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狭心症・心筋梗塞 似た薬の違い

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『アイトロール』と『ニトロール』、同じ硝酸薬の違いは?~初回通過効果と狭心症の予防・治療、耐性への対策

回答:個人差の少ない『アイトロール』、予防と治療に使える『ニトロール』

 『アイトロール(一般名:一硝酸イソソルビド)』と『ニトロール(一般名:硝酸イソソルビド)』は、どちらも狭心症に使う硝酸薬です。

 『アイトロール』は、代謝の影響を受けにくいため、個人差が少ないのが特徴です。
 『ニトロール』には、予防と治療の両方に使える錠剤があります。また、予防には少ない服用回数で済む「カプセル」、治療には口の乾燥した高齢者や意識を失った人にも使いやすい「スプレー」といった剤型もあります。

 効果に大きな違いはないため、症状のコントロール状況や剤型の好みによって使い分けるのが一般的です。

回答の根拠①:個人差の少ない『アイトロール』~初回通過効果の影響

 『アイトロール』と『ニトロール』は、どちらも飲み込んでも効果が得られるように改良された「硝酸薬」です。
 特に『アイトロール(一硝酸イソソルビド)』は『ニトロール(二硝酸イソソルビド)』よりもニトロ基(-ONO2)が少なく、肝臓での代謝・分解(初回通過効果)を受けにくい性質があります1)。そのため、錠剤のままでも効果が長続きするほか、肝機能の差による体内動態のばらつきが出にくい傾向にあります。

※血中濃度の変動係数:CV値 1)
一硝酸イソソルビド・・・Cmax   7.9%、Tmax 24.5%、AUC 11.8%
二硝酸イソソルビド・・・Cmax 68.6%、Tmax 52.5%、AUC 29.2%

 1) アイトロール錠 インタビューフォーム

 このことから、『アイトロール』は体内動態のばらつきを抑え、個人差を少なくできる薬と言えます。

回答の根拠②:予防と治療の両方に適応のある『ニトロール』

 『ニトロール』には錠剤・カプセル・スプレーの剤型があります。狭心症発作の「予防」にはカプセル、狭心症発作の「治療」にはスプレーをそれぞれ使いますが、錠剤は「予防」と「治療」の両方に適応があります2,3,4)。
 つまり、1つの薬で普段のコントロール(予防)と、狭心症の発作が起きた時の対応(治療)との両方に対応できる、非常に便利な薬です。

※『ニトロール』錠剤の用法 2)
(通常時)1回1~2錠を1日3~4回経口投与または舌下投与する
(発作時)1回1~2錠を舌下投与する

 ただし、『ニトロール』の錠剤を発作の治療に使う場合は、より速やかに効果を得るため「舌下投与」する必要があります2)。

※『ニトロール』錠剤の効果発現にかかる時間 2)
経口投与・・・約30分
舌下投与・・・約2分

 2) ニトロール錠 インタビューフォーム
 3) ニトロールRカプセル 添付文書
 4) ニトロールスプレー インタビューフォーム

「スプレー」は口の乾燥した高齢者や、意識を失った患者にも適している

 「スプレー」は口の中に噴霧して使うため、口が乾燥していて舌下投与では錠剤が溶けにくい高齢者でも効果を得やすいほか、意識のない患者に対しても使えることが特徴です4)。
 またスプレーでの噴霧は、「舌下投与」より吸収が速いことも報告されています5)。

 5) 臨床薬理学.18(3):515-22,(1987)

回答の根拠③:効果に大きな違いはない

 「一硝酸イソソルビド」と「二硝酸イソソルビド」による狭心症への効果は変わらないとされています1,6)。
 個人差による支障がなければ、『アイトロール』と『ニトロール』どちらでも治療に大きな違いはないと考えられます。値段もほとんど変わらないため、剤形や服用回数によって選ぶこともあります。

 6) Geriat Med.23(8):1421-35,(1985)

