『プロマック』でなぜ「銅欠乏症」の副作用が起こる?~亜鉛と銅のバランスと、亜鉛の含有量
2016年11月22日に、『プロマック』の添付文書に「銅欠乏症」の副作用が追記されています。
記事の内容
回答:「亜鉛」の摂り過ぎは、「銅」の吸収を妨げる
胃潰瘍の薬『プロマック(一般名:ポラプレジンク)』には「亜鉛」が含まれています。この「亜鉛」は、摂り過ぎると「銅」の吸収が妨げられ、貧血などの「銅の欠乏症」を起こすことがあります。
「亜鉛」と「銅」は、男女ともに10:1程度のバランスを保つ必要があります。
通常、『プロマック』を飲んでいるだけで「亜鉛」が過剰になることはありませんが、栄養状態が悪い時などは普段よりも食生活に注意し、この「亜鉛」と「銅」のバランスが崩れないように気を付けるようにしてください。
回答の根拠①:「亜鉛」と「銅」の関係~10:1のバランス
「亜鉛」を摂り過ぎると「銅」の吸収が妨げられ、貧血などの「銅欠乏症」を起こすことが古くから知られています1)。
実際、「亜鉛」のサプリメントを摂取している人では、「銅」の欠乏を原因とする「神経症状」や「貧血」を起こす人が多いことも報告されています2)。
1) JAMA.264(11):1441-3,(1990) PMID:2094240
2) J Clin Pathol.68(9):723-5,(2015) PMID:26085547
このことから、最近の「亜鉛」のサプリメントには「銅」も一緒に配合されているのが一般的です(例:Asahiの「Dear-Natura」:亜鉛14mg + 銅0.6mg)。
「亜鉛」と「銅」のバランス
「亜鉛」の摂取基準は、成人男性で1日10mg、成人女性で1日8mg程度とされています3)。
「銅」の摂取基準は、成人男性で1日1.0mg、成人女性で0.8mg程度とされています3)。
3) 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準 2015年版」
このことから、「亜鉛」と「銅」の適切な摂取バランスは10:1程度であると言えます。
回答の根拠②:『プロマック』の亜鉛含有量と、基準摂取量
『プロマック』は、錠剤1錠・顆粒1包(0.5g)中に、「亜鉛」を16.9mg含みます4)。通常、これを1日2回服用するため、1日の「亜鉛」摂取量は33.8mgとなります。
4) プロマックD錠・顆粒 インタビューフォーム
「亜鉛」は、成人男性で45mg、成人女性で35mg程度を超えると、過剰摂取を起こすリスクが高まるとされています3)。
そのため、『プロマック』を飲んでいるからといって、それだけで「亜鉛」過剰になるわけではなく、健康で十分にバランスのとれた食事をしている人であれば全く問題ありません。
しかし、食事量が少なかったり、元から栄養バランスが崩れていて「銅」の摂取量が少ないような場合には、『プロマック』の服用だけで「亜鉛」と「銅」のバランスを崩してしまう恐れがあります。
薬剤師としてのアドバイス:バランスの良い食事を心がける
「銅」はレバーや、イカ・タコ・エビ・カニなどの海産物、納豆やカシューナッツなどの豆類に豊富に含まれています。
栄養状態に不安のある状態で『プロマック』を服用している場合には、食事で少し「銅」の豊富な食材をとるように心がけることをお勧めします。
ただし、「亜鉛」も不足すると貧血や味覚障害、皮膚炎などを起こします。摂り過ぎにばかり気をとられて不足しないよう、何事もバランス良く行うことが大切です。
+αの情報:「亜鉛」の補給のために『プロマック』を使うことも
『プロマック』には「亜鉛」が豊富に含まれているため、「亜鉛」の欠乏症の治療のために使われることもあります。
『プロマック』の適応症は胃潰瘍のみ4)ですが、「味覚障害」に対する使用も保険審査上、認めるとの通達がされています5)。
5) 厚生労働省 「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて(保医発第0928第1号)」
また、2017年3月に『ノベルジン(一般名:酢酸亜鉛)』に低亜鉛血症への適応が追加になり、保険適用のある唯一の亜鉛製剤となっています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
この記事へのコメントはありません。