7)が報告されているなど、血圧の安定したコントロールという点では他のMRAよりも優れている面があります。

 「エサキセレノン」は2019年に日本で開発された比較的新しい薬です。心不全や慢性腎臓病に対する効果も示唆されてはいますが、まだ使用実績も少ないこともあり、現在のところは高血圧にしか保険適用がありません2)。

 6) Hypertension.75(1):51-58,(2020) PMID:31786983
 7) Am J Hypertens.34(5):540-551,(2021) PMID:33165570

 

回答の根拠③:「フィネレノン」~降圧効果は低めで腎保護を目的に使うMRA

 「フィネレノン」もMRAに分類される薬ですが、降圧作用は弱く8)、あまり血圧を下げることがありません9)。そのため高血圧治療ではなく、腎保護効果を主目的に、2型糖尿病を合併した慢性腎臓病の治療を目的に使われます3)。
 薬を使っても腎臓が完全に元通りになることはありませんが、腎機能の低下スピードを抑えることができます10)。

 ただ、MRAとしての作用メカニズムを持つため、降圧作用が無いわけではありません。併用薬や腎機能によっては3~7mmHg程度の血圧低下が起こることも報告されている11,12)ため、使う人によっては低血圧の副作用に注意が必要です。

 「フィネレノン」も2021年に登場した新しい薬のため、使用実績はまだ多くありませんが、2025年2月に慢性心不全の適応追加の承認申請が行われています。

 8) Front Pharmacol.13:896947,(2022) PMID:35784710
 9) Clin J Am Soc Nephrol.18(5):602-612,(2023) PMID:36927680
 10) N Engl J Med.383(23):2219-2229,(2020) PMID:33264825
 11) Clin J Am Soc Nephrol.18(5):602-612,(2023) PMID:36927680
 12) Clin Kidney J.16(2):293-302,(2022) PMID:36864892

 

薬剤師としてのアドバイス:「高K血症」の副作用に注意

 MRAは、どの薬も血液中の「カリウム(K)」を増やす作用があります。この血液中のカリウムが増え過ぎると、しびれや倦怠感、動悸を起こし、時には不整脈を起こすこともあります。そのため、MRAを使っている人は、血清カリウム値を測定し、その値を参考にしながら薬の量を考える必要があります。

※エプレレノン、エサキセレノンの減量・中止目安 1,2)
5.0mEq/mLを超える:減量を検討
5.5mEq/mLを超える:減量または中止
6.0mEq/mLを超える:ただちに中止

※フィネレノンの中止目安 3)
5.5mEq/mLを超える:ただちに中止

 なお「高K血症」は、他にもMRAとよく併用するARBやACE阻害薬でも起こりやすいほか、食事からの過剰摂取も原因になります。カリウムは、バナナのように、”健康に良い”とされる果物、あるいは減塩に用いられる代替塩などにもカリウムは豊富に含まれるため、うっかり摂取量が増えてしまわないよう注意が必要です。

ポイントのまとめ

1. 『セララ(エプレレノン)』は、心不全治療の中核を担うMRA
2. 『ミネブロ(エサキセレノン)』は、安定して高めの降圧効果を得られる高血圧治療薬
3. 『ケレンディア(フィネレノン)』は、降圧効果をあまり示さない、2型糖尿病を合併した慢性腎臓病の薬

 

 

薬のカタログスペックの比較

 添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較

エプレレノンエサキセレノンフィネレノン
先発医薬品名セララミネブロケレンディア
適応症高血圧症、慢性心不全高血圧症2型糖尿病を合併する慢性腎臓病
用法1日1回1日1回1日1回
用量高血圧:1日50~100mg
心不全:1日25~50mg
1日2.5~5mg1日10~20mg
国際誕生年1996年2019年2021年
CYP3A4阻害作用が関係する併用禁忌イトラコナゾール、リトナビル、エンシトレルビル等と併用禁忌(特に制限なし)イトラコナゾール、リトナビル、エンシトレルビル、クラリスロマイシン、ボサコナゾール等と併用禁忌
減量を検討する血清Kの基準5.0mEq/mL~5.0mEq/mL~
ただちに中止すべき血清Kの基準6.0mEq/mL~6.0mEq/mL~5.5mEq/mL~
腎機能に基づく禁忌高血圧:中等度以上の腎機能障害
心不全:重度の腎機能障害
重度の腎機能障害(禁忌の指定なし)
剤型の規格錠(25mg、50mg、100mg)錠(1.25mg、2.5mg、5mg)
OD錠(1.25mg、2.5mg、5mg)
錠(10mg、20mg)
先発医薬品の製造販売元ヴィアトリス第一三共バイエル
同成分のOTC医薬品(販売なし)(販売なし)(販売なし)

 

 

+αの情報:禁忌指定のない「エサキセレノン」も、CYP3A4の影響を受ける

 「エサキセレノン」は、CYP3A4阻害作用を持つ薬と”禁忌”の指定はありませんが、影響を受けないわけではありません。実際、CYP3A4阻害作用を持つ「クラリスロマイシン」との併用では、血清カリウム値が上昇する傾向が確認されています13)。
 なお、MRAの中では「スピロノラクトン」が唯一、CYP3A4の影響をほとんど受けません

 13) J Hypertens.41(4):580-586,(2023) PMID:36655800

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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