『アドソルビン』と『タンナルビン』、同じ下痢止めの違いは?~吸着剤と整腸剤
記事の内容
回答:吸着剤の『アドソルビン』と、整腸剤の『タンナルビン』
『アドソルビン(一般名:天然ケイ酸アルミニウム)』と『タンナルビン(一般名:タンニン酸アルブミン)』は、どちらも下痢止めの薬です。
『アドソルビン』は、腸内の有害物質や余分な水分を吸着する「吸着剤」です。
『タンナルビン』は、腸の粘膜を整える「整腸剤」です。
どちらも下痢止めとしてはやさしい薬で、特に明確な使い分けの基準はなく、子どもが抗生物質で下痢をしている際にもよく使われます。ただし、『タンナルビン』は牛乳アレルギーの人には使えません。
また、細菌性の下痢の場合、無理に下痢を止めると治りが悪くなる恐れがあるため、どんな下痢にでも使って良いわけではありません。
回答の根拠①:『アドソルビン』の吸着作用
『アドソルビン』は、胃や腸内にある有害物質や過剰な水分・粘液を吸着する作用がある「消化管用吸着剤」で1)。
1) アドソルビン原末 添付文書
腸内の水分が過剰になると下痢になるため、余分な水分を吸い取る『アドソルビン』は乳幼児の下痢に対する「対症療法」で使われています。
成人でも使うことはできますが、粉薬である『アドソルビン』の量が非常に多くなる(1日10g)ため、頻繁には使われていません。
回答の根拠②:『タンナルビン』の収斂作用
『タンナルビン』は、腸で「タンニン酸」を遊離して穏やかな収斂作用を発揮する「整腸剤」です2)。
2) タンナルビン「ホエイ」 添付文書
腸の粘膜が炎症を起こして過敏になると、下痢を起こしやすくなります。
「タンニン酸」は、腸内のタンパク質と結合して被膜を作り、腸の粘膜を覆います。これによって腸粘膜の炎症を鎮め、粘膜が受ける刺激を減らします。これを「収斂作用」と呼びます。
『タンナルビン』は、この「収斂作用」によって腸の働きを整え、下痢の症状を改善します。
牛乳アレルギーの人は使えない
牛乳アレルギー(牛乳タンパク過敏症)の人は、牛乳に含まれる「カゼイン」・「α-ラクトグロブリン」・「β-ラクトグロブリン」などが原因物質となって、アレルギー反応を起こします3)。
3) タンナルビン「ホエイ」 インタビューフォーム
『タンナルビン』には「カゼイン」が含まれているため、牛乳アレルギーの人には使えません2)。
回答の根拠③:感染性の下痢には、安易に使わない
『アドソルビン』や『タンナルビン』は、「細菌性の下痢」には「原則禁忌」とされています1,2)。
「細菌性の下痢」では、腸内で増えた細菌を身体の外へ出すため、身体の防衛反応として下痢を起こすことがあります。こうした下痢を無理に止めてしまうと、細菌の排出がうまく行かず、むしろ病状が長引いてしまう恐れがあるからです。
実際、下痢止めは患者の脱水症リスクを減らし、また生活の質を向上させるために確かに有効ですが、細菌や細菌の作る毒素・有害物質の排出を遅らせる恐れもあり、安易に使うべきではないとする指摘がされています4)。
4) Gastroenterology.134(4):1260-2,(2008) PMID:18395108
そのため、原因がはっきりしない下痢は薬で無理に止めてしまわず、一度病院を受診することをお勧めします。
薬剤師としてのアドバイス:抗生物質でいつも下痢する場合は、予め医師に相談を
抗生物質を飲むと、良い腸内細菌(善玉菌)にまで影響してしまうため、腸内細菌のバランスが崩れて下痢をすることがあります。この副作用は一時的なものなので、基本的には心配する必要はありません。
しかし、ひどい下痢で生活に困るような場合には、『ビオフェルミンR』などの整腸剤や、『アドソルビン』や『タンナルビン』といった下痢止めを一緒に使うことで、ある程度は副作用を減らすことができます。
抗生物質で下痢をして困るからといって、薬を途中で止めたりすると「耐性菌」が生まれる原因にもなり、非常に危険です。お腹の調子を崩しやすい場合は、予めその旨を医師に伝え、抗生物質と一緒に整腸剤や下痢止めを処方してもらえないかどうか、相談することをお勧めします。
ポイントのまとめ
1. 『アドソルビン』は、余分な水分や有害物質を吸着する「吸着剤」
2. 『タンナルビン』は、腸に被膜を作って粘膜を整える「整腸剤」
3. 細菌性の下痢の場合、薬で下痢を止めると治りが悪くなることもある
添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較
◆薬効分類
アドソルビン:消化管用吸着剤
タンナルビン:整腸剤
◆適応症
アドソルビン:下痢症
タンナルビン:下痢症
◆用法
アドソルビン:1日3~4回
タンナルビン:1日3~4回
◆アレルギー関係の禁忌
アドソルビン:なし
タンナルビン:牛乳アレルギーの人に禁忌
◆細菌性の下痢に対する使用
アドソルビン:原則禁忌
タンナルビン:原則禁忌
◆併用禁忌
アドソルビン:なし
タンナルビン:鉄剤と併用すると、効果が弱まる
◆製造販売元
アドソルビン:第一三共
タンナルビン:マイラン製薬 ほか
+αの情報:「吸着剤」の『アドソルビン』は、薬物・毒物中毒の処置にも使う
『アドソルビン』は、様々な有害物質を吸着する作用があるため、薬物・毒物の中毒処置にも使われることがあります。
ただし、こうした中毒処置の場合、下痢止めの2~5倍(1回20~50g)の量で使う必要があります5)。そのため、下痢止めとして少量で使っている場合に、一緒に飲む薬を吸着して効果を無くしてしまうことはありません。
5) 農林水産省消費・安全局農産安全管理課 監修「農薬中毒の症状と治療法 第16版 (2016)」
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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