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狭心症・心筋梗塞 似た薬の違い

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『ニトロダーム』と『フランドル』、同じ狭心症の貼り薬の違いは?~かぶれと粘着力・金属の有無とAED使用時の注意

回答:剥がれにくい『ニトロダーム』、かぶれが少なく貼り直しもできる『フランドル』

 『ニトロダーム(一般名:ニトログリセリン)』と『フランドル(一般名:硝酸イソソルビド)』は、どちらも狭心症の予防に使う貼り薬です。

 『ニトロダーム』は、粘着力が強く剥がれにくい薬です。
 『フランドル』は、かぶれが少なく、貼り直しもできる薬です。金属が使われていないため、自動体外式除細動器(AED)や核磁気共鳴画像法(MRI)で火傷の心配もありません。

 治療効果に関して特に大きな違いは報告されていないため、生活環境や皮膚の状況によって使い分けるのが一般的です。
 また、『フランドル』や『ニトロダーム』は、AEDの電極パッドを装着する際の邪魔にならない場所へ貼るようにしてください。

回答の根拠①:『ニトロダーム』の粘着力

 『ニトロダーム』は、『フランドル』と比べてテープ剤の粘着力が強く、剥がれにくい製剤です1)。
 しかしその分、テープ剤を剥がしたときの皮膚の角質剥離量が多く2)、刺激やかぶれの副作用が起こりやすい3)ほか、一旦剥がすと粘着力がなくなってしまうため貼り直しができません4)。

 1) 病院薬学.24(5):526-32,(1998)
 2) 病院薬学.26(5):510-7,(2000)
 3) 病院薬学.25(5):495-501,(1999)

 4) ニトロダームTTS インタビューフォーム

 救急絆創膏の粘着力が1.47N/12mm(※実質150g/12mmほど)を基準とされている5)ため、『ニトロダーム』が特別に強力な粘着力で皮膚を傷つけやすいわけではありませんが、毎日同じ場所に貼り続けることは避け、皮膚が弱い人は保湿剤などを使ったケアも必要です。

※製剤の粘着力 1)
フランドル:49.7g/12mm
ニトロダーム:124.8g/12mm

 5) 一般社団法人 日本衛生材料工業連合会「救急絆創膏自主基準」

「ニトログリセリン」は消失が非常に速い

 『ニトロダーム』の有効成分である「ニトログリセリン」は、ニトロ基が多い構造のため非常に代謝を受けやすい性質があります。そのため、『ニトロダーム』の効果はテープ剤を剥がすと速やか(1時間以内)に身体から消失します4)。

 このことから、何か薬で副作用が起きた際には、テープ剤を剥がすことですぐに薬の作用を止めることができます。

回答の根拠②:『フランドル』の製剤工夫~貼り直しや切断が可能

 『フランドル』は、テープ剤を剥がした際の角質細胞の剥離量が『ニトロダーム』より少なく2)、刺激やかぶれといった皮膚の副作用を少なく抑えられる3)ことが報告されています。

 これは、『フランドル』には軟化剤「ミリスチン酸イソプロピル」が使われているためテープ剤に柔軟性があり、貼っている間は身体の動きに合わせてフィットすること、テープ剤を剥がす際にも無理な力がかかりにくいことが要因と考えられています6)。

 6) トーアエイヨー 「製品情報 Q07.皮膚刺激対策について」

貼り直しが可能~粘着力の保持と薬の半減期

 『フランドル』は角質剥離量が少ないため、剥がした際にもテープ剤の粘着力が保持されます。そのため、一旦剥がした『フランドル』でも数回貼り直すことができます7)。
 テープ剤を剥がした後も、薬の半減期は2.3時間と比較的緩やか7)なため、温泉やプールなどでテープ剤が目立って気になる場合は、短時間であれば一旦剥がしておくことも可能です。

 7) フランドルテープ インタビューフォーム

 ただし、剥がして8時間が経過すると薬は身体からほぼ消失してしまいます7)。長時間剥がしたままにならないよう、十分な注意が必要です。また、病態によっては入浴時にも剥がさない方が良いこともありますので、剥がしても良いかどうかは一度主治医と相談するようにしてください。

2日に1回の貼り替えや、半分に切って使うこともできる

 『フランドル』は安定した効果が48時間持続するため、毎日の貼り替えが大変な場合は、2日に1回の貼り替えで使うことができます7)。また、1枚を半分にして使う方法でも有用性が確認されているなど、テープ剤を切って用量調節ができるのも『フランドル』の特長です7)。

回答の根拠③:AED使用時の注意~貼る位置と金属の含有

 自動体外式除細動器(AED)が正しく心電図を解析し、除細動を行うためには、電極パッドを肌に直接装着する必要があります。このとき、『フランドル』や『ニトロダーム』などの貼り薬の上から電極パッドを貼り付けてしまうと、電流が遮断され、正しく作動しない恐れがあります。

