『ボルタレン』にも「消化管の狭窄・閉塞」の副作用を追記へ~『ロキソニン』に続く添付文書の改訂
2016年7月5日、厚生労働省は『ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)』の重大な副作用に「消化管の狭窄・閉塞」を追加しました1)。
1) 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「ジクロフェナクナトリウム(経口剤、坐剤、注腸軟膏剤)
の「使用上の注意」の改訂について」
3月には『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』でも同様の副作用が追加され大きな話題を呼びましたが、『ロキソニン』と『ボルタレン』は同じNSAIDsに分類される痛み止めで、効果も副作用もよく似ています。
そのため、今回の副作用追加は『ロキソニン』に続いて行われる、ある程度は予測できた改訂とも言えます。
ただし、今回の『ボルタレン』の副作用に関しては、最近3年で5例報告があるうちの1件が、用法・用量から外れた使い方をしていて起こった副作用であることも報告されています1)。
痛みが強い場合など、医師が慎重に容態を見ながら用法・用量を調節することは多々ありますが、自己判断で飲む量や回数を増やすことは非常に危険です。
『ロキソニン』や『ボルタレン』は万能の痛み止めではありませんので、痛みが治まらない場合には一度病院を受診し、痛みの原因を特定するようにしてください。
『ロキソニン』や『ボルタレン』は、元から消化器系の副作用が多い
『ロキソニン』や『ボルタレン』などNSAIDsに分類される痛み止めは、痛みの元となる「プロスタグランジン」の産生を減らすことで痛みを和らげる薬です。 この「プロスタグランジン」は痛みの元となると同時に、胃腸の粘膜を守る作用も持っています。
そのためNSAIDsを使うと、痛みが和らぐと同時に、胃腸の粘膜が荒れやすくります。
用法・用量を守って使っていても、『ロキソニン』では2.25%、『ボルタレン』では6.63%の頻度で、胃粘膜傷害の副作用が起こることが報告されています2,3)
2) ロキソニン錠 添付文書
3) ボルタレン錠 添付文書
こうした副作用を防ぐために、『ロキソニン』や『ボルタレン』などのNSAIDsを使う際には、『ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)』や『ムコスタ(一般名:レバミピド)』などの胃薬を一緒に使って胃粘膜を守るのが一般的です。
薬の量を増やしても、痛みが治まるとは限らない
『ロキソニン』や『ボルタレン』などのNSAIDsは、日常生活で感じる様々な痛みによく効くため、さも万能の痛み止めのように思われがちです。そのため、1錠飲んでみて効果がイマイチだった場合に、「薬の量を増やせば痛みが治まる」と考える人が少なくありません。
しかし、そもそも『ロキソニン』や『ボルタレン』が適さない痛みだった場合、薬をいくら増やしても痛みは治まりません。むしろ、こういった胃腸への副作用のリスクが高まるばかりで、非常に危険です。
頭痛であっても、片頭痛の場合には「トリプタン製剤」の方がよく効きます。
腹痛であっても、胃潰瘍の痛みであればNSAIDsは避け、PPIやH2ブロッカーを使います。
神経の痛みには、『リリカ(一般名:プレガバリン)』や『ノイロトロピン(一般名:ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液)』といった専用の痛み止めを選ぶ必要があります。
1回分の痛み止めで痛みが治まらない場合には、薬の量を増やす前に、まずは病院を受診して痛みの原因を正確に突き止めることを強くお勧めします。
薬剤師としてのアドバイス:痛み止めの頓服薬は、きちんと胃薬も一緒に持ち歩く
『ロキソニン』や『ボルタレン』などの痛み止めは、頓服薬として処方されることもよくあります。その際、痛み止めはカバンなどに入れて持ち歩く一方、一緒に処方された『ネキシウム』や『ムコスタ』などの胃薬まできちんと持ち歩く人は、あまり多くありません。
空腹時、お腹が空っぽの状態で痛み止めを使うことは、胃に大きな負担をかけることになりますので、必ず一緒に処方された胃薬も持ち歩くようにしてください。
また、どうしても痛み止め単独で使わなければならない状況になった際は、クッキー1枚やチョコレート1粒でも良いので、何か一口食べてから、コップ1杯(180mL)の多めの水でしっかりと服用するようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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