共通の「事実」から、異なる「意見」が生まれる~情報は、事実と意見を分けて読む
世の中にはたくさんの情報がありますが、どれが正しく、どれが正しくないのかを判断することは難しくなっています。
そのため医療に関する情報でも、客観的な「事実」と、主観的な「意見」は明確に区別して読み取る必要があります。
何故なら、情報は読み手の都合の良いように解釈され、同じ共通の「事実」に基づいていても、異なる「意見」になることがあるからです。
記事の内容
共通の「事実」から、異なる「意見」が生まれる
降水確率30%だった場合、傘を持っていくべきでしょうか。
持って行くという人も居れば、持って行かないという人も居るはずです。
さらに、今回は「持って行かない」と言った人でも、屋外を歩く時や、濡れたくない服を着ている時、季節や気温などによっては「持って行くべき」と言うことがあるかもしれません。
このように、「降水確率30%」という共通の事実に基づいていても、「傘を持って行く」と「傘を持って行かない」という全く逆の意見が生まれることがあるのです。
医療についても、同じことが言えます。
医療に関する情報でも、同じ「事実」から異なる「意見」が生まれる
例えば、痛み止めとしてよく使われる『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』は、妊娠中の薬の安全性評価である「オーストラリア基準」で【C】に分類されています。
この【C】という分類は、「奇形を増やす作用はないが、その薬理効果によって、胎児や新生児に有害作用を引き起こす疑いのある薬。その有害作用は、薬を中断することで回復するもの(可逆的)である」という文言で評価されています。
この文言は、薬を使いたい人が読めば「もし有害な作用が出てたとしても、すぐに元に戻るから、使っても問題ない」となります。
しかし、薬を使いたくない人が読めば「この薬は、有害な作用がある薬だから使わない方が良い」となります。
このように、「オーストラリア基準」で【C】に分類されている、という同じ共通の「事実」から、「使っても問題ない」と「使わない方が良い」という真逆の「意見」が生まれてしまうことになります。
医師・薬剤師の中では矛盾していなくても、患者の中では矛盾に感じる
実際、妊娠中に『ロキソニン』を使っても良いかどうかは、その人の状況や症状によって判断が変わります。基本的には避けた方が良いですが、痛みが強くて眠れないといった場合などには使うこともあります。
その結果、自分は大丈夫と言われたのに友人はダメと言われた、といったことが起こります。
この「大丈夫と言われた」ことと、「ダメと言われた」ことが矛盾するため、そこに疑問や不安、不信感、誤解が生まれてしまいます。
しかし、なぜ大丈夫と言ったのか、なぜダメと言ったのか、その「意見」を述べる根拠となった「事実」は、オーストラリア基準で【C】に分類されるから、という同じ共通の「事実」で、そこに矛盾はありません。
このように「事実」を省略して「意見」だけを述べてしまうことが、医師や薬剤師の中では矛盾していなくても、患者の中では矛盾を感じてしまう大きな原因になります。
矛盾を感じた時は、「事実」までさかのぼる
医療に関する情報では、医師や薬剤師の説明と新聞やネットの情報が違っていたり、あるいは別の病院・薬局へ行くと言っていることが違ったりと、矛盾を感じることがあると思います。
そういった際には、矛盾している「意見」をぶつけ合うのではなく、どういった「事実(科学的根拠)」に基づいてその「意見」を述べているのか、それを調べることが大切です。
多くの場合、「意見」は少しずつ人によって違っていても、どういった「事実」に基づいているのかは共通しています。
このとき、「事実」となる部分が根拠不十分であったり、「事実」を意図的に捻じ曲げたような情報であったりすれば、どれだけ「意見」が自分にとって魅力的であっても、安易に鵜呑みにしてはいけません。
その「事実(科学的根拠)」が、どれだけ信頼できるものなのか、どれだけ強い根拠となるのか、エビデンスレベル等についても理解を深めておくことをお勧めします。
こうした情報の読み方を習慣付けておくことで、ちょっとした矛盾の原因を突き止められるだけでなく、ネット上の明らかなデマや、不必要な不安を煽る週刊誌の記事、何の根拠もない詐欺まがいの健康商品などを鵜呑みにしてしまうことは少なくなるはずです。
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