ピロリ除菌に『タケキャブ』が勧められるのは何故?~除菌成功率の差
記事の内容
回答:除菌の成功率が高いから
従来のPPIは効き目に個人差が大きく、ピロリ除菌失敗の大きな原因になっていました。
『タケキャブ(一般名:ボノプラザン)』は効果に個人差が少なく、安定して胃酸を抑えることができる薬です。そのため、安定してピロリ除菌を成功させることができます。
回答の根拠①:除菌成功率に影響を与える、PPIの個人差~三剤併用療法の意味
ピロリ菌に対する抗生物質の効果は、胃内pHが3.0(酸性)ではほとんど効き目がないため、少なくともpHを4.5以上にする必要があります1,2)。
1) Aliment Pharmacol Ther.36(10):972-979,(2012) PMID:23009227
2) サワシリン錠 添付文書
そのため、除菌の際には抗生物質と胃酸を抑える薬(PPI)を一緒に使い、胃のpHを大きくしておく必要があります。
しかし、PPIは効き目に個人差が大きいという問題があります。
PPIの代謝・分解速度が速いと、胃酸を抑える効果も弱くなります。そのため、胃内pHも十分に大きく(4.5以上に)ならなず、ピロリ菌に対する抗生物質の効果が弱くなります。
実際、PPIの代謝速度によって、一次除菌の成功率に23.5%もの差が生まれることが報告されています3)。
3) Clin Pharmacol Ther.81(4):521-8,(2007) PMID:17215846
回答の根拠②:個人差が少ない『タケキャブ』
『タケキャブ』は従来のPPIと異なり、代謝酵素「CYP2C19」の影響を受けにくいという特徴があります4)。
5) タケキャブ錠 インタビューフォーム
そのため個人差が出にくく、安定して胃酸を抑えることができ、その結果、ピロリ除菌も高い成功率を維持できます。
※一次除菌の成功率の違い 6)
オメプラール(一般名:オメプラゾール):75.9%
タケプロン(一般名:ランソプラゾール):83.7~91.1%
パリエット(一般名:ラベプラゾール):85.7~89.0%
ネキシウム(一般名:エソメプラゾール):およそ『オメプラール』と同じ 7)
タケキャブ(一般名:ボノプラザン):92.6%
6) 日本ヘリコバクター学会ガイドライン2016
7) Aliment Pharmacol Ther.14(12):1605-11,(2000) PMID:11121908
薬剤師としてのアドバイス:薬をきちんと飲んでいても、失敗することもある
ピロリ菌の除菌が失敗する最大の理由は、薬をきちんと飲まなかったことです。
除菌は、3つの薬をきちんと7日間続けて使って初めて完了します。途中で薬を中断してしまうと、治療が完了しないばかりか、ピロリ菌が薬に対して「耐性」を持ってしまい、次の除菌がより成功しづらくなるなど新たな問題が生まれてしまいます。
ちょっとお腹が緩くなった、少し口内炎ができた、胸やけがするといった軽い副作用であれば、我慢して薬を飲み切ってしまうことをお勧めします。
このとき、どんな副作用は我慢すべきで、どんな副作用が出たら我慢せず病院に相談すれば良いのか、予め具体的に薬剤師に聞いておくことも、併せてお勧めします。
しかし、中にはPPIが効きにくい体質だったり、既にピロリ菌が抗生物質に「耐性」を持っていたり、といった理由で、きちんと薬を飲んでいても失敗することがあります。
そういった場合には、保険診療では二次除菌まで可能で、更に自由診療であれば三次除菌・四次除菌を行っている病院もあります。
ピロリ菌が胃の中に居続けると、何度も胃炎や潰瘍を繰り返す原因になるため、一度しっかりと除菌してしまうことをお勧めします。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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