前立腺肥大の人は、市販の風邪薬を飲めない?~抗コリン作用と排尿障害
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回答:飲んではいけない成分があるので、注意して選ぶ
前立腺肥大の人は、もともと尿道が圧迫されて尿が出にくい状態になっています。
その状態で、尿の出を悪くする作用のある薬を飲むと、症状がより悪化してしまう恐れがあります。
このような作用の薬は市販の風邪薬や鼻炎薬にもよく含まれているため、薬を買う時は注意して避ける必要があります。
風邪薬くらい・・・と油断せず、お薬手帳などを持参して安全に使える薬を選ぶようにしてください。
回答の根拠①:「抗コリン作用」と排尿への影響
前立腺肥大症で尿が出にくくなっている排尿障害の人には、「抗コリン作用」のある薬は禁忌に指定されています。
これは、薬の「抗コリン作用」によって膀胱平滑筋の弛緩・膀胱括約筋の緊張が起こり、更に尿が出にくくなる恐れがあるからです1)。
1) レスタミン錠 添付文書
ただし、前立腺肥大の症状が軽く、特に排尿障害も起こしていないような場合には、「抗コリン作用」のある薬を飲んでも問題ない場合もあります。
回答の根拠②:抗ヒスタミン薬と「抗コリン作用」
アレルギー治療に使う抗ヒスタミン薬のうち、「第一世代」の薬と、一部の第二世代の薬には「抗コリン作用」があります。
※「抗コリン作用」のあるアレルギー薬と、それを含む薬の例
クロルフェニラミン(例:『ポララミン』、『セレスタミン配合錠』、『フスコデ配合錠』など)
シプロヘプタジン(例:『ペリアクチン』など)
メキタジン(例:『ゼスラン』など)
プロメタジン(例:『PL配合顆粒』など)
これらの「抗ヒスタミン薬」は、くしゃみ・鼻水といったアレルギー症状によく効くため、市販の風邪薬・鼻炎薬にもよく使われています。そのため、前立腺肥大の人が薬の選び方を間違うと、最悪の場合、尿が全く出なくなってしまうなどのトラブルに見舞われる恐れがあります。
※「抗コリン作用」のあるアレルギー薬を含む、市販薬の例
「クロルフェニラミン」を含む市販の薬(1,733種)
例:『コルゲンコーワIB錠TX』、『パブロンエースAX』、『コンタック総合かぜ薬』など
「メキタジン」を含む市販の薬(18種)
例:『アルガード クイックチュアブル』、『ストナリニ ガード』、『パブロンAG錠』など
このように、「抗コリン作用」を持つアレルギー薬は非常にたくさんの医薬品に含まれています。うっかり飲んでしまわないよう注意してください。
薬剤師としてのアドバイス:市販薬を買う時も、お薬手帳を見せる
市販薬だったら多少は無茶な使い方をしても大丈夫、と油断する人は少なくありません。
確かに、市販薬は医療用の薬よりも、大きな副作用のリスクや飲み合わせの複雑さは少ない傾向にあります。しかし、だからといって副作用や飲み合わせに気を付けなくても良いというわけではありません。
市販薬を買う時も、自分にあった薬を選べるようにお薬手帳を見せ、避けられる副作用は確実に避けるよう努めることをお勧めします。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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