 狭心症では胸が痛むため、特に『フランドル』や『ニトロダーム』は心臓の近くに貼る人が多いですが、AEDを使う場面は一刻を争う時で、テープ剤を剥がすことにまで気が回らない可能性があります。そのため日頃から、いざという時にAEDの邪魔にならない場所を選んで貼ることが推奨されています4,7)。

※一般的なAED電極パッドの貼り付け場所(避けるべき部位)
・右鎖骨すぐ下
・左脇下の肋骨最下部

金属を含むテープ剤では、火傷にも注意

 『ニトロダーム』は、テープ部分にアルミニウム箔が使われています4)。そのため、『ニトロダーム』を貼ったままAEDを使うと、電流はこの金属部分に集まり、正常な心電図解析・除細動ができない、あるいは金属部分が加熱・破裂して火傷を負う恐れがあります4)。
 そのため、『ニトロダーム』のように金属を含むテープ剤は、電極パッドの邪魔にならない場所に貼ってあったとしても、除細動の前には剥がしておく必要があります(※テープ剤にも注意書きが書かれています)。

※金属を含むテープ製剤
『ニトロダームTTS(一般名:ニトログリセリン)』:狭心症治療薬
『ニュープロパッチ(一般名:ロチゴチン)』:パーキンソン病治療薬
『ニコチネルTTS(一般名:ニコチン)』:禁煙補助剤

 『フランドル』には金属が含まれていないため、こうした加熱や破裂の心配はありません。また、テープが電極パッド装着の妨げになっていなければ、貼ったままAEDを使用しても心電図解析・除細動には問題ないとされています7)。

薬剤師としてのアドバイス:発作時は「治療」の薬を使う

 『ニトロダーム』は『ニトロペン(一般名:ニトログリセリン)』、『フランドル』は『ニトロール(一般名:硝酸イソソルビド)』と、それぞれ同じ有効成分の薬です。

 『ニトロペン』や『ニトロール』は、舌下に投与することで1~2分で効果が得られるため、狭心症の発作が起きた際の治療薬として使われています。しかし、『ニトロダーム』や『フランドル』は貼って数分以内に効果が得られるような薬ではないため、狭心症の発作が起きた際の治療薬としては適していません。

 同じ有効成分の薬でも、貼り薬は予防、舌下投与は治療と、明確な使い分けが必要であることに注意してください。

ポイントのまとめ

1. 『ニトロダーム』は、粘着力が強く剥がれにくく、剥がせばすぐに薬の作用が無くなる
2. 『フランドル』は、皮膚への負担が少なく、貼り直し・2日ごとの貼り替え・半分に切るといった使い方もできる
3. 狭心症の貼り薬はAEDの邪魔にならない場所に貼り、特に『ニトロダーム』は除細動の前に剥がす必要がある

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆有効成分
ニトロダーム:ニトログリセリン
フランドル:硝酸イソソルビド

◆適応症
ニトロダーム:狭心症
フランドル:狭心症、心筋梗塞(急性期を除く)、その他の虚血性心疾患

◆貼り付ける場所
ニトロダーム:胸、腰、上腕部(AEDの妨げにならない場所
フランドル:胸、上腹、背部(AEDの妨げにならない場所

◆貼り替えの回数
ニトロダーム:1日1回
フランドル:24時間または48時間に1回

◆1回量の幅
ニトロダーム:通常1回1枚、効果不十分の際は1回2枚
フランドル:通常1回1枚(探索的試験で1回1/2枚~2枚)

◆剥がしてから消失までの時間
ニトロダーム:1時間
フランドル:8時間

◆貼り直し
ニトロダーム:不可
フランドル:

◆金属の含有
ニトロダーム:あり(支持体にアルミニウム泊)
フランドル:なし

◆貼ったままのAED
ニトロダーム:不可(金属部分が加熱・破裂する恐れ)
フランドル:電極パッド装着の妨げにならなければ可

◆貼ったままのMRI検査
ニトロダーム:不可(金属部分が加熱する恐れ)
フランドル:可

◆テープ剤の切断
ニトロダーム:不可(薬物貯蔵層が流出するため)
フランドル:

◆製薬企業
ニトロダーム:田辺三菱
フランドル:トーアエイヨー

+αの情報:『フランドル』は、足の裏に貼っても十分に吸収される

 『フランドル』は、胸・上腹・背部の3つが貼る場所に指定されています7)。これは、皮膚の角質が比較的薄くて薬の吸収も比較的良いこと、また動きが少なく剥がれにくいことから、テープ剤の貼付場所として適しているからです。
 しかし、『フランドル』を胸に貼った場合と足の裏に貼った場合とで、血中濃度には差がなかったことも報告されています8)。

 8) PROGRESS IN MEDICINE.7(6):1215-9,(1987)

 そのため、用法で指定された場所がどこもかぶれてしまった場合は、体毛の多い場所や、かかと等の特別に皮膚が分厚い部分でなければ、どこに貼っても薬の効果は得られると考えられます。

~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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