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似た薬の違い 点眼薬

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『パタノール』と『インタール』、同じアレルギー点眼液の違いは?~効果と妊娠中の安全性、pH・浸透圧による刺激の違い

回答:刺激の少ない『パタノール』、妊娠中でも使いやすい『インタール』

 『パタノール(一般名:オロパタジン)』と『インタール(一般名:クロモグリク酸)』は、どちらもアレルギーに使う目薬です。

 『パタノール』は刺激が少なく、効果もやや高めな点眼薬です。
 『インタール』は妊娠中の安全性が高く評価されている点眼薬です。

 そのため、通常は『パタノール』がよく使われますが、特に妊娠中の女性には『インタール』を選ぶことがあります。

 

回答の根拠①:眼のアレルギー症状に対する効果

 「オロパタジン」のような抗ヒスタミン薬と、「クロモグリク酸」のようなケミカルメディエーター遊離抑制薬は、どちらも眼のアレルギー症状に効果のある点眼薬です。効果に大きな違いはない1)とされ、ガイドラインでも同列で扱われている2)ことがほとんどです。

 しかし、花粉飛散量の多い日など、眼のアレルギー症状が強く現れている場合には、抗ヒスタミン薬の方がやや大きな効果を期待できる3)傾向にあります。そのため、近年は「オロパタジン」や「エピナスチン」といった抗ヒスタミン薬の方がよく使われています。

 1) Cochrane Database Syst Rev . 2015 Jun 1;2015(6):CD009566. PMID:26028608
 2) 鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版~通年性鼻炎と花粉症
 3) Clin Ther.24(10):1561-75,(2000) PMID:12462286

「オロパタジン」は抗ヒスタミン薬(点眼薬)の中でも効果は高め

 

抗ヒスタミン薬は速効性、ケミカルメディエーター遊離抑制薬は予防効果に優れる?

 速効性を期待する場合は抗ヒスタミン薬、症状が現れる前から予防的に使うのであればケミカルメディエーター遊離抑制薬が良い…という使い分けをされることも時々あります。
 確かに、薬のメカニズム的にこうした使い分けは合理的な面もありますが、速効性3)や”花粉飛散前から投与”した際の予防効果4,5,6)は、どちらの薬でも確認されているため、特にこの点を強く意識する必要はなさそうです。

 4) J Allergy Clin Immunol.94(1):36-43,(1994) PMID:8027497
 5) Am J Ophthalmol.151(4):697-702.e2,(2011) PMID:21257151

 6) Clin Ophthalmol.11:1747-1753,(2017) PMID:29026285

 

回答の根拠②:点眼液のpH・浸透圧は、使用感に大きく影響する

 点眼薬は、人間の涙と性質の近いものの方が、使った時の刺激や不快感は少なくなります。つまり、薬液が酸性やアルカリ性に大きく傾いていないか(pH)や、薬液の塩分濃度が高すぎたり低すぎたりしないか(浸透圧比)、といった性質が、点眼したときの使用感と大きく関係する、ということです。

人間の涙の「pH」との違い~pHが酸性寄りだと刺激を感じやすい

 点眼薬は、人間の涙と同じように中性(pHが7.0付近)であれば、使ったときの刺激や不快感は少なく抑えられる7)ことがわかっています。
 「オロパタジン」点眼液は、どの製剤もpHは7.0付近で人間の涙とほぼ同じ8)ですが、「クロモグリク酸」点眼液のpHは4.0~7.0と少し酸性寄りのものが多くなっています9)。そのため、「クロモグリク酸」点眼液では一時的な刺激を感じることがよくあります。

 7) 病院薬学.24(6):597-600,(1998)
 8) パタノール点眼液0.1% 添付文書ほか
 9) インタール点眼液2% 添付文書ほか

 

人間の涙の「浸透圧」との違い~浸透圧比が小さいと刺激を感じやすい

 点眼液は、人間の涙と同じ塩分濃度、つまり「浸透圧比」が1.0付近(※0.7~2.1の範囲内)であれば、使ったときの刺激や不快感は少なくなるとされています7)。
 「オロパタジン」点眼液は、どの製剤も浸透圧比は0.9~1.1で人間の涙とほぼ同じ性質です8)が、「クロモグリク酸」点眼液の浸透圧比は0.2~0.4程度のものが多く9)、人間の涙よりも真水に近い性質をしています。そのため、”眼に真水が入ったとき”のような刺激を感じることがあります。

 なお、こうした刺激はあくまで一過性のもので、特に眼に大きな害のあるようなものではありません。むしろ、人によってはこの刺激を”目薬を使った感”というポジティブなものとして好むケースもあります。刺激感が不快でない場合には、特に気にする必要はありません。

 

回答の根拠③:妊娠中の安全性評価~古くから使われている「クロモグリク酸」の利点

 点眼薬は、飲み薬に比べると使う薬の量が非常に少なく、また血液中に吸収される量もわずかなため、通常は妊娠中でもほとんどの薬を問題なく使うことができます。しかし、点眼であっても薬の一部は血液中に吸収され、思わぬ副作用の原因(例:β遮断薬による血圧低下10)、抗ヒスタミン薬による眠気11)など)になることもあります。

