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痛風治療薬 似た薬の違い

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『ユリノーム』と『ザイロリック』、同じ痛風・高尿酸血症の薬の違いは?~尿酸の排泄促進と生成抑制

回答:作用が強力な尿酸排泄促進薬『ユリノーム』と、禁忌が少なく扱いやすい尿酸生成抑制薬『ザイロリック』

 『ユリノーム(一般名:ベンズブロマロン)』と『ザイロリック(一般名:アロプリノール)』は、どちらも高尿酸血症・痛風の薬です。

 『ユリノーム』は、体から出ていく尿酸の量を増やす薬です。作用は強めですが、定期的な血液検査が必要であるなど、やや扱いにくい薬です。
 『ザイロリック』は、体内で新たに作られる尿酸の量を減らす薬です。血液検査は不要で禁忌も少ないなど、扱いやすいのが特徴です。

 「尿酸産生過剰型」か「尿酸排泄低下型」かによって使い分けるのが基本ですが、使いやすさの点から型を問わず『ザイロリック』が優先的に使われることが多いです。

 

回答の根拠①:作用メカニズムの違い~尿酸排泄促進と尿酸生成抑制

 血液中の尿酸は腎臓の尿細管でろ過された後、「ヒト尿酸輸送担体(Urate Transporter:URAT)」によって再吸収されます。「ベンズブロマロン」は、この「URAT1」の機能を阻害することによって、再吸収される尿酸の量を減らし、排泄を促す作用があります1,2)。 

 この尿酸は、体内でプリン体などから作られていますが、その際に「キサンチンオキシダーゼ」という酵素が深く関わっています。「アロプリノール」は、この「キサンチンオキシダーゼ」を阻害することで、尿酸の生成を抑制する作用があります3)。

 こうした作用メカニズムの違いから、「ベンズブロマロン」などの尿酸排泄促進薬は「尿酸排泄低下型」に、「アロプリノール」などの尿酸生成抑制薬は「尿酸産生過剰型」に適した薬と言えます。

 1) ユリノーム錠 添付文書
 2) Am J Physiol Renal Physiol.281(5):F875-86,(2001) PMID:11592946

 3) ザイロリック錠 添付文書

 

回答の根拠②:尿酸排泄促進薬「ベンズブロマロン」~強力な作用と制限の多さ

 「ベンズブロマロン」は、「アロプリノール」などの尿酸生成抑制薬に比べて尿酸値を下げる効果が大きいことが報告されています4,5)。さらに、「ベンズブロマロン」は「アロプリノール」よりも早く尿酸値を目標まで下げる6)ことから、「ベンズブロマロン」の作用は強力な傾向にある、と考えられます。

 4) J Med Assoc Thai.85 Suppl 1:S40-7,(2002) PMID:12188443
 5) Clin Rheumatol.41(7):2121-2128,(2022) PMID:35229198
 6) Ann Rheum Dis.68(6):892-7,(2009) PMID:18633127

 

「ベンズブロマロン」は”禁忌”が多く、扱いは難しい

 一方で「ベンズブロマロン」は、稀に劇症肝炎を起こすことから、服用開始から6ヶ月間は定期的な血液検査をする必要もあります1)。また、尿中の尿酸濃度を高めるために腎結石や尿路結石を起こしやすくなるため、結石リスクのある人には使えません4)。
 さらに、腎機能が低下していると、腎臓での尿酸ろ過量が少なくなり、薬の効果も弱まってしまうことから、腎障害の人にも不向きです7)。

 こうした制約や制限が多いことから「ベンズブロマロン」は扱いが難しく、明らかな「尿酸排泄低下型」とわかるときや、より速やかに尿酸値を大きく下げる必要があるとき以外では、使われる機会は少なくなっています。

 7) 日本痛風・尿酸核酸学会 「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2019)」

 

回答の根拠③:尿酸生成抑制薬「アロプリノール」~禁忌が少ない使いやすさ

 「アロプリノール」は、「ベンズブロマロン」と違って血液検査が不要で、さらに結石や肝障害などの副作用が少なく扱いやすいことから、海外では高尿酸血症治療の第一選択薬にも選ばれています8)。

 特に、腎障害がある人には「アロプリノール」などの尿酸生成抑制薬が優先的に選ばれます7)が、「アロプリノール」は腎機能の低下スピードを抑える効果9)も期待できることから、腎機能に問題がある人にとって良い選択肢になります。

 ただし、「アロプリノール」を腎障害がある人に使う場合は、個々の腎機能に応じて減量して使う必要があります3)。

 8) Ann Rheum Dis.76(1):29-42,(2017) PMID:27457514
 9) J Am Board Fam Med.35(1):140-151,(2022) PMID:35039419

