『シングレア』と『オノン』、同じ抗ロイコトリエン薬の違いは?~効果と副作用、服用の手間
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回答:1日1回の服用で済む『シングレア』、副作用が少なめの『オノン』
『シングレア(一般名:モンテルカスト)』と『オノン(一般名:プランルカスト)』は、どちらも喘息や鼻づまりなどのアレルギー治療に使う「抗ロイコトリエン薬」です。
『シングレア』は寝る前の1回1錠/包だけで良いため、服用がとても楽です。
『オノン』は、副作用がやや少なめな可能性があります。
特に使い分けが必要なほど効き目に違いがあるわけではないため、こうした服用の手間や副作用の経験、あるいは錠剤かカプセル剤かといった剤型の違いによって選ぶのが一般的です。
回答の根拠①:アレルギー性鼻炎や気管支喘息に対する効果に大きな違いはない
アレルギー性鼻炎や気管支喘息に対する「モンテルカスト」と「プランルカスト」の治療効果には、基本的に大きな差はないことが確認されています1,2,3)。実際、アレルギー性鼻炎や喘息のガイドライン等でも「抗ロイコトリエン薬」としてひとくくりに扱われている4)ため、厳密な使い分けの必要はなさそうです。
1) Allergol Intern.57(4):383-390,(2008) PMID:18946234
2) シングレア錠 インタビューフォーム
3) 臨床医薬.17:519-558,(2001)
4) アレルギー総合ガイドライン2022
回答の根拠②:服用回数の違い~メリットとデメリット
「抗ロイコトリエン薬」は、アレルギー性鼻炎では「ステロイドの点鼻薬」5)、喘息治療では「ステロイドの吸入薬」6)にそれぞれ効果の面では劣りますが、扱いが簡単な”飲み薬”なため、服用の手間が少ないという長所があります。
中でも特に「モンテルカスト」は、1回1錠(小児では1包)を、1日1回飲むだけで良いため服用が非常に楽で、長期的な治療でもきちんと継続しやすい7)のが特徴です。
※成人の用法
モンテルカスト:1日1回、寝る前
プランルカスト:1日2回、朝夕食後
5) Drugs.80(17):1831-1851,(2020) PMID:32915441
6) Eur Respir Rev.32(170):230124,(2023) PMID:37852659
7) J Allergy Clin Immunol.119(4):916-23,(2007) PMID:17349681
「プランルカスト」の”1日2回”がメリットになる例外的なケース
喘息治療に「モンテルカスト」を使っていて、特に日中に咳症状が悪化する人の場合、「プランルカスト」に切り替えることでこの症状は改善したケースが報告されています8)。
「プランルカスト」の方が”1日2回(朝夕)”で服用するため、日中にも血中濃度が低下しにくいこと等が関係していると考えられています。
8) Allergology International.54(4): 633-637,(2005)
ジェネリック医薬品を活用すれば、「プランルカスト」の服用も少し楽になる
「プランルカスト」は、先発医薬品(オノン)では1回に2capを服用する必要がありますが、ジェネリック医薬品には1回1錠で済むように改良された製剤があります。
「プランルカスト」の先発医薬品(オノン)を1日に4カプセル服用するのが大変な人の場合は、ジェネリック医薬品を活用するというのも手です。
回答の根拠③:「プランルカスト」に期待されている”副作用の少なさ”
「抗ロイコトリエン薬」では、稀に悪夢や不眠といった精神系の副作用が起こることがあります9)が、この副作用は「モンテルカスト」よりも「プランルカスト」の方がやや少ない可能性が示唆されています10)。
この副作用は報告数も少なく不透明な部分も多いですが、「モンテルカスト」で副作用を経験した際には「プランルカスト」に切り替えてみる、というのは、それなりに合理的な選択と言えそうです。
9) BMJ Paediatr Open.5(1):e001206,(2021) PMID:34712847
10) Asian Pac J Allergy Immunol . 2022 Mar 12. doi: 10.12932/AP-030821-1202. Online ahead of print.PMID:35278057
薬剤師としてのアドバイス:症状のひどい時にだけ飲む薬ではない
「モンテルカスト」や「プランルカスト」といった抗ロイコトリエン薬は、喘息の治療にもよく処方されますが、それほど速効性のある薬ではありません。そのため、既に起きてしまった喘息発作をすぐに鎮めるのではなく、”新たな喘息発作を予防する”という目的で使う薬です。
症状がひどい時にだけ飲む薬ではないので、吸入薬などと一緒に日ごろからきちんと続けて飲んでおくことが大切です。
ポイントのまとめ
1. 『シングレア(モンテルカスト)』は1日1回で良く、服用が楽
2. 『オノン(プランルカスト)』は精神系の副作用が少なめ(かもしれない)
3. 「抗ロイコトリエン薬」は、症状がひどくなってからではなく、日ごろから飲んでおく薬
添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較
◆有効成分
シングレア:モンテルカスト(抗ロイコリエン薬)
オノン:プランルカスト(抗ロイコトリエン薬)
◆適応症
シングレア:気管支喘息、アレルギー性鼻炎
オノン:気管支喘息、アレルギー性鼻炎
※『シングレア』のチュアブル錠・細粒は気管支喘息のみ
◆用法
シングレア:1日1回、就寝前
オノン:1日2回、朝夕食後
◆大人が1回に飲む錠剤・カプセル数
シングレア:5mgまたは10mg錠を1回1錠
オノン:112.5mgカプセルを1回2cap
◆剤型
シングレア:錠(5mg、10mg)、OD錠(10mg)、チュアブル錠(5mg)、細粒(4mg)
オノン:カプセル(112.5mg)、ドライシロップ(10%)
◆製造販売元
シングレア:MSD ※杏林製薬の『キプレス』と全く同じ
オノン:小野薬品工業
◆同成分のOTC医薬品
シングレア:(販売されていない)
オノン:(販売されていない)
+αの情報①:喘息治療では「ステロイドの吸入薬」を増量するよりも効果的
喘息治療の中心は「ステロイドの吸入薬」ですが、十分な効果が得られない場合は、「ステロイドの吸入薬」を倍量に増やすよりも、「モンテルカスト」等の抗ロイコトリエン薬を併用した方が、より高い効果を得られることがわかっています11)。
11) Allergy.61(6):737-742,(2006) PMID:16677244 ※COMPACT study
+αの情報②:『シングレア』と『キプレス』は、名前が違うだけの全く同じ薬
『シングレア』と『キプレス』は、どちらも「モンテルカスト」の薬で、用法・用量、適応症、添加物などもすべて完全に同じ薬です。このように、同じ薬でありながら販売する会社が異なるため名前(商品名)だけが異なる薬は、他にもたくさんあります。
※商品名だけが違う、中身は全く同じ薬の例
「アムロジピン(Ca拮抗薬)」:『アムロジン』と『ノルバスク』
「イルベサルタン(ARB)」:『イルベタン』と『アバプロ』
「ミルタザピン(NaSSA)」:『リフレックス』と『レメロン』
「アレンドロン酸(BP製剤)」:『ボナロン』と『フォサマック』
「フルボキサミン(SSRI)」:『ルボックス』と『デプロメール』
「シタグリプチン(DPP-4阻害薬)」:『ジャヌビア』と『グラクティブ』
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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