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知っておくべきこと 副作用

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薬剤師が、敢えて副作用を説明しないことがあるのは何故?~「ノセボ効果」と、副作用情報を垂れ流すWebサイトの実害

回答:余計な情報提供が、副作用の原因になることもあるから

 薬剤師が情報提供をする際、敢えて副作用について説明しないことがあります。余計な情報提供をし、不必要な不安を煽ると、それが副作用の原因になることもあるからです。

 そのため薬剤師は、薬に対して不必要な不安を煽らないよう、患者の体質や持病・生活環境・併用薬などから、気を付けるべき副作用を選び、慎重に説明しています。
 また、副作用のリスクを説明した場合には、その副作用を避ける方法や、副作用が起きた場合の対処方法などもあわせて指導・教育しています。

 副作用についての情報提供をする際には、それだけ細心の注意を払わなければならないのです。

 このとき、滅多に起こらない副作用や、ほとんど関係ない副作用など、情報提供しない方が良いと判断した場合には、敢えてその説明をしないこともあります。

 にも関わらず、最近は週刊誌などで薬のネガティブキャンペーンが盛んに行われたり、インターネット上には専門知識のない人が作った無責任に副作用情報を垂れ流すWebサイト(キュレーションサイトなど)が増えたりと、薬剤師の地道な努力が台無しになっているケースが多発しています。

 

回答の根拠:ノセボ効果~医療不信や不安から生まれる実害

 全く信用していない医師から処方された薬は、あまり飲む気がしません。飲んでも効く気がしません。
 また、テレビや新聞・雑誌、ネットの情報などで、極端に強調された副作用の話などを聞くと、その薬を飲むのが不安になります。

 このような不信感や不安によって、通常よりも効果が弱まってしまったり、普通は起こらない副作用を感じてしまったりすることがあります。有効成分が全く含まれていない「偽薬」で副作用を感じることすらあります。
ノセボ効果
 こうした説明不可能な、望ましくない作用のことを「ノセボ効果」と呼びます。

 実際、片頭痛治療薬の効果を検証していた際に、「偽薬」でも治療薬と同じ頻度で吐き気などの副作用が起こったという報告をはじめ1)、「ノセボ効果」が起こってしまった実例は数多く存在します。

 1) Pain.146(3):261-9,(2009) PMID:19781854

※「ノセボ効果」とは逆に、説明不可能な望ましい効果のことを「プラセボ効果」と呼びます。

不必要な情報提供は、薬を敬遠する原因にもなる

 『カロナール(一般名:アセトアミノフェン)』は、乳幼児から使える解熱鎮痛薬で、妊娠中やインフルエンザの時にも安全に使えるなど副作用も少ない薬ですが、稀に肝臓に負担をかけることがあります。

 しかし、この副作用について、日常的に事細かに説明する薬剤師は居ません。
 何故ならば、この副作用はお酒を日常的に大量摂取している人や、薬を1日1,500mg以上使う人にとってはリスクになりますが、それ以外の人ではほぼ問題にならないからです。
 
 お酒を飲まない人や、薬も少量しか使わない人に、「この薬は肝障害を起こす恐れがあります」などと言うと、不安になって薬を使わなくなってしまう恐れもあります。

 このように、情報提供するメリットよりもデメリットの方が大きい場合には、副作用について説明しないこともあります(もちろん、情報提供した上で心配ありませんと指導することもあります)。

※一般の方に薬の添付文書を読むことをお勧めしないのにも、同様の理由があります。

副作用に関する情報提供には、リスクがある

 確かに、薬には副作用が存在します。ごく稀な副作用であっても、起こる可能性はゼロではありません。

 薬はそれだけ危険なものであるからこそ、薬を使うメリットとデメリットを天秤にかけ、メリットの方が大きいと医師が判断した場合に初めて、薬が処方されます。そして、その薬をできる限り安全に使ってもらうために、薬剤師が正しい使い方や注意点について説明・指導をします。 

 このとき、副作用をどこまでを説明するべきかは議論の余地がありますが、副作用に関する情報提供には少なくとも、「ノセボ効果」による副作用や薬を敬遠する原因になるなど、明らかなリスクがあります
副作用に関する情報提供のリスク
 そのため、専門知識のない人が無責任に副作用に関する情報を垂れ流すべきではありませんし、専門知識を持つ薬剤師であっても、細心の注意を払って判断をしなければなりません。

 それだけ、多くの人の不安に直結する、シビアな情報であることを肝に銘じる必要があります。

薬剤師としてのアドバイス:疑問や不安は、きちんと専門家に相談を

 薬について調べものをしていると、どうしても副作用などの否定的な情報に目が行きがちです。

 しかし、せっかく処方された薬です。最大限の効果を引き出すためには、副作用などの否定的な情報ばかり調べるのではなく、どんな風に効くのか、優れた面の情報にも目を通して欲しいと思います。

 自分に処方された薬はすごい薬だと思うことができれば、「プラセボ効果」によってより高い効果も期待できます。

 
 また調べものをする際、インターネット上の情報を参考にする場合には、信頼できる情報なのかどうか、その情報発信元や情報源を確認するようにしてください。
 そして、何か薬の効果や副作用に関して疑問や不安を感じた場合には、医師・薬剤師などの専門家に相談することをお勧めします。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます(2022年)
■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)
服薬指導がちょっとだけ上手になる本(2024年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
南山堂「薬局」、Medical Tribune
薬ゼミ、診断と治療社
ダイヤモンド・ドラッグストア
m3.com

 

【講義・講演等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学/和歌山県立医科大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

 

【監修・出演等】
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