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「のど飴」がドーピングになる?~2017年から「ヒゲナミン」が禁止薬物に

回答:生薬の入った「のど飴」は、ドーピングになる可能性がある

 2017年1月1日から、新たに「ヒゲナミン」が禁止薬物として例示されています。
ヒゲナミンの禁止薬物指定
 これは、「ヒゲナミン」にはβ2刺激作用があるからです。もともと「β2刺激薬」は喘息治療に使う場合でも、決められた薬剤を決められた量で使わなければなりません

 「ヒゲナミン」は様々な生薬に含まれるため、漢方薬だけでなく「栄養補助食品」や「のど飴」にも含まれる可能性があります。そのため、購入・使用時は成分により注意するようにしてください。
 

回答の根拠:禁止表の更新と、「ヒゲナミン」を含む生薬

 2017年禁止表国際基準では、「ヒゲナミン」は非選択的β2刺激薬として、禁止薬物の例に挙げられています1)。

 1) 公益財団法人 日本アンチ・ドーピング機構 「2017年禁止表国際基準のポイント」

 もともと「β2刺激薬」は禁止薬物にカテゴリーされ、喘息治療に使う場合も例外的に認められた薬を適正に使う必要があります。
 今回、「ヒゲナミン」は禁止薬物として例示されたことによって、より厳しく制限されることになります。

 「ヒゲナミン」は様々な生薬に含まれているため、「漢方薬」や「栄養補助食品」・「のど飴」にも使われている可能性があります(後述)。安易な摂取は避けるようにしてください。

ヒゲナミンが含まれる可能性のあるもの

 なお、「龍角散のど飴」がドーピングになるとの誤報が広がっていますが、「ヒゲナミン」が含まれる生薬やハーブ類は使われていない、としています(https://www.ryukakusan.co.jp/news/detail/160/jp)。

薬剤師としてのアドバイス:「知らなかった」では済まされないので、日ごろから注意を

 禁止薬物については、「知らなかった」で許されるわけではありません。
 昨年2016年の更新時には「メルドニウム」が禁止薬物に追加されましたが、それを知らずに使用していたロシアのテニス選手が期限付きの資格停止処分を受けています。

 特に、最近は生薬に含まれる成分が指定されることも増えています。その結果、医薬品に限らず「栄養補助食品」や「のど飴」などにも油断ができなくなっています。
 購入・使用の際には必ず成分名を確認し、わからない場合は医師・薬剤師に相談するようにしてください。

「ヒゲナミン」を含む生薬と、医薬品の例

 「ヒゲナミン」が含まれると注意喚起された生薬には、「呉茱萸(ゴシュユ)」・「附子(ブシ)」・「細辛(サイシン)」・「丁子(チョウジ)」・「南天(ナンテン)」があります。

※「呉茱萸(ゴシュユ)」を含むもの
漢方薬:『呉茱萸湯(31)』、『温経湯(106)』、『当帰四逆加呉茱萸生姜湯(38)』など
その他:『ベルクリーン錠』、『液キャベコーワ』、『液キャベコーワS』、『女性保健薬 命の母A』、『クワナガ生薬胃腸薬』など

※「附子(ブシ)」を含むもの
漢方薬:『八味地黄丸(7)』、『桂枝加朮附湯(18)』、『真武湯(30)』、『大防風湯(97)』、『牛車腎気丸(107)』、『麻黄附子細辛湯(127)』など
その他:『アコニンサン糖衣錠』、『ウェルクスH』、『エベナL』など

※「細辛(サイシン)」を含むもの
漢方薬:『小青竜湯(19)』、『当帰四逆加呉茱萸生姜湯(38)』、『立効散(110)』、『苓甘姜味辛夏仁湯(119)』、『麻黄附子細辛湯(127)』など
その他:『アネトンアルメディ鼻炎錠』、『エスタック鼻炎カプセル12』、『サンワロンM』、『キッズバファリン鼻炎シロップS』など

※「丁子(チョウジ)」を含むもの
漢方薬:『女神散(67)』、『治打撲一方(89)』など
その他:『S・M散(※医療用)』、『液キャベコーワL』、『キャベジンコーワ細粒』、『太田胃散』、『第一三共胃腸薬プラス細粒』、『ソルマックプラス』、『ソルマックEX』、『シオノギ胃腸薬K』、『シグナル胃腸薬』、『スクラート胃腸薬S』、『パンシロン新胃腸薬a』、『薬用養命酒』、『カイゲン生薬胃腸薬』など

※「南天(ナンテン)」を含むもの
その他:『パイロンS錠』、『南天のど飴U(※第三類医薬品)』

注1)()内の数字は、ツムラの漢方薬での番号です。
注2)ここに挙げたもの以外にも、生薬は様々な場面で使われているため、必ず含有成分を確認するようにしてください。

+αの情報①:他の追加・更新情報にも注意を

 2017年の更新では、「ヒゲナミン」がβ2刺激薬として禁止薬物に指定されただけでなく、許可されたβ2刺激薬(吸入薬)であっても1日量をまとめて一度には使用しないことなど、より厳しい制限や条件が付け加えられています。
 また、咳止めの「コデイン」β2刺激薬同士の併用が「監視プログラム」に追加されたことにも注意が必要です1)。

※「監視プログラム」:使用の実態を調べるために例示された薬のこと。2016年には、「メルドニウム」が監視プログラムの対象から禁止薬物の指定へと変更されています。

+αの情報②:「エフェドリン」を含む生薬も、禁止薬物

 麻黄(マオウ)」や「半夏(ハンゲ)」などに含まれる「エフェドリン」は禁止薬物ですが、これらの成分は市販の風邪薬や漢方薬によく含まれています

 そのため、スポーツ選手は「市販の風邪薬や漢方薬なら大丈夫」と思わず、必ず医師・薬剤師に相談の上で使うようにしてください。

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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コメント

    • Fizz-DI
    • 2017年 1月 26日

    【修正】
     +αの情報①の部分で、「リン酸コデイン」と「β2刺激薬」の組み合わせが「禁止薬物」となっていましたが、「監視プログラムへの追加」に修正しました。

     また、「ヒゲナミン」も新たに禁止薬物に追加されたわけではなく、元から禁止薬物であったものが具体的に名前を例示されたことで注目された、という内容が正しく伝わるよう、文章の表現を修正しました。

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■日経メディカル開発
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