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似た薬の違い 利尿薬

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『ラシックス』と『フルイトラン』、同じ利尿薬の違いは?~ループ利尿薬とサイアザイド系の強さと適応

回答:『ラシックス』は利尿作用が強力なループ利尿薬、『フルイトラン』は降圧薬として優秀なサイアザイド系利尿薬

 『ラシックス(一般名:フロセミド)』と『フルイトラン(一般名:トリクロルメチアジド)』は、どちらも心不全や高血圧の治療に使う利尿薬です。

 『ラシックス』は利尿作用が強力なループ利尿薬です。
 『フルイトラン』は降圧効果に優れたサイアザイド系利尿薬です。

 適応症もほとんど同じですが、”利尿”か”降圧”か、目的によって使い分けるのが一般的です。場合によっては併用することもあります。

(2025年3月26日~ 更新作業中)

 

回答の根拠①:「フロセミド」の強力な利尿作用~ループ利尿薬の作用点

 腎臓の糸球体でろ過されたNaは、「近位尿細管」で60%、「ヘンレ上行脚」で30%、「遠位尿細管」で7%が再吸収され、最終的な尿が作られています1)。

 「フロセミド」や「トリクロルメチアジド」といった利尿薬は、このろ過されたNaの再吸収を阻害することで、Naや水を尿として排出させる作用がありますが、「フロセミド」のようなループ利尿薬は「ヘンレ上行脚」、「トリクロルメチアジド」のようなサイアザイド系利尿薬は「遠位尿細管」での再吸収に作用します1)。

 基本的に、より上流にある「ヘンレ上行脚」に作用するループ利尿薬の方が、利尿作用は強く現れやすい傾向にあります1)。特に「フロセミド」は1時間以内に利尿作用が現れる2)など、速効性にも優れた薬です。
 そのため「フロセミド」などのループ利尿薬は、心不全や浮腫などの治療で、水やNaを大量に排出する目的でよく使われます。

 1) Circulation.34(5):910-20,(1966) PMID:5332332
 2) ラシックス錠 インタビューフォーム

 

腎機能不全の際の使用

 利尿薬は腎機能が悪いと効き目が悪く、機能障害を更に悪化させる恐れもあるため、通常は腎不全の人にはあまり使いません。
 しかし、『ラシックス』には腎血流量を増やす作用があり、GFRが20mL/min以下の慢性腎不全患者であっても利尿効果が期待できます3)。

 3) Ann Intern Med.69(2):249-61,(1968) PMID:4385956

 

回答の根拠②:「トリクロルメチアジド」の優れた降圧効果~心不全を伴う高血圧治療に積極的適応のあるサイアザイド系利尿薬

 「トリクロルメチアジド」などのサイアザイド系利尿薬は、利尿作用そのものはそこまで強くないものの、24時間安定して血圧を下げる効果に優れています4)。
 このことから、サイアザイド系利尿薬はARBやACE阻害薬Ca拮抗薬β遮断薬と並んで高血圧治療の中心的な薬「主要降圧薬」に選ばれており、特に心不全を伴う高血圧に積極的に使われています5)。

 4) フルイトラン錠 インタビューフォーム
 5) 日本高血圧学会 「高血圧治療ガイドライン (2014)」

 

ARBとサイアザイド系利尿薬の配合剤がたくさんある

 主要降圧薬は、1つの薬を増量するよりも、複数の薬を組み合わせた方が少ない副作用で効率よく降圧効果を得ることができます6)。そのため、高血圧治療では薬の数が増えがちですが、このとき服薬の手間を減らす”配合剤”がよく使われています7)。
 「トリクロルメチアジド」などのサイアザイド系利尿薬は、ARBとの配合剤が多く販売されています。

※サイアザイド系利尿薬が配合された降圧薬の例

ARBサイアザイド系利尿薬
イルトライルベサルタントリクロルメチアジド
エカード
[後]カデチア
カンデサルタンヒドロクロロチアジド
コディオ
[後]バルヒディオ
バルサルタンヒドロクロロチアジド
プレミネント
[後]ロサルヒド
ロサルタンヒドロクロロチアジド
ミコンビ
[後]テルチア
テルミサルタンヒドロクロロチアジド

 6) Am J Med.122(3):290-300,(2009) PMID:19272490
 7) Hypertension.55(2):399-407,(2010) PMID:20026768

薬剤師としてのアドバイス:特に理由がなければ、午前中に飲む

 「フロセミド」や「トリクロルメチアジド」といった利尿薬は、文字通り尿量を増やす作用があるため、寝る前に飲むと夜中にトイレに行きたくなってしまう恐れがあります。このことから、利尿薬は特別な理由がなければ、起きている午前中に服用するのが一般的です。
利尿薬の服用タイミング
 ただし、飲み始めの2週間程度は、服用後にトイレが近くなることもあるため、午前中でも電車通勤の人は会社に着いてから飲むなど、自分がトイレに行きにくい時間帯を避けて飲むことをお勧めします。 

 

ポイントのまとめ

1. 『ラシックス』などの「ループ利尿薬」は、利尿作用が強力なので心不全や浮腫によく使う
2. 『フルイトラン』などの「サイアザイド系利尿薬」は、降圧作用が優秀で、高血圧治療によく使う
3. 利尿薬は、寝る前や電車に乗る前など、トイレに行きたくなると困るようなタイミングは避けて飲む

 

 

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆利尿薬の分類
ラシックス:ループ利尿薬
フルイトラン:サイアザイド系利尿薬

◆適応症
ラシックス:高血圧症(本態性、腎性等)、悪性高血圧、心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、月経前緊張症、末梢血管障害による浮腫尿路結石排出促進
フルイトラン:高血圧症(本態性、腎性等)、悪性高血圧、心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、月経前緊張症

◆用法
ラシックス:1日1回
フルイトラン:1日1~2回

◆腎不全患者に対する禁忌
ラシックス:なし
フルイトラン:禁忌

◆効果持続時間
ラシックス:6時間
フルイトラン:24時間

◆降圧薬への配合
ラシックス:なし
フルイトラン:あり

◆剤型の種類
ラシックス:錠(10mg、20mg、40mg)、細粒(※販売中止が決定)、注
フルイトラン:錠(1mg、2mg)

◆製造販売元
ラシックス:サノフィ
フルイトラン:塩野義製薬

 

+αの情報:代償性の抗利尿に対する併用

 『ラシックス』などの「ループ利尿薬」を長期で使い続けていると、「ヘンレ上行脚」で再吸収が減った分の代償として、「遠位尿細管」での再吸収が増えている場合があります(代償性抗利尿)。
 この場合、「遠位尿細管」に作用する「サイアザイド系利尿薬」を併用することによって、一時的に利尿効果を高めることができる場合があります7)。

 7) メディカルレビュー社 「利尿薬抵抗性(diuretic resistance)」 Fluid Management Renaissance Vol.3 No.3:58-63,(2013)

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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