『ヒアレイン』と『ジクアス』、同じドライアイ治療薬の違いは?~涙の量・質への効果
記事の内容
回答:乾燥を防ぐ『ヒアレイン』、涙の「質」と「量」を改善する『ジクアス』
『ヒアレイン(一般名:精製ヒアルロン酸)』と『ジクアス(一般名:ジクアホソル)』は、どちらもドライアイの治療に使う点眼液です。
『ヒアレイン』は、涙の乾燥を防ぐ薬です。
『ジクアス』は、涙の「質」と「量」を改善する薬です。
特に明確な使い分けの基準はありませんが、ドライアイに対しては新しい『ジクアス』の方が効果が高い分、値段も高い傾向にあります。
回答の根拠①:『ヒアレイン』の作用~速効性のある保水作用と角膜修復作用
『ヒアレイン』の有効成分「ヒアルロン酸」は、その分子中に多くの水を抱え込む性質があるため、優れた保水作用を発揮します1)。
いま既に目を覆っている涙から乾燥しにくくなるため、点眼するとすぐに効果が得られることも特徴です。
1) ヒアレイン点眼液 インタビューフォーム
角膜の傷を治す効果もあり、保険適用も広い
『ヒアレイン』には、角膜にできた傷の修復を促す効果もあります1)。
そのため、ドライアイに限らず、目の手術やコンタクトレンズの着脱、また粘膜の炎症でできた傷にも保険適用があります1)。
回答の根拠②:『ジクアス』の作用~涙の「量」と「質」の両面から効く
ドライアイの原因には、涙の分泌が減る「量の問題」と、乾きやすい涙しか作れなくなる「質の問題」とがあります。
「水」の分泌が減ると涙の「量」も減るため、目は乾きやすくなってしまいます。
「ムチン」の分泌が減ると涙の「質」が悪化し、乾きやすい涙になってしまいます。
『ジクアス』は、この「水」と「ムチン」両方の分泌を促すことで、涙の「量」と「質」の両面からドライアイを治療することができます2)。
2) ジクアス点眼液 添付文書
ドライアイに対する『ジクアス』の高い効果
『ジクアス』は『ヒアレイン』と違って、涙の「量」だけでなく「質」も改善するため、ドライアイに対してより高い効果が得られることが報告されています3)。
3) Br J Ophthalmol.96(10):1310-5,(2012) PMID:22914501
ただし、『ジクアス』は新しい薬である分値段も高いため、負担額との相談も必要です。
※点眼液の値段 (2018年改訂時)
ヒアレイン:0.1%(366.60/瓶)、0.3%(525.20/瓶) ※後発医薬品もあり
ジクアス:638.70/瓶
薬剤師としてのアドバイス:眼が乾きやすい環境や行動を、できるだけ避ける
冷暖房の効いた乾燥した室内で、長時間小さな文字や液晶画面を見続けていると、眼が乾いてドライアイになりやすくなります。つまり、オフィス等で働く現代人はドライアイを避けられない環境であるとも言えます。
そのため、冷暖房の風に直接当たらないよう気を付けること、適度に目を休めることなど、できるだけ眼が乾きやすい環境や行動を避ける必要があります。
また、簡単にできるドライアイの対処法としては、寝る時に水で濡らしたガーゼを両目に被せるwet gauze eye maskという方法もあります4)。
4) Ophthalmologica.208(4):216-9,(1994) PMID:7970551
ポイントのまとめ
1. 『ヒアレイン』は、保水性のある液体で、涙の乾燥を防ぐ効果をすぐに発揮する
2. 『ジクアス』は、涙の「量」と「質」の両方を改善し、より高い治療効果を発揮する
3. 現代社会は「ドライアイ」になりやすいことを念頭に、環境や行動にも注意する
添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較
◆薬効分類
ヒアレイン:角結膜上皮障害治療用点眼剤
ジクアス:ドライアイ治療剤
◆登場した年
ヒアレイン:1995年
ジクアス:2010年
◆適応症
ヒアレイン:シェーグレン症候群・スティーブンスジョンソン症候群・眼球乾燥症候群(ドライアイ)等の内因性疾患、術後・薬剤性・外傷・コンタクトレンズ装用等による外因性疾患
ジクアス:ドライアイ
◆用法・用量
ヒアレイン:1回1滴、1日5~6回
ジクアス:1回1滴、1日6回
◆「塩化ベンザルコニウム」の使用
ヒアレイン:なし (※0.1%の製造番号 1HT6679まで、0.3%の製造番号 3HT1084までは使用)
ジクアス:なし (※製造番号MS1161までは使用)
◆pHと浸透圧比
ヒアレイン:pH 6.0~7.0、浸透圧比 0.9~1.1
ジクアス:pH 7.2~7.8、浸透圧比 1.0~1.1
◆剤型の種類
ヒアレイン:点眼液(0.1%、0.3%)、ミニ点眼液(0.1%、0.3%) ※ミニ点眼液は適応症が異なる
ジクアス:点眼液
◆製造販売元
ヒアレイン:参天製薬
ジクアス:参天製薬
+αの情報①:「塩化ベンザルコニウム」の削除
『ヒアレイン』は2018年6月、『ジクアス』は2015年7月(製造番号MS1161)に、それぞれ「塩化ベンザルコニウム」を使わない製剤に改良されました。そのため、含水性のソフトコンタクトレンズを装着したまま使用しないこと、とする注意書きも削除されています。
※「塩化ベンザルコニウム」が使われていた製剤
ヒアレイン:0.1%の製造番号 1HT6679、0.3%の製造番号 3HT1084まで
ジクアス:製造番号MS1161まで
+αの情報②:市販の人工涙液『ソフトサンティア』
ドライアイの治療薬としては、『ソフトサンティア(一般名:塩化カリウム + 塩化ナトリウム)』も市販されています(第3類医薬品)。
『ソフトサンティア』は不足した涙を補充する人工涙液で、防腐剤も使われていない5)ため、コンタクトレンズ装着時の眼の渇きにも適した目薬と言えます。
5) ソフトサンティア 添付文書
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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