「アロプリノール」も副作用や相互作用には注意が必要

 ”禁忌”の指定が少なく扱いやすい「アロプリノール」ですが、稀に中毒性皮膚壊死症やStevens-Johnson症候群といった重篤な薬疹が現れることがあります。こうした副作用が起こりやすい「HLA-B 5801遺伝子」を持っている人は、日本人では1%程度と少ない10)ですが、腎機能に応じた用量調節は必須です。
 また、「アロプリノール」は厳密なコントロールが必要な薬の作用を強める3)ことがあるため、相互作用にも注意が必要です。

※「アロプリノール」で作用が増強する薬の例
免疫抑制薬:アザチオプリン、シクロスポリン
抗凝固薬:ワルファリン
喘息治療薬:テオフィリン
抗てんかん薬:フェニトイン

 10) Drug Metab Pharmacokinet.27(1):9-54,(2012) PMID:22123129
 11) CMAJ.193(3):E94-E97,(2021) PMID:33462145

 

薬剤師としてのアドバイス:「痛風発作」がない高尿酸血症の必要性は?

 「ベンズブロマロン」や「アロプリノール」は、尿酸を減らして痛風発作を防ぐという意味では重要な薬ですが、痛風の発症予防以上に心臓や腎臓を守る効果があるかどうかは不透明なところもあります12,13)。
 そのため、痛風発作のリスクがそこまで高くない場合には、副作用やコスト、他の薬の使用状況などから、「ベンズブロマロン」や「アロプリノール」といった薬は”敢えて使わず”、運動や食事の改善で治療を行うこともあります。

 12) Lancet.400(10359):1195-1205,(2022) PMID:36216006
 13) Clin J Am Soc Nephrol.15(11):1576-1586,(2020) PMID:33055192

 

ポイントのまとめ

1. 『ユリノーム(ベンズブロマロン)』は尿酸排泄促進薬、『ザイロリック(アロプリノール)』は尿酸生成抑制薬
2. 『ユリノーム(ベンズブロマロン)』は、作用は強力だが劇症肝炎や結石リスクがある
3. 『ザイロリック(アロプリノール)』は、扱いやすく腎障害時にも第一選択になるが、重症薬疹や相互作用には注意が必要

 

薬のカタログスペックの比較

 添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較

ベンズブロマロンアロプリノール
先発医薬品名ユリノームザイロリック
薬効分類尿酸排泄促進薬尿酸生成抑制薬
適応症痛風、高尿酸血症を伴う高血圧症痛風、高尿酸血症を伴う高血圧症
用法1日1~3回1日2~3回
緊急安全性情報
(イエローレター)
劇症肝炎(2000年)なし
定期的な血液検査投与開始6ヶ月間は必須指定なし
禁忌肝障害、高度の腎障害、腎結石、妊娠、過敏症の既往歴過敏症の既往歴
代謝経路CYP2C9キサンチンオキシダーゼ
妊娠中の安全性禁忌
オーストラリア基準【未評価】
制限なし
オーストラリア基準【B2】
日本での承認年1969年1979年
世界での販売状況日本、ドイツ欧州を中心に世界各国
剤型の規格錠(25mg、50mg)錠(50mg、100mg)
先発医薬品の製造販売元トーアエイヨーグラクソ・スミスクライン
同成分のOTC医薬品(販売なし)(販売なし)

 

 

+αの情報①:「尿酸排泄低下型」と「尿酸産生過剰型」の基準

 排泄される尿酸の量が少ないのか、作られる尿酸の量が多いのかは、「尿酸クリアランス」と「尿中の尿酸排泄量」を尿検査によって調べることで診断できます。24時間蓄尿で検査するのが理想ですが、外来診療で行うのは大変なため、60分間の尿で検査するのが一般的です。

尿酸産生過剰と尿酸排泄低下

 

+αの情報②:「ベンズブロマロン」と「アロプリノール」の併用

 腎障害のある高尿酸血症患者に対しては、「ベンズブロマロン」と「アロプリノール」を併用することの有効性が報告されています14)。どちらの薬も投与量を少なく抑えられるため、副作用リスクを避けながら効果を高めたいときの選択肢になります。

 14) Nihon Jinzo Gakkai Shi.50(4):506-12,(2008) PMID:18546882

 

+αの情報③:高尿酸血症の新しい治療薬

 高尿酸血症の薬は、1960~1970年代に「ベンズブロマロン」や「アロプリノール」が登場して以降、長らく新薬はありませんでしたが、尿酸排泄促進薬としては2020年に『ユリス(一般名:ドチヌラド)』、尿酸生成抑制薬としては2011年に『フェブリク(一般名:フェブキソスタット)』、2013年に『ウリアデック(一般名:トピロキソスタット)』などが登場しています。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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