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似た薬の違い 慢性肝疾患

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『リーバクト』と『アミノレバン』、同じアミノ酸製剤の違いは?~BCAA製剤のカロリーと使い分け

回答:アミノ酸だけの『リーバクト』、栄養補給も兼ねた『アミノレバン』

 『リーバクト』と『アミノレバン』は、どちらも肝不全の時のアミノ酸バランスを整える、「分岐鎖アミノ酸(BCAA:Branched-Cain Amino Acids)」の薬です。

 『リーバクト』は、「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」だけの薬です。
 『アミノレバン』には、「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」だけでなく、五大栄養素も含まれているため、栄養補給も兼ねて使います。
リーバクトとアミノレバン~BCAA製剤の差
 そのため、十分に食事を摂れているかどうか、主に使う人の栄養状態によって使い分けます。

回答の根拠①:「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」だけで、低カロリーな『リーバクト』

 『リーバクト』には、「L-バリン」・「L-ロイシン」・「L-イソロイシン」の3種の「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」が含まれています1)。
 入っているのはこの「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」だけなので、『リーバクト』は非常に低カロリーです。
リーバクト~分岐鎖アミノ酸のみ
※『リーバクト』のカロリー 2)
顆粒1包・・・・約16kcal
ゼリー1個・・・約17kcal

 1) リーバクト配合顆粒 添付文書
 2) リーバクト配合顆粒 インタビューフォーム

『リーバクト』はどういった時に必要なのか?~普通の食事ができる人に

 食事も十分に摂った上で、栄養素を含む「アミノ酸製剤」を使うと、カロリー過剰になってしまいます。しかし、だからといって食事を制限してまで薬で栄養補給することは望ましくありません。 

 そのため、普通に食事を摂れている人は、低カロリーの『リーバクト』が適しています。

 『リーバクト』を使う際は、1日あたりタンパク質40g以上、カロリー1,000kcal以上の熱量を食事から摂るよう注意書きがされています2)。個人差はありますが、これが「普通に食事を摂れる」ことの一つの目安です。

回答の根拠②:五大栄養素も含む『アミノレバン』~含まれる成分の目的

 『アミノレバン』には、『リーバクト』と同じ「分岐鎖アミノ酸」に加え、五大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物(糖質)・ビタミン・微量元素)も入っています3)。
アミノレバン~BCAAと五大栄養素
 3) アミノレバンEN配合散 添付文書

※『アミノレバン』に含まれるもの 3)
1.分岐鎖アミノ酸(BCAA):L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン
2.その他のアミノ酸:L-トレオニン、L-アルギニン、L-トリプトファン、L-リシン、L-ヒスチジン
3.タンパク質:ゼラチン加水分解物
4.脂質:コメ油
5.糖質:デキストリン
6.ビタミン:レチノール、エルゴカルシフェロール、ビスベンチアミン、リボフラビン、ピリドキシン、シアノコバラミン、葉酸、L-アスコルビン酸トコフェロールフィトナジオンパントテン酸、ニコチン酸アミド、ビオチン
7.微量元素:硫酸Mg水和物、グリセロリン酸Ca、リン酸二水素Na、クエン酸第一鉄硫酸銅、硫酸亜鉛、ヨウ化カリウム、硫酸マンガン、塩化カリウム
8.肝臓を守る成分:重酒石酸コリン(肝機能改善の薬『プロヘパール』にも含まれる成分)

『アミノレバン』はどういった時に必要なのか?~肝性脳症の悪循環

 肝臓の機能が衰えると、本来は肝臓で解毒される「アンモニア」が血液中に増えます。それが脳に蓄積すると「肝性脳症」を起こすことがあります。
 この「肝性脳症」の症状を改善するためには、タンパク質の量を制限した食事が有効です4)。

 4) メルクマニュアル 「肝性脳症」

 しかし、こうした食事制限によって低栄養状態に陥ってしまう人が少なくありません。かといって、タンパク質の量を増やすと体内で「アンモニア」が増え、「肝性脳症」のリスクが高まります。
低栄養と肝性脳症の悪循環
 このように、タンパク質の量を増やせば「肝性脳症」、減らせば「低栄養」と、悪循環を繰り返すことになります。

 『アミノレバン』は1日(3包)でタンパク質40.5g、熱量630kcalになるため、タンパク質の量を抑えたまま栄養を補給でき、こうした悪循環を止めることができます3)。

薬剤師としてのアドバイス:夜間・早朝のエネルギー不足に注意

 肝臓が弱ると、肝臓にエネルギーを溜めておくことができなくなります。
 そのため、夕食から翌日の朝食までの時間が空き過ぎると、夜間や早朝にエネルギー不足を起こすことがあります。
肝不全による夜間と朝のエネルギー不足
 例えば、寝ている間に足がつる(こむらがえり)、朝起きた時から疲れている、といった場合には、エネルギー不足を起こしている可能性があります。

 こうしたトラブルは、食事や薬の時間を工夫する、適度な夜食を摂るなどの対応で解消できる可能性があります。食事や薬の時間、夜間・早朝に起きたトラブルの内容を具体的に記録し、それを医師に見せながら相談することをお勧めします。

ポイントのまとめ

1. 『リーバクト』は、普通の食事ができている人向けの、「アミノ酸」だけの薬
2. 『アミノレバン』は、タンパク質の量を制限した栄養補給もできる、「アミノ酸」の薬
3. 寝ている間に足がつる、朝から疲れている場合は、記録をとって主治医に相談を

添付文書・インタビューフォーム記載事項の比較

◆適応症
リーバクト:食事摂取量が十分にもかかわらず、低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善
アミノレバン:肝性脳症を伴う慢性肝不全患者の栄養状態の改善

◆用法
リーバクト:1日3回、食後
アミノレバン:1日3回、食事と一緒に

◆1日量(3回分)のカロリー
リーバクト:48kcal
アミノレバン:630kcal

◆摂取できる「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」の1日量
※リーバクト

 L-バリン:3,432mg
 L-ロイシン:5,712mg
 L-イソロイシン:2,856mg

※アミノレバン
 L-バリン:4,806mg
 L-ロイシン:6,111mg
 L-イソロイシン:5,768mg

◆剤型の種類
リーバクト:顆粒、経口ゼリー
アミノレバン:散、点滴静注

◆専用フレーバーの種類
リーバクト:青りんご・コーヒー・ヨーグルト(経口ゼリー用)
アミノレバン:ヨーグルト・パイナップル・コーヒー・フルーツ(散用)

◆製造販売元
リーバクト:EAファーマ
アミノレバン:大塚製薬

+αの情報:Fischer比~「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」と「芳香族アミノ酸(AAA)」

 アミノ酸には、「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」と「芳香族アミノ酸(AAA)」があります。

 これらのアミノ酸はエネルギー源として利用されますが、肝臓は両方のアミノ酸を使えるのに対し、筋肉は「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」しか使うことができません。
 肝不全になると肝臓での代謝が少なくなるため、筋肉でひたすら「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」ばかりが消費されます。その結果、相対的に「芳香族アミノ酸(AAA)」が過剰になってきます。
アミノ酸のバランス~BCAAとAAA
 このように、「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」と「芳香族アミノ酸(AAA)」のバランス(Fischer比)が崩れると、人体に様々な悪影響を及ぼします。

 そのため、『リーバクト』や『アミノレバン』などで「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」を補給することで体内のアミノ酸バランスが整えられ、肝不全患者の予後が改善されます5)。

 5) 肝臓.29(8):1051-1061,(1988)

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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