『レンドルミン』と『ロヒプノール』、同じ「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬の違いは?~作用時間と使い分け、併用の是非
記事の内容
回答:寝付きを良くする『レンドルミン』、熟睡できるようにする『ロヒプノール』
『レンドルミン(一般名:ブロチゾラム)』と『ロヒプノール(一般名:フルニトラゼパム)』は、どちらも不眠治療に使う「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬です。
『レンドルミン』は作用が短く、寝付きの悪い「入眠障害」に使います。
『ロヒプノール』は作用が長く、途中で目が覚める「中途覚醒」に使います。
このように、『レンドルミン』や『ロヒプノール』などの「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬は、効き目の強さではなく長さによって使い分けます。
やむを得ない場合、作用の短い薬・長い薬を一緒に使うこともありますが、「ベンゾジアゼピン系」の薬は併用しないのが大原則です。
回答の根拠①:作用の短い『レンドルミン』~寝付きをよくする睡眠薬
不眠の症状の一つに、布団に入ってもなかなか眠れない、という「入眠障害」があります。
この場合、睡眠薬の効果は布団に入ってから寝付くまでの間にだけ必要です。そのため、『レンドルミン』など効き目が速く現れて消失する「短時間型」の睡眠薬を使います。
※超短時間型(半減期:~6時間)
『ハルシオン(一般名:トリアゾラム)』
『マイスリー(一般名:ゾルピデム)』
『アモバン(一般名:ゾピクロン)』
『ルネスタ(一般名:エスゾピクロン)』
※短時間型(半減期:6~12時間)
『レンドルミン(一般名:ブロチゾラム)』
『ロラメット(一般名:ロルメタゼパム)』
『リスミー(一般名:リルマザホン)』
使い勝手は良いが、依存や離脱症状に注意
『レンドルミン』など作用時間の短い「短時間型」の睡眠薬は、翌朝にまで効き目を持ち越すことが少なく、また眠れないと感じた日にだけ使うこともできるなど、非常に使い勝手の良い睡眠薬です。
しかし、睡眠薬に対する依存は、作用時間の短いもので起こりやすいとされています1)。使い勝手が良い分、つい使い過ぎ・頼りがちになってしまうことに注意が必要です。
1) Drug Saf.9(2):93-103,(1993) PMID:8104417
回答の根拠②:作用の長い『ロヒプノール』~熟睡できるようにする睡眠薬
不眠の症状の一つに、眠っても途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」や、不必要なほど朝早くに目が覚める「早朝覚醒」があります。
この場合、睡眠薬の効果は一晩中、朝まで続いている必要があります。そのため、『ロヒプノール』など効き目が長く続く「中~長時間型」の睡眠薬を使います。
※中間型(半減期:12~24時間)
『ロヒプノール(一般名:フルニトラゼパム)』
『ベンザリン(一般名:ニトラゼパム)』
『ユーロジン(一般名:エスタゾラム)』
※長時間型(半減期:24時間~)
『ドラール(一般名:クアゼパム)』
『ダルメート(一般名:フルラゼパム)』
『ソメリン(一般名:ハロキサゾラム)』
依存や離脱症状は少ないが、翌朝・日中まで眠気が続く「持ち越し効果」に注意
『ロヒプノール』など作用時間の長い「中~長時間型」の睡眠薬は、続けて使うことで血中濃度が安定(定常状態)し、身体を眠りやすい状況で維持することができます。
「短時間型」の睡眠薬に比べ、薬に対する依存や減量した際の離脱症状・反跳性不眠といったトラブルは起こりにくい傾向にあります。そのため、こうしたトラブルが問題になる場合には、「短時間型」の薬を「長時間型」の薬に切り替えてから減量する、という方法をとることが推奨されています2)。
2) The Maudsley Prescribing Guidelines in Psychiatry,11th Edition
ただし、翌朝・日中にまで眠気が続いてしまう「持ち越し効果」が出やすいことに注意が必要です。
回答の根拠③:作用時間の異なる睡眠薬を併用することのメリット
寝付きも悪く、途中で目が覚めることもあるという場合には、作用の短い睡眠薬と作用の長い睡眠薬を併用することもあります。
しかし、睡眠薬の併用で効果が高まる、とする根拠はなく、特に3種以上の「ベンゾジアゼピン系」の併用は避けなければならない、とされています3)。
3) 日本睡眠学会 「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン (2013)」
そのため、睡眠薬は単剤で使うのが原則で、やむを得ない場合でも基本2種以下に留めておく必要があります。
催眠作用の強い抗うつ薬や、少量の抗精神病薬の併用も選択肢
「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬が効きにくい場合には、増量・併用するより、別の作用を持つ薬を使うことも選択肢になります3)。
※抑うつ状態がある場合
催眠作用の強い抗うつ薬(例:『リフレックス(一般名:ミルタザピン)』など)
※不安・焦燥(イライラ)が強い場合
少量の抗精神病薬(例:『セロクエル(一般名:クエチアピン)』
※昼夜逆転している場合
『ロゼレム(一般名:ラメルテオン)』
薬剤師としてのアドバイス:睡眠薬を使いながら、不眠の原因を根本的に解決する
睡眠薬を使えば、多くの場合すんなりと眠れるようになりますが、睡眠薬はずっと使い続ける薬ではありません。そのため、睡眠薬を使いながら、不眠の原因を根本的に解決する必要があります。
※若い人で多い不眠の原因
1.カフェインの摂り過ぎ
2.夜遅くまでパソコンやスマートホンなどの明るい液晶画面を見続けている
3.部屋を明るくしたまま寝ている
4.深夜に食事を摂って睡眠が浅くなっている
※高齢者に多い不眠の原因
1.日中の運動不足
2.昼寝のし過ぎ
3.部屋に引き籠りがちで日光を浴びていない
4.あまりに早い時間から布団に入っている
こうした不眠の原因を取り除き、最終的には薬なしでもぐっすりと眠れるように、生活習慣・環境の改善も併せて行うようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 『レンドルミン』などの「短時間型」は入眠障害に使うが、依存しやすいことに注意
2. 『ロヒプノール』などの「中~長時間型」は中途覚醒に使うが、持ち越し効果が多いことに注意
3. 「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬を併用するメリットは少ないため、安易な多剤併用は控える
添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較
◆薬効分類
レンドルミン:睡眠導入剤(ベンゾジアゼピン系)
ロヒプノール:不眠症治療剤(ベンゾジアゼピン系)
◆適応症
レンドルミン:不眠症、麻酔前投薬
ロヒプノール:不眠症、麻酔前投薬
◆半減期(t1/2)
レンドルミン:7時間 / 短時間型
ロヒプノール:19.2時間 / 長時間型
◆剤型の種類
レンドルミン:錠(0.25mg)、D錠(0.25mg)
ロヒプノール:錠(1mg、2mg)、静注
◆製造販売元
レンドルミン:ベーリンガー・インゲルハイム
ロヒプノール:エーザイ
+αの情報:海外への持ち出しに注意
日本では使用が許可されている薬でも、国によってはその扱いは様々です。
特に、『ロヒプノール』などの「フルニトラゼパム」製剤は、アメリカでは所持も禁止されているため、たとえ治療目的の所持であっても罰せられる恐れがあります。
海外渡航時には、主治医との相談・各大使館への問い合わせをし、持ち出して良い薬かどうかを確認するようにしてください。またその際、渡航中の無用なトラブルを避けるためにも「薬剤証明書」を書いてもらうことをお勧めします。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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