子どもの『カロナール』、何時間の間隔を空けるべき?~追加する前に考える2つの可能性
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回答:最低でも4時間、できれば6時間ほど空ける
『カロナール(一般名:アセトアミノフェン)』を追加で飲む場合は、最低でも4時間、できれば6時間以上の間隔をあける必要があります。
薬は、飲んで2~3分で効くものではありません。まず、先に飲んだ薬が効いてくるのを待つ必要があります。
また、『カロナール』などの解熱鎮痛薬にできるのは、あくまで熱や痛みなどの不快な症状を和らげるための対症療法です。1回飲んで治らない場合には、安易に薬を追加する前に、その熱は本当に下げる必要があるのか、その痛みに薬が合っているかどうかを考えることをお勧めします。
回答の根拠①:追加で飲む前に考えるべき、2つの可能性
『カロナール』の服用間隔は、4~6時間以上と決められています1)。これは、『カロナール』を飲むと30分ほどで効き始め、その効果は5時間ほど続くからです。
1) カロナール錠 添付文書
つまり、1回飲んでも熱や痛みが治まらず、4時間以内に薬を追加したいと思う場合、実は薬が効いていることに気づいていない可能性や、そもそも薬が合っていない可能性などを考える必要があります。
こういった場合、薬の本来の目的を正しく理解することや、より適した薬に変更することなど、別の対応をするのが最善です。
可能性①:薬の効果に気付いていない
『カロナール』は、熱を下げるために使いますが、36℃の平熱まで下げる必要はありません。
そもそも、『カロナール』などの解熱薬は、38℃を超える異常な高熱によって起こる節々の痛みや身体のだるさなど、不快な症状を和らげるための対症療法です。
そのため、不快さがマシにさえなれば、熱は0.1~0.2℃しか下がらなくても薬の目的は達成されています。
また、薬を飲んだのに熱が変わらなかった場合は、飲んでいなければもっと高熱になっていたところ、『カロナール』が効いてそれ以上には上がらなかった、という可能性があります。
この場合は、高熱が酷くならなかったことで薬の目的が達成されています。まだ不快さが残っている場合でも、安易に薬を追加すると過量になって副作用が出る恐れもあるため、4時間待ってから次の薬を飲む必要があります。
可能性②:薬が合っていない
『カロナール』には痛みを和らげる効果がありますが、ヒトが感じる全ての痛みに効くわけではありません。
胃が荒れて痛むような場合には、『カロナール』のような解熱鎮痛薬は余計に胃を荒らすため逆効果になります。また、片頭痛や神経痛のような特殊な痛みには、『カロナール』では十分な効果が得られない可能性もあります。
特に、『カロナール』の鎮痛効果はやさしめなため、どうしても痛みが治まらない場合にはより強力な『ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)』の坐薬などを使うことも考える必要があります。
このとき、飲み薬の『ボルタレン』や、広く市販もされている『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』は子どもには使えないことにも注意が必要です。
回答の根拠②:1回飲めば5時間くらいは効いている
『カロナール』の効果は、血液中の薬の濃度の推移から予測することができます。
※『カロナール』の体内動態データ 2)
有効血中濃度:2.4~20μg/mL
最高血中濃度到達時間(Tmax):0.46時間
最高血中濃度(Cmax):9.1μg/mL
半減期(t1/2):2.36時間
2) カロナール錠 インタビューフォーム
『カロナール』は、血液中の薬の濃度が2.4~20μg/mLの時に、解熱鎮痛効果を発揮します。
『カロナール』を飲むと、0.46時間で血液中の濃度が最大の9.1μg/mLとなり、その後2.38時間ごとにこの濃度は半分ずつに減っていきます。
(飲んだ直後)
0μg/mL
(0.46時間後:飲んでから約30分後)
9.1μg/mL
(その2.38時間後:飲んでから約3時間後)
9.1 × 50% = 4.5μg/mL
(その更に2.38時間後:飲んでから約5時間後)
4.5 × 50% = 2.3μg/mL
つまり、5時間ほど経つと『カロナール』の血中濃度が有効範囲の下限(2.4μg/mL)を下回るようになり、効き目が切れてくることがわかります。
薬の効き目には個人差がありますが、一般的に4~6時間あけることとされているのには、こうした理由があります。
4時間を待たずに熱や痛みが強まってくる場合には、インフルエンザなど高熱を出す感染症である可能性、『カロナール』では治まらない特殊な痛みや強い痛みである可能性を考え、一度きちんと病院を受診することをお勧めします。
薬剤師としてのアドバイス①:何か一口食べてから飲む追加で飲む
『カロナール』などの解熱鎮痛薬は、副作用で胃を荒らしやすい薬です。そのため、お腹が空っぽの状態で薬を飲むと、この副作用が出やすくなります。
ビスケット1枚、チョコレート1粒でも良いので、何か一口食べてから薬を飲むことをお勧めします。熱などで食欲がどうしてもない場合には、コップにしっかりと1杯(180mL)の多めの水で飲むようにしてください。
薬剤師としてのアドバイス②:熱が上がり続けている時は、下手に冷やさない
高熱の時は、『カロナール』などの解熱薬を使うほかに、頭や脇の下などを冷やすことでも熱を冷まし、しんどさを和らげることができます。
しかし、まだ熱が上がり続けている状態の時には、ヒトは「寒気」を感じるのが一般的です。この時に冷やすと、寒気が悪化してしまうこともあります。
高熱であっても、子どもが冷やすことを嫌がる場合には「まだ熱が上がっている状態」である可能性を考える必要があります。
+αの情報:インフルエンザの時の解熱鎮痛薬には注意
インフルエンザの時は、安易に解熱鎮痛薬を使うと「インフルエンザ脳症」を起こす恐れがあります。
特に子どもの場合は、インフルエンザの疑いがある時には比較的安全に使える『カロナール』などの「アセトアミノフェン」を使うようにし、他の解熱鎮痛薬は避けることが勧められています3)。
3) 日本小児神経学会 「インフルエンザ脳症はどうしたら予防できますか?」
市販の風邪薬にも大抵の場合は解熱鎮痛薬が含まれているため、成分には注意し、薬剤師に確認するようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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