『パタノール』と『インタール』、同じアレルギー点眼液の違いは?~効果の差、pH・浸透圧による刺激の違い
記事の内容
回答:『パタノール』は、『インタール』より刺激が少ない
『パタノール(一般名:オロパタジン)』と『インタール(一般名:クロモグリク酸)』は、どちらもアレルギーに使う目薬です。
眼のアレルギー症状に対する効果はどちらも同じ程度ですが、『パタノール』は『インタール』よりも人間の涙に性質(pH・浸透圧)が近いため、使った時の刺激や不快感が少ないという特徴があります。
長期で使用する場合や花粉の多い日は『パタノール』の効果が優れる傾向にありますが、短期的な使用で刺激も気にならない場合には値段の安い『インタール』を選ぶこともあります。
回答の根拠①:眼のアレルギー症状に対する効果
『パタノール』のような「抗ヒスタミン薬の点眼」と、『インタール』のような「遊離抑制薬の点眼」は、ガイドラインでも同列で選択肢に挙げられている1)ため、厳密な使い分けの基準はありません。実際、眼の痒みや赤みといった症状に対する効果は、『パタノール』と『インタール』で違いは無いことが報告されています2)。
1) 日本アレルギー学会 「鼻アレルギー診療ガイドライン(2016)」
2) Clin Ther.24(10):1561-75,(2000) PMID:12462286
ただし、6週間以上使用した時の効果や、花粉飛散量が多い日の効果は『パタノール』の方がやや優れる傾向にあります2)。そのため、しばらく続けて使う場合や、花粉症の症状が酷い場合には『パタノール』を使うのが一般的です。
回答の根拠②:涙と点眼液のpH・浸透圧
目薬は、人間の涙と性質が近い方が、使った時の刺激や不快感は少なくなります。このとき、基準になるのが「pH(中性かどうか)」と「浸透圧(塩分濃度が濃いか薄いか)」です。
人間の涙の「pH」との違い~涙は中性の液体
人間の涙は中性で、pHは7.45付近です。そのため、目薬も中性(pH6.0~8.0)であれば、一般的に刺激や不快感がないとされています3)。
『パタノール』のpHは7.0で人間の涙とほぼ同じ性質です4)が、『インタール』のpHは4.0~7.0と、人間の涙と比べるとやや酸性寄りです4)。そのため、『インタール』は点眼時に一時的な刺激を感じることがあります。
3) 病院薬学.24(6):597-600,(1998)
4) パタノール点眼液0.1% 添付文書
5) インタール点眼液2% 添付文書
人間の涙の「浸透圧」との違い~涙は生理食塩水と同じ濃さ
人間の涙は体液なので、浸透圧比は生理食塩水と同じ1.0(等張)です。目薬も、浸透圧比が0.7~2.1の範囲であれば刺激や不快感が少ないとされています3)。
『パタノール』の浸透圧比は0.9~1.1で人間の涙とほぼ同じ性質です4)が、『インタール』の浸透圧比は0.25と、人間の涙よりもかなり水に近い性質をしています5)。そのため、『インタール』は点眼時に刺激を感じることがあります。
不快でなければ気にしなくても良い
『インタール』を使った時に感じる刺激は、pHや浸透圧の差によって感じるもので、真水で目を洗った時と同じメカニズムのものです。そのため、あくまで一過性の刺激で、何か眼に大きな害があるわけではありません。
実際、『インタール』を用法通りに1回1~2滴を1日4回、90日間続けて使っても、刺激によるダメージなどは眼に残らないことが確認されています5)。
そのため、特に不快でなければ気にする必要はありません。特に『インタール』の方が値段は安いため、経済的な負担を抑えることができます。
※薬の値段(2018改訂時)
『パタノール』:925.00(5mL)
『インタール』:604.80(5mL)
薬剤師としてのアドバイス:目薬をさした後に、パチパチとまばたきをしない
目薬をさした後すぐにまばたきをすると、薬は目頭にある「涙管」からすぐに鼻・喉へと流れていってしまい、十分に薬の効果が期待できません。そのため、目頭を軽く抑えたまま下を向き、しばらくそのまま薬が眼全体に行き渡るのを待つ必要があります。
効き目がいまひとつと感じる際には、別の薬に変えることも一つの選択肢ですが、その前に目薬を正しく薬を使えているかどうかも確認することをお勧めします。
ただし、眼にゴミが入った時や、プールに入った後など、眼を洗う目的で目薬を使う場合には、パチパチとまばたきをしながら、多めの目薬を使う方が良いこともあります。目的に合わせて正しい点眼をするようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 『パタノール』と『インタール』は、効果にそれほど大きな違いは無い
2. 『パタノール』は『インタール』よりもpH・浸透圧比が人間の涙に近く、刺激が少ない
3. 目薬をさした後にパチパチ瞬きすると、薬は全部流れて行ってしまう
添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較
◆薬効分類
パタノール:抗ヒスタミン薬
インタール:ケミカルメディエーター遊離抑制薬
◆適応症
パタノール:アレルギー性結膜炎
インタール:春季カタル、アレルギー性結膜炎
◆点眼液のpH
パタノール:7.0
インタール:4.0~7.0
◆点眼液の浸透圧比
パタノール:0.9~1.1
インタール:0.25 (※UDは1.1)
◆刺激感の副作用頻度
パタノール:0.1%
インタール:0.1~5%未満(※一過性の刺激に関する注意喚起あり)
◆用法
パタノール:1回1~2滴、1日4回
インタール:1回1~2滴、1日4回
◆使われている保存料
パタノール:塩化ベンザルコニウム
インタール:塩化ベンザルコニウム(※UDには不使用)
◆同成分の他剤型
パタノール:内服薬(アレロック)
インタール:細粒、エアロゾル、吸入、点鼻
◆製造販売元
パタノール:ノバルティス
インタール:サノフィ
+αの情報①:使い切りタイプの『インタール点眼液UD』は刺激が少なくなっている
1回使い切りタイプの『インタール点眼液UD』の浸透圧比は1.1で、元の『インタール』よりも刺激は少なく改良されています6)。
6) インタール点眼液2% インタビューフォーム
+αの情報②:コンタクトレンズと「ベンザルコニウム」
点眼液に使われている保存料「ベンザルコニウム」が、ソフトコンタクトレンズに吸着し、眼に悪影響を与える可能性が指摘されています7)。
7) CLAO J.24(4):227-31,(1998) PMID:9800062
そのため、『インタール』や『パタノール』といった点眼液を使う場合、コンタクトレンズは一旦外して使用し、その後10分ほど間を置いてから付け直す、といった対応が必要です。
保存料の使われていない1回使い切りタイプの『インタール点眼液UD』や、「ベンザルコニウム」が使われていない点眼液『アレジオン(一般名:エピナスチン)』であれば、コンタクトレンズを付けたまま点眼することができます。付け外しが負担に感じる際は、一度主治医と相談することをお勧めします。
+αの情報③:「クロモグリク酸」と「クロルフェニラミン」の配合点眼薬
「クロモグリク酸」と「クロルフェニラミン」の併用が、「ケトチフェン」単独よりも効果的とする報告があります8)。そのため、OTCの目薬ではこの2剤がよく配合されています。
8) Eur J Ophthalmol.13(2):128-33,(2003) PMID:12696630
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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