薬剤師としてのアドバイス:「舌下投与」という特殊な薬の使い方に注意

 狭心症の発作が起きた際には『ニトロール』や『ニトロペン(一般名:ニトログリセリン)』などの硝酸薬を「舌下投与」で使う必要があります。これは、口の粘膜から薬を吸収させることで、速やかに吸収させること、また肝臓を通らずに直接効果を発揮させる(初回通過効果を避ける)ことができるからです。

 一方、普通に飲み込むべき薬を「舌下投与」で使うと、急激に血中濃度が高くなるなど副作用のリスクが高くなります(例:Ca拮抗薬である『アダラート』の舌下投与)。また、吸入薬を使った後にうがいをするのは、口の粘膜に付着した薬が吸収され、全身で作用してしまうことを防ぐ目的があります(例:β刺激薬の吸入薬)。

 薬の用法や注意事項には、効果を確実にし、副作用を防ぐための「理由」があります。必ず医師・薬剤師の指示を守り、自己判断で使用方法を変えないようにしてください。

ポイントのまとめ

1. 『アイトロール』は、初回通過効果を受けにくく、体内動態のばらつきが少ない
2. 『ニトロール』は、予防にカプセル、治療にスプレーがあり、錠剤はどちらにでも使える
3. 「硝酸薬」を
発作時に使う場合は、速やかに効果が得られる「舌下投与」が必要

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆一般名
アイトロール:一硝酸イソソルビド
ニトロール:硝酸イソソルビド(二硝酸イソソルビド)

◆適応症
アイトロール:狭心症
ニトロール:狭心症、心筋梗塞、その他の虚血性心疾患

◆予防のための用法
アイトロール:1日2回
ニトロール:(錠剤)1日3~4回、(Rカプセル)1日2回

◆発作治療のための用法
アイトロール:なし
ニトロール:(錠剤)1回1~2錠を舌下投与、(スプレー)1回1噴霧

◆剤形の種類
アイトロール:錠(10mg、20mg)
ニトロール:錠(5mg)、Rカプセル(20mg)、スプレー(1.25mg)、注、点滴静注、持続静注

◆製造販売元
アイトロール:トーアエイヨー
ニトロール:エーザイ

+αの情報:硝酸薬耐性を防ぐために~休薬時間とARB・ACE阻害薬との併用

 『アイトロール』や『ニトロール』などの「硝酸薬」を継続して使っていると、効果が弱まってくることがあります(硝酸薬耐性)。そのため耐性を避け、薬の効果を復活させるために、1日の中で8~12時間ほど「硝酸薬」との接触を避ける休薬時間を設けることがあります7)。

 7) Am Heart J.128(1):137-46,(1994) PMID:8017267

 このとき、一般的に狭心症の発作は早朝~午前中に起こすことが多いため、「硝酸薬」も朝だけ服用する、という使い方をすることがあります。ただし、生活環境や仕事の状況によっては、日中や夜間に狭心症の発作を起こしやすい人も居るため、自分の発作状況や頓服薬の使用状況は、正確に医師・薬剤師に伝える必要があります。

 また硝酸薬の耐性は、ARBやACE阻害薬と併用することで軽減できるとする報告もあります8,9)。

 8) Am J Cardiol.77:1159-1163,(1996) PMID:8651088
 9) Circulation.108: 1446-1450,(2003) PMID:12952843

~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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コメント

  • コメント (2)

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  1. アイトロール フランドルの併用を見たことがありますがは意味があるのでしょうか?

      • Fizz-DI
      • 2018年 1月 25日

      ガイドライン等を見ても「併用が効果的」というような表記は見当たらないので、特に推奨されているものではないと思われます。

      それぞれ単剤では上限量でも効果が不十分で、やむを得ず併用しているケース
      内服薬から貼付薬に切り替える途中、何らかのトラブルが起きて併用の状況で落ち着いてしまったケース
      …等が理由として考えられるかなと思います。

      もう少し併用の意義について何か示唆がないか調べてみます。

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【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
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【執筆】
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【講義・講演等】
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学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

 

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