『五苓散』は二日酔いに効く?~アルコール分解と、SSRIの副作用への効果
記事の内容
回答:『五苓散』は、「二日酔い」に保険適用がある漢方薬
『五苓散』は水の代謝を元に戻し、アルコール分解を促すことで、「二日酔い」に効果のある漢方薬です。
ただし、「二日酔い」による頭痛や吐き気は、脱水症状や低血糖、アセトアルデヒドの蓄積、寝不足など様々な原因によって起こります。
そのため、薬を飲むよりもまず、水をたくさん飲むこと、きちんと食事すること、身体を休めることが先決です。
また、漢方薬は体質によって合う・合わないがあります。すべての人にとって『五苓散』が最適というわけではありませんので、医師・薬剤師に相談して体質にあった薬を選ぶようにしてください。
回答の根拠①:「水毒」を治療する『五苓散』の効果
『五苓散』は、「水毒」を治療するための代表的な処方です1)。
「水毒」とは、水があるべき場所にない、または本来は水が無い場所に過剰に余っている、といった状態のことを指します。
1) 三考塾 「漢方常用処方解説(第53版)」
お酒は液体ですが、アルコールには利尿作用があり、更にアルコールを分解するためには水が必要なため、お酒を飲んでいると身体は脱水症状を起こしやすい状態になります。
脱水症状は、血液中(本来は水があるべき場所)に、水が足りない状態です。
『五苓散』は、消化管や組織から水分を血液中に引き込むことで、「二日酔い」で起こる脱水症状を和らげる効果が期待できます。
回答の根拠②:『五苓散』のアルコール代謝改善効果
『五苓散』には、アルコールの代謝・分解に関わる酵素を活性化する作用があります2)。
2) ツムラ五苓散エキス顆粒(医療用) インタビューフォーム
分解できる量以上のアルコールを摂ると、身体にアルコールや分解物のアルデヒドが蓄積するようになります。これが、頭痛や吐き気など「二日酔い」の症状を起こす原因になります。
そのため、『五苓散』によってアルコールの分解を促すことで、「二日酔い」を治療することができます。
回答の根拠③:「二日酔い」に適応のある漢方薬
『五苓散』は、「二日酔い」にきちんと保険適用があります3)。
3) ツムラ五苓散エキス顆粒(医療用) 添付文書
漢方薬には、『五苓散』のように「二日酔い」に保険適用のある薬がいくつかありますが、体質(実証・虚証など)によって適した薬が異なります。
※「二日酔い」に適応のある漢方薬
『五苓散』
『茵蔯五苓散』
『半夏瀉心湯』
『黄連解毒湯』
『黄連湯』
薬剤師としてのアドバイス:「二日酔い」を防ぐ方法は、水をたくさん飲んで、すぐに寝ないこと
アルコールの分解は、睡眠中には遅くなることが知られています。
そのため、お酒を飲んですぐに寝てしまうと、「二日酔い」になりやすくなります。
少しお酒を飲み過ぎた、という場合には、水を飲みながら少し夜更かしし、できるだけ酔いを醒ましてから寝ることをお勧めします。
「ひと眠りすれば、お酒は抜ける」というのは完全な誤りですので、間違った認識で飲酒運転などを起こさないように気を付けてください。
+αの情報:SSRIの副作用にも効果
『五苓散』は、抗うつ薬である『ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)』などのSSRIの飲み始めによく起こる吐き気に対しても、効果を発揮します4)。
4) Clin Neuropharmacol.26(3):112-4,(2003) PMID:12782911
SSRIの効果を実感できるのは、飲み始めてから2~3週間後からになるのが一般的です。それまでの間、こうした吐き気などの副作用が多く、途中で薬を止めてしまう人が少なくありません。
しかし、薬を途中で止めてしまうと治療効果も得られません。副作用が多いからと薬を止めてしまうのではなく、副作用は漢方薬などで対応しながら続けて薬を服用する、という治療方針を考えることも大切です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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