『ビオスリー』ってどんな薬?~3種の菌を使う理由、抗生物質との併用、『ビオフェルミン』との違い
記事の内容
回答:特徴の異なる3種の菌を使った整腸剤
『ビオスリー』は、善玉菌を腸に届けることで、腸内環境を整える整腸剤(生菌製剤)です。
『ビオスリー』は「乳酸菌」・「酪酸菌」・「糖化菌」という、特徴の異なる3つの菌を一緒に使うことで、小腸から大腸にかけて広く薬が作用するように工夫された薬です。また抗生物質と一緒に使うこともできます。
『ビオフェルミン』とは使われている菌の種類などが異なりますが、効き目に大きな違いはないため、明確な使い分けは必要ありません。
回答の根拠①:『ビオスリー』~3つの菌種を一緒に使うことのメリット
『ビオスリー』は、「乳酸菌(Streptococcus faecalis)」・「酪酸菌(Clostridium butyricum)」・「糖化菌(Bacillus mesentericus)」の3つの菌種を配合した薬です1)。
これらの菌は全て、ヒトの腸内環境を整える善玉菌として働きますが、少しずつ特徴が異なります。
「乳酸菌」は通性嫌気性菌、「酪酸菌」は偏性嫌気性菌、「糖化菌」は好気性菌と、それぞれ酸素に対する感受性が異なります1)。
※酸素に対する感受性
通性嫌気性菌・・・酸素がなくても生きていけるが、酸素を利用することもできるもの
偏性嫌気性菌・・・酸素がない状態で正常に生育し、酸素があると死んでしまうもの
好気性菌・・・・・酸素がある状態で正常に生育し、酸素がないと死んでしまうもの
1) ビオスリー配合散 インタビューフォーム
ヒトの消化管は、食道から大腸に至るまで、酸素濃度が少しずつ低くなっていきます。
上部消化管(食道~十二指腸)までは酸素がありますが、回腸からは酸素が少なくなり、大腸には酸素はほとんどありません2)。
2) Physiol Rev.90(3):859-904,(2010) PMID:20664075
そのため、『ビオスリー』のように酸素に対する感受性が異なる3つの菌を一緒に使うことで、消化管全体で薬が作用できるようになります。
回答の根拠②:『ビオスリー』と抗生物質の併用
『ビオスリー』に使われている「乳酸菌」は、「セフェム系」・「アミノグリコシド系」の抗生物質に対する感受性が低い(薬が効きにくい)傾向にあります3)。
3) ビオスリー配合散 インタビューフォーム
また、「酪酸菌」は「芽胞」という休眠状態になると、熱や化学物質に対して非常に強くなります。実際、「酪酸菌」は芽胞状態になることで、各種抗生物質の存在下でも生存できることが報告されています4)。
4) 薬学雑誌.132(7):849-53,(2012) PMID:22790032
このことから、『ビオスリー』は抗生物質による下痢の予防・治療を目的に使われることがあります。
回答の根拠③:『ビオフェルミン』との違い
『ビオスリー』や『ビオフェルミン』など、腸に善玉菌を届ける「生菌製剤」には色々な種類があります。それぞれ、薬に使われている菌の種類が違うため、その菌の特徴によって薬の性質にも多少の違いがあります。
※整腸剤の菌種
ビオスリー・・・・・・・・乳酸菌、酪酸菌、糖化菌
ビオフェルミン錠・・・・・ビフィズス菌
ビオフェルミン配合散・・・乳酸菌、糖化菌
ビオフェルミンR ・・・・・耐性乳酸菌
ラックビー・・・・・・・・ビフィズス菌
ビオスミン・・・・・・・・ビフィズス菌、乳酸菌
ミヤBM ・・・・・・・・・酪酸菌
しかし、整腸剤としての効果に大きな違いがあるとする報告は今のところなく、明確な使い分けの基準はありません。
薬剤師としてのアドバイス:ビフィズス菌や乳酸菌は、ずっと生き続けるわけではない
「ビフィズス菌」や「乳酸菌」などの善玉菌は、腸の中でずっと生き続けるわけではありません。そのため、一度にたくさんの整腸剤を飲むのではなく、毎日少しずつ服用し続ける必要があります。
これはヨーグルトなどで摂取する「ビフィズス菌」や「乳酸菌」でも同じため、短期間にまとめて大量に食べるよりも、習慣的に少しずつ食べ続けることをお勧めします。
ポイントのまとめ
1. 『ビオスリー』は、特徴の異なる3種の菌の薬で、小腸~大腸に広く作用する
2. 『ビオスリー』は、薬に対する感受性が低いため、抗生物質と併用することもある
3. 生菌製剤の整腸剤には色々な菌種のものがあるが、効き目に大きな違いはない
+αの情報:プロバイオティクスの効果
『ビオスリー』や『ビオフェルミン』などの生菌製剤には、下痢の時間を短縮する効果があります8)。
5) Cochrane Database Syst Rev.(11):CD003048,(2010) PMID:21069673
特に、こうした生菌製剤による「プロバイオティクス」では、他の下痢止め薬のような副作用や下痢の重症化といったリスクもほとんどありません。そのため、一般的な下痢の場合には『ビオスリー』や『ビオフェルミン』などの整腸剤がよく使われています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
ビオスリーが抗生物質と併用できるといった表現はどうでしょうか?配合されている乳酸菌はセフェム系アミノグリコシド系に耐性とありますが、他の系統に耐性は報告されていないのですよね。芽胞を作る酪酸菌は耐性があるにしても他の菌が死滅しては配合剤の意味がありませんよね。
確かに「併用できる」と言い切ってしまうのは不適切ですね。
感受性が低いことを踏まえて、併用する場合があるという訂正しました。