『ボナロン』と『ボノテオ』、同じ骨粗鬆症の薬の違いは?~ビスホスホネート製剤の大腿骨への効果と服薬実行率
記事の内容
回答:「大腿骨」での効果が実証された『ボナロン』、日本人のエビデンスがある『ボノテオ』
『ボナロン(一般名:アレンドロン酸)』と『ボノテオ(一般名:ミノドロン酸)』は、どちらも骨粗鬆症の治療に使う「ビスホスホネート製剤」です。
『ボナロン』は、「椎骨(背骨)」だけでなく「大腿骨」の骨折予防効果も証明されています。
『ボノテオ』は、日本人を対象にした臨床試験のデータがあります。
また、『ボナロン』は錠剤が飲めない人のための「ゼリー」・「点滴」がありますが、『ボノテオ』には月1回で良い飲み薬があります。
「ビスホスホネート製剤」は、起きた時に服用し、飲んだ後30分間は食事や他の薬の服用を避け、またその間は身体を横にしてはいけない、という様々な制限があるため、飲みやすい薬、飲む回数の少ない薬を選ぶこともあります。
回答の根拠①:『ボナロン』~「椎骨」と「大腿骨」の骨折予防効果
『ボナロン』は、椎骨(背骨)だけでなく、大腿骨の骨折予防効果も証明されています1)。
大腿骨の骨折は「寝たきり」のきっかけにもなる、非常に予後の悪いものですが、効果が実証された内服薬は『ボナロン』と『ベネット(一般名:リセドロン酸)』しかありません1)。
※大腿骨の骨折予防効果に対するガイドラインの評価
『ボナロン(一般名:アレンドロン酸)』・・・【A】
『ベネット(一般名:リセドロン酸)』・・・・【A】
その他の「ビスホスホネート製剤」・・・・・・【C】
カルシウム製剤・・・・・・・・・・・・・・・【C】
活性型ビタミンD3製剤 ・・・・・・・・・・・ 【C】
SERM・・・・・・・・・・・・・・・・・・・【C】
副甲状腺ホルモン薬・・・・・・・・・・・・・【C】
A:抑制する
B:抑制するとの報告がある
C:抑制するとの報告はない
1) 日本骨粗鬆症学会 「骨粗鬆症の予防と診療ガイドライン (2015)」
『ボナロン』には「ゼリー」と「点滴」製剤がある
『ボナロン』には、錠剤が飲めない人でも使いやすい「ゼリー製剤」や「点滴薬」があります2,3)。
「ビスホスホネート製剤」が喉につっかえると食道を荒らす恐れがあるため、飲み込む力が弱っている高齢者にはこうした「ゼリー製剤」や「点滴薬」が選択肢になります。
2) ボナロン経口ゼリー 添付文書
3) ボナロン点滴静注 添付文書
回答の根拠②:『ボノテオ』の特徴~日本人での臨床試験
『ボノテオ』は日本で開発された薬です。そのため、日本人を対象にした臨床試験が行われ、日本人の椎骨(背骨)の骨折予防効果が実証されています4)。
4) ボノテオ錠 インタビューフォーム
骨粗鬆症の病態には国や人種による違いもある1)ことから、日本人での効果が実証された『ボノテオ』はより確実な効果が期待できます。
『ボノテオ』の「大腿骨」への効果は、臨床試験の結果がまだ出ていない
『ボノテオ』の「大腿骨」の骨折予防効果については、まだ臨床試験が行われている途中です。現段階では効果が実証されていないため、ガイドラインでも【C】の評価がされています。
しかし、『ボノテオ』の作用が『ボナロン』や『ベネット』に特別劣るわけではないため、実際には「大腿骨」の骨折予防効果も同じように発揮されると考えられています1)。
回答の根拠③:「ビスホスホネート製剤」の効果と服薬実行率
『ボナロン』や『ボノテオ』などの「ビスホスホネート製剤」は、服薬実行率が50%程度では飲まないのと同じで、75%を超えなければ治療効果が得られません5)。
5) Mayo Clin Proc.81(8):1013-22,(2006) PMID:16901023
しかし「ビスホスホネート製剤」は、起床時に服用し、服用後30分は水以外の飲食を控え、更に横になってはいけない、という複雑な服用方法が必要です。
