水虫は、市販薬では治らない?~薬を正しく選んで、正しく使えば、完治できる
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回答:治る
市販薬でも、正しく薬を選んで、その薬を正しく使えば、完治させることもできます。
完治させるためには、水虫の原因「白癬菌」を退治できる「抗真菌薬」の入った薬を選び(選び方)、その薬を症状が治まってからも1ヶ月は薬を使い続ける(使い方)必要があります。
しかし、この薬の「選び方」と「使い方」のどちらかを間違っていることが多いため、なかなか治らないことが多いのが実情です。
「薬の使い方」は、多くの人が間違っている
高い水虫薬の方が良い、売り上げランキング上位の薬が良い…薬の「選び方」にばかり目が行きがちですが、実際には薬の「使い方」を間違っているから治らない、という人が大勢おられます。
水虫を完治させるためには、症状が治まってから、最低でも1ヶ月間は薬を両足全体に使い続ける必要があります。こうした正しい使い方をしなければ、いくら効果の高い薬を購入しても完治しません。
回答の根拠①:正しい選び方~「抗真菌薬」が入っているものを選ぶ
水虫の原因である「白癬菌」は「抗真菌薬」で退治することができます。そのため、「抗真菌薬」の入った水虫薬を選ぶことで根本的治療が可能です。
ただし、水虫薬には痒み止めや清涼剤など、対症療法のための成分が色々と配合されたものがあります。こうした色々な成分が配合された水虫薬は値段も高く、治療にも有利なように見えますが、刺激や皮膚のかぶれといった副作用の原因にもなります。
値段や宣伝文句に惑わされることなく、自分に必要な成分だけの商品を選ぶようにしてください。
回答の根拠②:正しい使い方~思っているよりもたくさん薬が必要
水虫治療のゴールは、痒みなどの症状が治まることではありません。水虫の原因となっている白癬菌を完全に退治してしまうことです。
白癬菌を完全に退治するためには、痒みなどの症状が治まってからも、皮膚や角質が新しくなるまでの1ヶ月間は最低でも薬を続ける必要があります1)。
1) 日本皮膚科学会 「皮膚真菌症診断・治療ガイドライン」
ところが、市販の水虫薬には痒み止めなどの成分が一緒に入っているため、使ったらすぐに症状が治まることもあります。そのため、水虫が治ったと勘違いして薬を止めてしまう人が少なくありません。
痒み・赤みなどの症状が治まっても、白癬菌はまだしばらく皮膚に残っています。ここで薬を止めてしまうと生き残った菌が再び増殖し、水虫を再発することになります。
両足全体に正しく使えば、1ヶ月で30g程度の薬が必要
水虫の薬は、症状のある部分にだけ塗れば良いというものではありません。一部に水虫の症状があれば、症状がない部分にも菌は確実に感染しているため、両足全体に薬を塗る必要があります1)。
このとき、軟膏やクリームであれば、人差し指の第一関節の長さをチューブから出した量(1-FTU)が、片足に塗るべき薬の適切な量です。
一般的な10gのチューブであれば、これで約0.3~0.5g程度です。
これを1日1回、両足に使うため1日の消費量は0.6~1.0g、4週間の消費量は17~28gになります。
このことから、きちんと薬を使うと1ヶ月で30g程度の薬が必要になりますが、水虫の市販薬を購入される方の多くは、この量よりも遥かに少ない量の薬しか購入しません。
つまり、症状のある部分にしか薬を塗っていない、少し痒みが治まったからといって薬を中断している、といったような、間違った使い方をしている人が極めて多いと言えます。
回答の根拠③:市販薬では、治せない水虫~爪の水虫や、ただれている水虫
ひとことに水虫といっても、場所や症状によっては市販薬では治せないものもあります。
市販薬を爪に塗っても治せない
爪の水虫(爪白癬)は、市販薬では十分な効果が期待できません。
『クレナフィン(一般名:エフィナコナゾール)』や『ルコナック(一般名:ルリコナゾール)』といった専用の塗り薬や、飲み薬の抗真菌薬を、病院で医師から処方してもらう必要があります。
ただれ・ひびわれの酷い水虫
水虫がただれていたり、ひびわれていたりする場合は、薬で刺激を感じ、痒みなどの症状が悪化することがあります。こうした場合は、水虫治療の前にまず、ただれ・ひびわれを治療し、皮膚の状態を整える必要があります。
薬を使って痛みや痒みを感じた場合には、そのまま市販薬を使い続けるのではなく、一度皮膚科を受診するようにしてください。
そもそも水虫でない
足の痒みなどを”水虫”と自称していても、実際には水虫ではない別の疾患(湿疹・皮膚炎など)を抱えているケースが13~30%にものぼるというデータがあります2)。
2) J Dermatol.37(5):394-406,(2010) PMID:20536644
薬剤師としてのアドバイス:1ヶ月は薬を使い続ける
水虫の市販薬は高価なものが多く、できるだけ大事に使いたい、という気持ちはよくわかります。しかし、正しい使い方をしなければ完治せず、何度も水虫を繰り返すことになり、かえって費用もかさんでしまいます。
市販薬を使う場合には、症状が治まっても1ヶ月間は薬を続け、完治させることを目標にしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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