『セレコックス』を抗がん剤と一緒に使うのは何故?~大腸がんの予防効果
記事の内容
回答:『セレコックス』が、抗がん剤の効果を高める
『セレコックス(一般名:セレコキシブ)』は、本来は痛み止めとして使われるNSAIDsです。
しかし、『セレコックス』には大腸がんを予防する効果があり、特に一緒に使う抗がん剤の効果を高める作用もあります。
そのため、より高い効果を期待して、抗がん剤と一緒に使うことがあります。
ただし、こうした大腸がんの予防・治療補助に対する、適切な薬の量や投与期間などはまだ明らかになっていないため、限られた場合にしか使われません。
回答の根拠①:消化管の炎症を抑え、がん化を防ぐ『セレコックス』
大腸がんなどの消化器系のがんでは、消化管に起こった炎症からポリープができ、ポリープから大腸がんへと進展していく可能性が示唆されています。
この最初に起こる炎症に「COX-2」が強く関係していることから、『セレコックス』などのCOX-2阻害薬を消化器系のがん予防に使えないかという研究が進んでいます1)。
1) 臨床消化器内科 Vol.23 No.12,(2008)
実際、『セレコックス』を1日1回400mgで服用した場合、大腸がんのリスクとなる大腸ポリープができにくくなり、大腸がんのリスクを軽減できることが報告されています2)。
2) N Engl J Med.355(9):885-95,(2006) PMID:16943401
『セレコックス』は、こうした自身が持つ抗腫瘍効果によって、併用した抗がん剤の効果を高めることが報告されています3)。
3) Oncology (Williston Park).16(4 Suppl 3):17-21,(2002) PMID:12014863
回答の根拠②:抗腫瘍効果のメカニズム
『セレコックス』が持つ抗腫瘍効果のメカニズムは、まだ明確にはなっていませんが、COX-2阻害作用に基づくものと、COX-2阻害作用とは関係ないものとがあると考えられています。
COX-2阻害作用に基づくもの~血管新生抑制作用
腫瘍が成長するためには、栄養が必要です。そのため、腫瘍は自分に血液を供給するための新たな血管を作ります(血管新生作用)。
この血管新生作用には、COX-2が関係しています。
COX-2阻害薬である『セレコックス』は、血管新生を阻害し、腫瘍の成長を抑えます4)。
4) Cancer Res.60(5):1306-1311,(2000) PMID:10728691
COX-2阻害作用とは関係ないもの~アポトーシス誘導作用
生体には、生体に害を及ぼす恐れのある細胞を自死(アポトーシス)させ、生体全体の秩序を守るメカニズムが備わっています。
『セレコックス』には、腫瘍細胞をこの「アポトーシス」に導き、腫瘍を小さくする効果があることが報告されています5)。
5) The FASEB Journal.15(14):2742-2744,(2001) PMID:11606477
薬剤師としてのアドバイス:「アスピリン」の予防効果も期待されている
慢性的な炎症を抑えて”がん化”を防ぐ、という治療の可能性は、同じNSAIDsである「アスピリン」でも報告され注目を集めています。
「アスピリン」は『セレコックス』よりも古くからある薬で非常に安い薬です。実用化されれば、負担の少ない画期的な予防法となり得ます。
ただしどちらの薬も、どのくらいの量を、どのくらいの期間、どういった状況の人が飲めば、がんを予防できるのか、詳細な使い方はまだ明確になっていないため、今後のより詳細な研究が必要です。
現段階で、自己判断で薬を飲んでいて予防できる、というものではありません。
+αの情報:アメリカでは、「家族性大腸腺腫」に『セレコックス』を使う
『セレコックス』が消化管の炎症や腫瘍に効果があることは広く知られています。
実際、アメリカでは「家族性大腸腺腫」という大腸の病気に対して、『セレコックス』が使われています(※商品名『Onsenal』として承認)6)。
6) 国立医薬品食品衛生研究所 「医薬品安全性情報 Vol.3 No.1」,(2005)
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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