 そのため妊娠中は、もし選択肢があるのであれば、できるだけ安全性の高い薬を選んでおいた方が無難です。その点、「クロモグリク酸」は1970年代から使われてきた薬で、内服薬としてもこれまでに豊富な使用実績があり、妊娠中の安全性も確認されている12)ため、「オロパタジン」よりも高い安全性評価がされています。「オロパタジン」の評価も低くはありませんが、より安全性を重視したい場合には「クロモグリク酸」が貴重な選択肢になります。

オーストラリア基準による安全性評価
オロパタジン:【B1】(高い方から2番目の評価)
クロモグリク酸:【A】(最も高い評価)

 10) Clin Exp Ophthalmol.48(1):24-30,(2020) PMID:31525271
 11) Int J Mol Sci.20(1):213,(2019) PMID:30626077
 12) Allergy Clin Immunol.100(3):301-6,(1997) PMID:9314340

 

薬剤師としてのアドバイス:目薬をさした後は、パチパチと「まばたき」をしない

 効き目がいまひとつと感じた際は、別の薬に変えることも一つの選択肢ですが、その前に”今の薬を正しく使えているかどうか”も確認することをお勧めします。

 たとえば、点眼薬を使った後、すぐに目をパチパチと「まばたき」させると、薬は目頭にある「涙管」からすぐに鼻・喉へと流れていってしまいます。これでは、薬の効果が十分に発揮されないばかりか、薬が消化管から吸収されて、余計な全身作用を起こす原因にもなります。
 点眼薬を安全かつ効果的に使うためには、点眼した後は眼を閉じて、目頭を軽く抑えたまま下を向き、しばらくそのまま薬液が眼全体に行き渡るのを待つ必要があります。

 なお、眼にゴミが入った時に”眼を洗う目的”で点眼薬を使う場合には、点眼した後にパチパチと「まばたき」をしながら洗い流すように使うのが適しています。目的に合わせて適した点眼方法をするようにしてください。

 

ポイントのまとめ

1. 『パタノール(オロパタジン)』と『インタール(クロモグリク酸)』の効果は、それほど大きくは変わらない
2. 『パタノール(オロパタジン)』の方が涙に近い性質で、刺激が少ない
3. 『インタール(クロモグリク酸)』は使用実績が豊富で、妊娠中の安全性評価も高い

 

 

薬のカタログスペックの比較

添付文書、インタビューフォーム、その他の資料の記載内容の比較

オロパタジン(点眼)クロモグリク酸(点眼)
先発医薬品名パタノールインタール
薬効分類抗ヒスタミン薬ケミカルメディエーター遊離抑制薬
適応症アレルギー性結膜炎アレルギー性結膜炎、春季カタル
用法1回1~2滴、1日4回1回1~2滴、1日4回
薬価収載年2006年
(内服薬は2000年)
1983年
(内服薬は1971年)
薬液のpH7.04.0~7.0
薬液の浸透圧比0.9~1.10.2~0.4のものが多い
塩化ベンザルコニウム含有する含有する
※クロモグリク酸Na・PF点眼液2%「日点」は含まない
妊娠中の安全性評価オーストラリア基準【B1】オーストラリア基準【A】
先発医薬品の製造販売元ノバルティスサノフィ
同成分のOTC医薬品(販売なし)『エージーアレルカット』などに配合

 

+αの情報①:刺激の少なめな「クロモグリク酸」点眼液は?

 「クロモグリク酸」点眼液のジェネリック医薬品には、浸透圧比を「1.0」に近づけることで刺激感を減らしたものがあります。「クロモグリク酸」を使いたい場合には良い選択肢になります。

※「浸透圧比」が1.0に近い製剤
クロモグリク酸Na点眼液2%「ニッテン」
クロモグリク酸Na点眼液2%「ニットー」
クロモグリク酸Na点眼液2%「わかもと」

+αの情報②:コンタクトレンズを装着したままでも使える「クロモグリク酸」点眼液は?

 「オロパタジン」点眼液も「クロモグリク酸」点眼液も、基本的に全ての製剤に添加物として「塩化ベンザルコニウム」が使われているため、ソフトコンタクトレンズをつけたまま使うのは避けた方が無難です13)。
 しかし、「クロモグリク酸」点眼液には、この「塩化ベンザルコニウム」を使っていないタイプの製剤(クロモグリク酸Na・PF点眼液2%「日点」)もあります。

 13) CLAO J.24(4):227-31,(1998) PMID:9800062

+αの情報③:抗ヒスタミン薬とケミカルメディエーター遊離抑制薬の併用

 抗ヒスタミン薬とケミカルメディエーター遊離抑制薬を併用すると、抗ヒスタミン薬単独で使うよりも、眼のアレルギー症状に対する効果は大きくなる14)、とされています。
 ドラッグストアなどで販売されているOTC医薬品(市販薬)の目薬には、よくこの2つの薬が一緒に配合されています。

 14) Eur J Ophthalmol.13(2):128-33,(2003) PMID:12696630

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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