『ロキソニン』と『ソランタール』、同じ痛み止めの違いは?~作用の強弱と解熱効果、アスピリン喘息に対する安全性
記事の内容
回答:効果が強力な『ロキソニン』、胃にやさしく「アスピリン喘息」も起こしにくい『ソランタール』
『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』と『ソランタール(一般名:チアラミド)』は、どちらもNSAIDsに分類される痛み止めです。
『ソランタール』は、『ロキソニン』と比べると胃にやさしく、「アスピリン喘息」も起こしにくいなど、副作用が少ない薬です。
ただし、『ソランタール』は効き目もやさしめで、また解熱効果もほとんどありません。
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そのため、『ソランタール』は何らかの事情で『ロキソニン』など他の一般的な痛み止め(NSAIDs)を使えない場合の選択肢になります。
回答の根拠:COX阻害作用を持たない「チアラミド」の特徴
「ロキソプロフェン」や『ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)』のような一般的な痛み止めと違って、「チアラミド」には「シクロオキシゲナーゼ(COX)」を阻害する作用はほとんどありません。「ヒスタミン」や「セロトニン」をブロックするという、全く別のメカニズムで痛みや炎症を和らげます1)。
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基本的に、「ロキソプロフェン」などが持つCOX阻害作用によって得られる効果の方が強力で、「チアラミド」の鎮痛効果は非常にやさしめ2)です。さらに、解熱効果もほとんど得られないため、発熱に対する使い方に保険適応もありません1)。
しかしその反面、一般的な痛み止めでは避けて通れない、COX阻害作用によって生じる様々な副作用リスクを低く抑えることができます。
1) ソランタール錠 インタビューフォーム
2) Acta Anaesthesiol Scand.25(3):209-14,(1981) PMID:7324837
COX阻害作用がないメリット①~胃にやさしい
痛みや炎症、発熱の原因になる「プロスタグランジン」は、胃の粘膜を守る作用も持っています。そのため、「ロキソプロフェン」などCOX阻害作用のある薬は全て副作用で胃を荒らしやすいという共通の弱点があります。
空腹時の服用をなるべく避けたり、必要に応じて胃薬を一緒に飲んだりするのは、このためです。
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一方で、「チアラミド」はこのCOX阻害作用を持たないことから、基本的に胃粘膜への悪影響は非常に少ない、とされています1)。
COX阻害作用がないメリット②~アスピリン喘息を起こしにくい
「アスピリン喘息」には、主にCOX阻害作用(特にCOX-1)が関係していると考えられています。そのため、COX阻害作用を持たない「チアラミド」は「アスピリン喘息」のリスクが低い薬と言えます。添付文書上は「チアラミド」も禁忌の指定があります1)が、臨床上は”ほぼ安全に使える薬”と評価されており3)、使える薬の少ないアスピリン喘息患者にとって、貴重な選択肢になっています。
また、「チアラミド」は他の痛み止めで蕁麻疹や浮腫が出てしまう人(※皮膚型のNSAIDs不耐症)でも安全に使える可能性がある4)など、安全性に優れた薬と言えそうです。
3) 厚生労働省 重篤副作用疾患別マニュアル「非ステロイド性抗炎症薬による喘息発作」
4) J Dermatol.34(3):172-7,(2007) PMID:17291297
薬剤師としてのアドバイス:「チアラミド」が処方された時は、何か理由がある
特に持病やアレルギーなどに問題ない場合、痛みや炎症には「ロキソプロフェン」などの一般的なNSAIDsを使います。そのため、「チアラミド」を処方された場合には、他のNSAIDsではダメな何らかの理由があると考えるのが妥当です。
NSAIDsは、痛み止めや熱さましとして多くの人に用いられる薬ですが、世の中にはこうしたNSAIDsを安全には使えない人もたくさん居ます。他人に処方された薬をもらって使うことは非常に危険ですので、たとえ家族・友人間であっても、処方された薬の譲り渡しや譲り受けは絶対に止めてください。
ポイントのまとめ
1. 『ソランタール(チアラミド)』の効果はやさしめで、解熱効果もほとんどない
2. 『ソランタール(チアラミド)』は胃にやさしく、「アスピリン喘息」のリスクも低い
3. 『ソランタール(チアラミド)』が処方されるのは、他のNSAIDsを使えないとき
薬のカタログスペックの比較
添付文書、インタビューフォーム、その他の資料の記載内容の比較
ロキソプロフェン | チアラミド | |
先発医薬品名 | ロキソニン | ソランタール |
使用目的 | 鎮痛、消炎、解熱 | 鎮痛、消炎 |
用法 | 1日3回、もしくは頓服 | 1日2~3回、もしくは頓服 |
1日の最大用量 | 通常180mgまで | 通常300mgまで |
消化性潰瘍/アスピリン喘息に対する禁忌制限 | 禁忌 | 禁忌 |
剤型の種類(内服) | 錠(60mg)、細粒 | 錠(50mg、100mg) |
先発医薬品の製造販売元 | 第一三共 | アステラス製薬 |
同成分のOTC医薬品 | 『ロキソニンS』 | (販売なし) |
+αの情報①:NSAIDsにも酸性・中性・塩基性の3種類がある
「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」には数多くの薬がありますが、化学物質としての性質から酸性・中性・塩基性の3種類に大きく分類することができます。
酸性NSAIDsには、「ロキソプロフェン」や「ジクロフェナク」など強力な薬が該当します。
中性NSAIDsには、選択的COX-2阻害薬『セレコックス(一般名:セレコキシブ)』などが該当します。
塩基性NSAIDsには、「チアラミド」などCOX阻害作用を持たない特殊な薬が該当します。
炎症を抑える効果を持ちながらステロイドでないものはNSAIDsに分類されるため、ひとことにNSAIDsと言っても色々な薬があります。
+αの情報②:「アスピリン喘息」でも使える痛み止め
「アスピリン喘息」の人でも使える痛み止めには、以下のようなものがあります。
・「アセトアミノフェン」(※ただし1回300mg以下で用いる)
・塩基性NSAIDs「チアラミド」(※ただし添付文書上は禁忌)
・COX-2阻害薬「セレコキシブ」(※ただし添付文書上は禁忌)
・神経痛の専用薬『リリカ(一般名:プレガバリン)』
・『ノイロトロピン(一般名:ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液)』
・漢方薬の『葛根湯』など
・オピオイド鎮痛薬『トラマール(一般名:トラマドール)』
ただし、「チアラミド」や「アセトアミノフェン」「セレコキシブ」についてはリスクがゼロではないため、慎重に少量から使うのが原則です3)。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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