実際、この服用方法がネックとなり、回数が増えると薬をきちんと飲み続けられなくなることが報告されています6)。
6) Bone.44(6):1078-84,(2009) PMID:19264155
『ボナロン』の飲み薬では、毎日もしくは週1回の服用が必要です。その点、『ボノテオ』は月1回の服用で済む製剤もあるため、服用の手間が少なくて済みます4)。
※『ボナロン』と『ボノテオ』の服用頻度
『ボナロン』:毎日(5mg錠)、週1回(35mg錠・ゼリー)、月1回(点滴静注)
『ボノテオ』:毎日(1mg錠)、月1回(50mg錠)
薬剤師としてのアドバイス:複雑な飲み方には、全て理由がある
『ボナロン』や『ボノテオ』などの「ビスホスホネート製剤」は、非常に複雑な飲み方をする必要がありますが、これらには全て理由があります。
①起床して最初の飲食前に服用する
→食後に服用すると、薬の吸収が大きく低下し、治療効果に影響します。
②多めの水(約180mL)で服用する
→喉や食道に薬がひっかかると、その場所で炎症や潰瘍を起こす恐れがあります。
③服用した後30分は水以外の飲食を控える
→薬を服用して30分以内に飲食すると、薬の吸収が大きく低下し、治療効果に影響します。
④服用した後30分は横たわらない
→横になると薬の成分が逆流し、食道が薬に曝されることで炎症や潰瘍を起こす恐れがあります。
こうした飲み方を守らなければ、十分な効果が得られなかったり、副作用が起きてしまったりする恐れがあります。そのため、面倒でも必ず指示通りに服用するようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 『ボナロン』は、椎骨(背骨)だけでなく、大腿骨の骨折予防効果も実証されている
2. 『ボノテオ』は、日本人での椎骨(背骨)骨折予防効果が実証されている
3. 『ボナロン』の「ゼリー」や「点滴」、『ボノテオ』の「月1回」の内服薬など、続けやすい薬を選ぶ
添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較
◆有効成分
ボナロン:アレンドロン酸
ボノテオ:ミノドロン酸
◆適応症
ボナロン:骨粗鬆症
ボノテオ:骨粗鬆症
◆「椎骨(背骨)」の骨折予防効果のエビデンス
ボナロン:【A】
ボノテオ:【A】
◆「大腿骨」の骨折予防効果のエビデンス
ボナロン:【A】
ボノテオ:【C】 (※臨床試験は現在進行中)
◆剤型と用法の選択肢
ボナロン:毎日(5mg錠)、週1回(35mg錠・ゼリー)、月1回(点滴静注)
ボノテオ:毎日(1mg錠)、月1回(50mg錠)
◆製造販売元
ボナロン:帝人ファーマ
ボノテオ:アステラス製薬
◆同じ有効成分の薬
ボナロン:フォサマック(MSD)
ボノテオ:リカルボン(小野薬品工業)
+αの情報①:『ボナロン』と『ベネット』は、男性の骨粗鬆症にも効果がある
骨粗鬆症は女性に多い病気ですが、男性でも起こらないわけではありません。『ボナロン』や『ベネット』は、男性の椎骨(背骨)の骨折予防効果も確認されている薬です7,8)。
7) BMC Musculoskelet Disord.6:39,(2005) PMID:16008835
8) J Bone Miner Res. 2009 Apr;24(4):719-25 PMID:19049326
+αの情報②:「ビスホスホネート製剤」は、同じ成分で2種類の商品がある
『ボナロン』と『フォサマック』は、どちらも「アレンドロン酸」の薬です。
『ボノテオ』と『リカルボン』は、どちらも「ミノドロン酸」の薬です。
『ベネット』と『アクトネル』は、どちらも「リセドロン酸」の薬です。
それぞれ、薬としては全く同じものですが、作っているメーカーが異なるためパッケージ等のデザインは異なります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
この記事へのコメントはありません。