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似た薬の違い 外用剤

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『モーラステープ』と『モーラスパップ』、同じ貼り薬の違いは?~吸収率と貼り替え回数、粘着力とかぶれやすさ

回答:1日1回の貼り替えで良く剥がれにくい「テープ」、かぶれにくい「パップ」

 『モーラステープ』と『モーラスパップ』は、どちらも「ケトプロフェン」という痛み止め(鎮痛消炎薬)の貼り薬です。

 『モーラステープ』は、1日1回で良く、粘着力が強いため剝がれにくい製剤です。
 『モーラスパップ』は、かぶれにくく、皮膚への負担が少ない製剤です。

 効き目に大きな違いはないため、関節などの良く動かす部分には『モーラステープ』、皮膚が弱い人には『モーラスパップ』と、貼る場所や皮膚の状態によって使い分けるのが一般的です。

 

回答の根拠①:用法の違い~経皮吸収率の違い

 基本的に「テープ剤」と「パップ剤」では、「テープ剤」の方が皮膚からの吸収率が良い傾向にあります。
 実際、『モーラステープ』と『モーラスパップ』を同じように貼り付けた場合、『モーラステープ』の方が皮膚からの吸収率が高く、角質にも高い濃度で薬が移行することがわかっています。

※最高血中濃度の差 1,2)
『モーラステープ』:135.85ng/mL(20mg製剤、約12時間後)
『モーラスパップ』: 43.11ng/mL(30mg製剤、約12時間後)

 1) モーラステープ インタビューフォーム
 2) モーラスパップ インタビューフォーム

 そのため、吸収率の良い『モーラステープ』は1日1回、24時間ごとの貼り替えで良いですが、『モーラスパップ』では1日2回、12時間ごとの貼り替えが必要です1,2)。

 ただし、経皮吸収率の高い『モーラステープ』では、『リウマトレックス(一般名:メトトレキサート)』との相互作用3)に関して併用注意が添付文書に記載されています1)。

 3) Lancet.1(8475):256-8,(1986) PMID:2868265

 

回答の根拠②:粘着力の違い~適した場所と皮膚のかぶれ

 「テープ剤」は「パップ剤」よりも粘着力が強い4)ため、関節など動きの激しい場所に貼っても剝がれにくいのが特徴です。しかしその分、剥がす時にかかる皮膚の負担も大きくなり、かぶれやすくなります。

 一方で、「パップ剤」は剥がしたときの角質剥離量が少なく、皮膚への負担を少なく抑えることができる4)製剤です。
 痛み止めの貼り薬は、毎日同じ場所に貼り続けることが多いため、その治療満足度には”かぶれにくさ”が大きく影響します5)。皮膚が荒れやすい高齢者や、背中や腰などあまり動かず剥がれる心配の少ない場所に貼る場合には、「パップ剤」の方が適しています。

 4) J Toxicol Sci.28(5):415-25,(2003) PMID:14746345
 5) Yakugaku Zasshi.128(5):795-803,(2008) PMID:18451628

パップ剤には”厚み”もあるので、患部を保護できる

 「パップ剤」は「テープ剤」に比べると分厚いため、やや目立つという点ではデメリットですが、打撲などで患部に力が加わると痛みが強まる場合は、この「パップ剤」の厚みは患部を保護してくれるガード代わりにもなります。

 

薬剤師としてのアドバイス:色や匂い、使用感など、色々な基準で選べる

 貼り替えの手間が少ない上に、薄く肌色で目立たない『モーラステープ』の方が広く使われています。しかし、『モーラスパップ』にもかぶれにくいだけでなく、貼り替えるたびにひんやりとして気持ちが良い、分厚くて患部の保護になる、といった利点もあります。

 どちらの剤型が適しているかは、貼る場所や使う人の状況・好みによっても変わるため、使いにくさを感じる場合は一度その旨を主治医や薬剤師と相談してみてください。

 

ポイントのまとめ

1. 『モーラステープ』は1日1回の貼り替えで良く、剥がれにくいため関節などよく動かす部分に適している
2. 『モーラスパップ』はかぶれにくく、腰や背中などあまり動かさない部分に適している
3. 色や匂い、使い心地なども踏まえて、適した剤型を選ぶ

 

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆有効成分
モーラステープ:ケトプロフェン
モーラスパップ:ケトプロフェン

◆用法
モーラステープ:1日1回
モーラスパップ:1日2回

◆最高血中濃度
モーラステープ:135.85ng/mL(20mg製剤、約12時間後)
モーラスパップ: 43.11ng/mL(30mg製剤、約12時間後)

◆併用注意(相互作用)
モーラステープ:『リウマトレックス(一般名:メトトレキサート)』
モーラスパップ:なし

◆接触性皮膚炎の発生頻度
モーラステープ:4.67%
モーラスパップ:2.04%

◆妊娠後期の使用
モーラステープ:禁忌
モーラスパップ:禁忌

◆貼り薬の色
モーラステープ:淡褐色~褐色
モーラスパップ:白

◆1枚の大きさと重さ
モーラステープ:20mg(7cm×10cm:1g)、40mg(10cm×14cm:2g)
モーラスパップ:30mg(10cm×14cm:10g)、60mg(14cm×20cm:20g

◆製造販売元
モーラステープ:久光製薬
モーラスパップ:久光製薬

 

+αの情報①:1日1回の貼り替えで良い『モーラスパップXR』

 「ケトプロフェン」のパップ剤でも、『モーラスパップXR』は1日1回の貼り替えで良い製剤です7)。

 6) モーラスパップXR インタビューフォーム

 痛み止めの貼り薬は腰痛にもよく使われますが、あまり動かさない腰であれば、かぶれにくい『モーラスパップ』を選びたいところです。しかし、自分の背中側に貼った『モーラスパップ』を1日2回貼り替えることは、かなり手間です。
 この点、『モーラスパップXR』であれば皮膚への負担も少なく、また貼り替えの手間も半分に減らせるため、高齢者の腰痛などにより適した貼り薬と言えます。

 

+αの情報②:鎮痛消炎薬の貼り薬は、剥がした後も直射日光に注意

 『モーラステープ』や『モーラスパップ』を貼っていた部分を直射日光に当てると、紫外線による皮膚炎(光線過敏症)を起こすことがあります。
 この「光線過敏症」を避けるためには、薬を貼っている期間だけでなく、薬を剥がした後も最低4週間は、患部に直射日光を当てないように気を付ける必要があります7)。患部を衣服などで遮光する、屋外での活動を避けるといった対応を続けるようにしてください。

 7) 医薬品・医療機器等安全性情報 No.276 (2011)

 なお、この光線過敏症は『モーラステープ』や『モーラスパップ』のような「ケトプロフェン」製剤に限らず、「ジクロフェナク」や「インドメタシン」、「フェルビナク」、「フルルビプロフェン」など他の外用の鎮痛消炎薬(※サリチル酸メチル、サリチル酸グリコールを除く)でも同じくらいの頻度で報告されている6)ため、注意が必要です。

 

+αの情報③:貼り薬でも”使い回し”は厳禁

 痛み止めの貼り薬くらいであれば、他人に処方された薬であっても使い回しても大丈夫…と考えている人は多いようです8)。

 8) 医薬品情報学.22(1):30-4,(2020)

 しかし、たとえ家族であっても、他人に処方された薬を勝手に使っていた場合は、大きな副作用が起きても「副作用被害救済制度」の対象外となってしまいます。たかが貼り薬と侮り、他の人と薬を受け渡ししたり、自己流の使い方をしたりはしないようにしてください。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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