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がん治療 吐き気・つわり

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『イメンド』ってどんな薬?~抗がん剤の副作用と、急性・遅発性の吐き気

回答:抗がん剤による「吐き気」を抑える薬

 『イメンド(一般名:アプレピタント)』は、抗がん剤の副作用である「吐き気」を抑える、「NK1受容体拮抗薬」です。

 抗がん剤の副作用で起こる「吐き気」には、すぐに現れて24時間以内に治まる「急性」のものと、翌日以降から数日程度続く「遅発性」のものがあります。
 『イメンド』は、この「急性」と「遅発性」の両方を防ぐことができる薬です。
イメンド~急性と遅発性の吐き気に対する効果

 抗がん剤による吐き気対策について定めたいずれのガイドラインにおいても、吐き気のリスクが高い場合には『イメンド』の使用が推奨されています。

回答の根拠①:抗がん剤による「吐き気」のメカニズム

 抗がん剤を使うと、「サブスタンスP」と呼ばれる物質の分泌が増えます。この「サブスタンスP」は、延髄にある「NK1受容体」に作用し、「吐き気」を起こします。
 『イメンド』は「NK1受容体拮抗薬」として、この「サブスタンスP」が「NK1受容体」に作用することを防ぎ、「吐き気」を予防します1)。
イメンドの作用機序~サブスタンスPとNK1受容体
 1) イメンドカプセル インタビューフォーム
 

回答の根拠②:急性の吐き気、遅発性の吐き気

 抗がん剤の副作用で起こる「吐き気」には、大きく分けて3つのタイプがあり、それぞれ別のメカニズムで起こるため、使うべき薬もそれぞれ異なります。

①急性・・・・・抗がん剤を使って1~2時間後に現れ、24時間以内に治るもの
②遅発性・・・抗がん剤を使って24時間後から現れはじめ、数日~1週間程度続くもの
③予測性・・・これまでの副作用の経験から不安を感じ、抗がん剤を使う前から現れるもの

 しかし、『イメンド』は適応症に”「遅発期」を含む”と書かれている2)ように、①急性と②遅発性の両方に効果があります。

 2) イメンドカプセル 添付文書

『イメンド』の特殊な用法.1~初日と2日目以降の用法・用量が違う理由

 『イメンド』の用法は、初日と2日目以降で用法・用量が異なります2)。

※初日の『イメンド』
 抗がん剤を使う1時間~1時間半前に、125mgを1回

※2日目以降の『イメンド』
 午前中に、80mgを1回

 これには、「吐き気」が最も強く現れる初日(①急性の吐き気)には多めの薬で効果を高め、その後は血中濃度を一定に維持するための量を服用する、という目的があります1)。

『イメンド』の特殊な用法.2~2日目以降は「午前中」でないとダメか?

 『イメンド』の血中濃度を安定させるためには、24時間ごとに服用するのが理想です。
 そのため、初日の抗がん剤投与が事情によって午後になってしまった場合などには、承認されている「午前中」という表現に拘らず、個別の対応も考える必要があります3)。

 3) 小野薬品工業 医療用医薬品情報「イメンドカプセル よくある質問」

『イメンド』の特殊な用法.3~3日間の服用で良い理由

 『イメンド』は1回飲むだけで2日間ほど効果が続くことがわかっています4)。このことと、抗がん剤による吐き気は通常5日目以降には強く現れないことから、3日間の服用で十分であるとされています1)。

 4) N Engl J Med.340(3):190-195,(1999) PMID:9917226

 ただし、5日目以降にも吐き気が現れる場合もあるため、最大5日間まで『イメンド』を服用することができます2)。

回答の根拠③:各ガイドラインで、中等度~高度リスクへの使用が推奨

 各ガイドラインでは、使用する抗がん剤の種類によって吐き気のリスクを4段階(最小度・軽度・中等度・高度)に分類し、それぞれに適した「吐き気」予防の薬を定めています。

※抗がん剤による「吐き気」のリスク分類 5)
最小度・・・10%未満
軽度・・・・・10~30%
中等度・・・30~90%
高度・・・・・90%以上

 5) 日本癌治療学会「がん診療ガイドライン」

 日本癌治療学会、国際癌支持療法学会(MASCC)、米国臨床腫瘍学会(ASCO)、米国国立包括癌ネットワーク(NCCN)、いずれのガイドラインでも中等度~高度リスクの抗がん剤治療に対して『イメンド』の使用が推奨されています。
イメンドと催吐リスク

薬剤師としてのアドバイス:「吐き気」は治療するのではなく、予防する

 抗がん剤による「吐き気」は、患者のQOL(生活の質)を大きく悪化させます。
 更に、抗がん剤で「吐き気」を経験した人は、次に抗がん剤を使う際にも強い不安を感じ、新たな「吐き気」を起こすことがあります(③予測性の吐き気)。

 そのため、「吐き気」は治療するのではなく、そもそも感じさせないよう予防することが重要です。
抗がん剤による吐き気の治療と予防

 『イメンド』を使っていても「吐き気」を感じてしまった場合には、以下のような異なる作用を持つ吐き気止めを一緒に使うことで、解消できる場合があります。

※『イメンド』に追加して使うことのある吐き気止めの例
『プリンペラン(一般名:メトクロプラミド)』
『ジプレキサ(一般名:オランザピン)』
『ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)』
『ベナ(一般名:ジフェンヒドラミン)』

 また、不安など精神的な要因によって「吐き気」を催している場合には、『ソラナックス(一般名:アルプラゾラム)』などの抗不安薬を使う場合もあります。

 患者本人が感じている「吐き気」の強さや頻度は、意外と医師・薬剤師などの医療従事者には正確には伝わっていないことがよくあります。
 「吐き気」を感じた日や時間帯、その強さなどはメモ帳などに記録しておき、できるだけ具体的に伝えることをお勧めします。

+αの情報:点滴の『プロイメンド』

 抗がん剤の治療を受けている人には、カプセルを飲み込めない人も少なくありません。そのため、点滴でも使えるように改良した『プロイメンド(一般名:ホスアプレピタント)』が登場しています。

 『プロイメンド』も、各ガイドラインでも『イメンド』と同等の効果があると評価されています。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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