『ノベルジン』と『プロマック』、同じ亜鉛製剤の違いは?~亜鉛含有量と保険適用
記事の内容
回答:低亜鉛血症に保険適用のある『ノベルジン』、値段も安く使いやすい『プロマック』
『ノベルジン(一般名:酢酸亜鉛)』と『プロマック(一般名:ポラプレジンク)』は、どちらも亜鉛を含む薬で、亜鉛不足の治療に使われます。
『ノベルジン』は、低亜鉛血症に保険適用のある、唯一の亜鉛製剤です。
『プロマック』は、値段が安く、口腔内崩壊錠(D錠)や粉薬もあり、使いやすい亜鉛製剤です。
ただし、亜鉛の欠乏による「味覚障害」対しては、『プロマック』の適応外処方であっても保険審査上は認めるとする通知も出ています。
回答の根拠①:『ノベルジン』~保険適用と含有量の多さ
『ノベルジン』は「亜鉛」を含む薬で、腸管からの「銅」の吸収を邪魔して排泄を促す作用があります1)。
そのため、先天的に「銅」の排泄がうまくいかずに銅過剰症となる「ウィルソン病」の治療薬として使われてきました1)。
この『ノベルジン』には、2017年3月に「低亜鉛血症」の適応症が追加されたため、亜鉛の欠乏症に対して保険適用のある唯一の亜鉛製剤となっています1)。
1) ノベルジン錠 インタビューフォーム
また『プロマック』と比べると、1錠あたりの亜鉛含有量や用量が多いため、血中の亜鉛濃度もより高くなる傾向にあります。
※亜鉛の含有量と服用回数 1,2)
『ノベルジン錠25mg』・・・1錠に25.0mg(1日2~5回)
『ノベルジン錠50mg』・・・1錠に50.0mg(1日2~5回)
『プロマックD錠』 ・・・・ 1錠に16.9mg(1日2回)
『プロマック顆粒』 ・・・・ 1包に16.9mg(1日2回)
2) プロマックD錠 インタビューフォーム
ただし、その分「銅欠乏症」の副作用リスクも高くなるため、銅排泄量の検査を行うよう注意喚起されています1)。
回答の根拠②:『プロマック』~値段の安さと適用外使用
『プロマック』は胃潰瘍の治療薬で、亜鉛欠乏症に対する保険適用はありません2)。
しかし『プロマック』も亜鉛を含む製剤のため、亜鉛欠乏による「味覚障害(耳鼻咽喉科)」に対して使う場合は、保険審査上、認めるとの通達がされています3)。
3) 厚生労働省 「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて(保医発第0928第1号)」
また、『ノベルジン』と比べると値段が非常に安いため、「味覚障害」であれば『プロマック』で良いと考える医師・薬剤師は少なくありません。
※薬価の比較(2018改訂時)
ノベルジン:25mg(269.50)、50mg(442.30)
プロマック:D錠(29.00)、顆粒(53.50)
『プロマック』の剤型は、口腔内崩壊錠(D錠)や顆粒
『ノベルジン』の剤型は「錠剤」と「カプセル」ですが、『プロマック』の剤型は「D錠(口腔内崩壊錠)」と「顆粒」です1,2)。
そのため、『プロマック』は高齢者や小児の場合でも服用が問題になりにくい、使いやすい薬と言えます。
薬剤師としてのアドバイス:「亜鉛」と「銅」のバランスには要注意
ヒトは、「亜鉛」と「銅」を10:1程度のバランスを保って摂取する必要があります。
そのため、『ノベルジン』や『プロマック』といった亜鉛製剤を使う場合には「亜鉛」の過剰によって起こる「銅欠乏症」に注意する必要があります。
また、「亜鉛」や「銅」はサプリメントなどでも摂ることができますが、その場合も摂取量が偏らないように気を付けてください。
ポイントのまとめ
1. 『ノベルジン』は、低亜鉛血症に保険適用のある唯一の亜鉛製剤
2. 『プロマック』は、「味覚障害」に適応外処方されることもある、値段の安い亜鉛製剤
3. 「亜鉛」と「銅」は、バランスを崩さないような摂取が必要
添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較
◆薬効分類
ノベルジン:低亜鉛血症治療剤・ウィルソン病治療剤(銅吸収阻害剤)
プロマック:亜鉛含有胃潰瘍治療剤
◆適応症
ノベルジン:低亜鉛血症、ウィルソン病
プロマック:胃潰瘍
◆亜鉛の含有量
ノベルジン:25mg錠(1錠に25mg)、50mg錠(1錠に50mg) ※カプセルも同じ
プロマック:D錠(1錠に16.9mg)、顆粒(1包に16.9mg)
◆用法
ノベルジン:1日2~5回(※亜鉛補充の場合は食後、ウィルソン病の場合は食前1時間以上又は食後2時間以上あけて)
プロマック:1日2回(朝食後と就寝前)
◆剤型の種類
ノベルジン:錠(25mg、50mg)、カプセル(25mg、50mg)
プロマック:D錠、顆粒
◆製造販売元
ノベルジン:ノーベルファーマ
プロマック:ゼリア新薬
+αの情報:『ノベルジン』は食前に飲むべきか?
『ノベルジン』を亜鉛補充に使う場合には、胃痛など消化器系の副作用を避けるため、食後に服用するよう定められています1)。
一方で「ウィルソン病」に使う場合には、食事が亜鉛吸収に影響する恐れを考慮し、より厳密に「食前1時間以上又は食後2時間以上あける」という用法になっています1)。
つまり、亜鉛補充に対しては副作用軽減を重視した用法、ウィルソン病に対しては安定した効果を重視した用法になっている、と言えます。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
「亜鉛」と「銅」は、バランスを崩さないような摂取が必要
とありますが、具体的にはどうすればよいでしょうか?
基本的に、普通に食事をしていればバランスを崩すようなことはありません。
が、例えば、「亜鉛」だけが含まれたサプリメントを過剰に摂取する・摂取し続けるといった習慣があると、バランスを崩す恐れが高くなります。
そのため、「偏った摂取をしない」ということに気を付けるのが一番良いと思います。
ノベルジンの投与回数は、1~3回です。5回などどこから出てきたのですか?
保医発第0928第1号は、耳鼻科で味覚障害に処方した場合認めるというものでは?
全診療科で亜鉛補充の目的で低亜鉛血症に投与してOKというものではないと思います。誤解を受けるるのでは。
なんかゼリア寄りな印象を受けます!
225 ポラプレジンク(耳鼻咽喉科4)
《平成23年9月26日新規》
○ 標榜薬効(薬効コード)
消化性潰瘍用剤(232)
○ 成分名
ポラプレジンク【内服薬】
○ 主な製品名
プロマックD 錠、プロマック顆粒、他後発品あり
○ 承認されている効能・効果
胃潰瘍
○ 薬理作用
実験潰瘍に対する作用、胃粘膜防御能に対する作用、細胞保護作用、膜安
定化作用、フリーラジカルに対する作用、創傷治癒促進作用
○ 使用例
原則として、「ポラプレジンク【内服薬】」を「味覚障害」に対して処方
した場合、当該使用事例を審査上認める。
○ 使用例において審査上認める根拠
薬理作用が同様と推定される。
コメント・ご指摘ありがとうございます。
服用回数については、ウィルソン病に対する最大投与量の際の用法として1日5回が添付文書に明記されておりますので、ご確認頂ければと思います。
「全診療科で亜鉛補充としての使用が可能」と読めてしまう恐れがある点は、確かに問題と思いますので修正させて頂きました。