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似た薬の違い ステロイド点鼻薬

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『アラミスト』・『ナゾネックス』・『エリザス』、同じステロイド点鼻薬の違いは?~1日1回の点鼻薬の比較

回答:眼の症状にも効果がある『アラミスト』、全身作用が最も少ない『ナゾネックス』、刺激の少ない『エリザス』

 『アラミスト(一般名:フルチカゾン)』、『ナゾネックス(一般名:モメタゾン)』、『エリザス(一般名:デキサメタゾン)』は、全て1日1回のステロイド点鼻薬で、花粉症などの鼻炎に使われます。
アラミスト、ナゾネックス、エリザスの違い
 『アラミスト』は、鼻だけでなく、眼の症状にも効果が期待できます。
 『ナゾネックス』は、全身作用が最も少ないため、長く使う場合に適しています。
 『エリザス』は、添加物が入っていないため刺激が少なく、鼻の粘膜が過敏な状態でも問題なく使えます。また、粉末の薬なので液垂れの心配もありません。

 細かな違いはありますが、鼻炎に対する治療効果に大きな差はないため、デバイスの使いやすさから選ぶこともあります。また子どもの場合、年齢によって使える薬と使えない薬とがあります。

回答の根拠①:眼の症状にも効果のある『アラミスト』

 『アラミスト』は他のステロイドと比べて、受容体への結合力が1.7~30倍と、最も強力です1)。
 そのため鼻・眼反射を介して、眼の痒み・赤み・涙といった眼の症状に対しても改善効果を発揮することが報告されています2)。
アラミスト~鼻眼反射
 1) アラミスト点鼻液 インタビューフォーム

 2) Allergy Asthma Proc.28(2):216-225,(2007) PMID:17479608

回答の根拠②:「バイオアベイラビリティ」が最も小さい『ナゾネックス』

 ステロイド点鼻薬は、症状が酷くなってから使う切り札ではなく、初期の軽い症状のうちから使うべき薬としてガイドラインでも定められています3)。
 これは、ステロイド点鼻薬は「抗ヒスタミン薬」のような眠気も起こさず、くしゃみ・鼻水・鼻づまりの症状に効き、さらに鼻だけで作用して全身性の副作用を起こしにくい安全な薬だからです。

 3) 鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症- (2016)

 このとき、点鼻薬がどれくらい鼻以外の場所に作用するのか、という指標になるのが、血液中に取り込まれて利用される薬の割合を示す「バイオアベイラビリティ」です。
 点鼻薬の「バイオアベイラビリティ」は総じて低いですが、『ナゾネックス』の「バイオアベイラビリティ」は0.2%未満と最も低くなっています4)。そのため、『ナゾネックス』は長期使用でも副作用の心配が最も少ない点鼻薬と言えます。
ナゾネックスのバイオアベイラビリティ
※点鼻薬のバイオアベイラビリティ 1,4,5)
アラミスト・・・・0.5%
ナゾネックス・・・0.2%未満
エリザス・・・・  14.0%

 4) ナゾネックス点鼻液 インタビューフォーム
 5) エリザス点鼻粉末 インタビューフォーム

回答の根拠③:刺激が少ない『エリザス』~薬を粉末状にすることのメリット

 『エリザス』は、鼻粘膜への刺激を考慮した、保存料や防腐剤を使わない粉状の製剤です5)。
エリザス~保存料や防腐剤の有無
※点鼻薬に使われている添加物 1,4,5)
アラミスト(点鼻液)
 →ベンザルコニウム塩化物、ポリソルベート80、結晶セルロース、カルメロースNa、ブドウ糖、エデト酸ナトリウム水和物
ナゾネックス(点鼻液)
 →ベンザルコニウム塩化物、ポリソルベート80、結晶セルロース、カルメロースNa、グリセリン、pH調整剤
エリザス(点鼻粉末)
 →乳糖水和物のみ

 液体状の薬では、細菌が繁殖してしまう恐れがあるため、どうしても保存料や防腐剤が必要になります。

 しかし花粉症の時は、例えば空気の温度が少し変わるだけでもくしゃみが出るように、鼻の粘膜が過敏になっていることがあります。こうした状態では、点鼻薬に含まれる添加物でも刺激となり、鼻炎が悪化してしまう場合があります。
 『エリザス』には乳糖以外の添加物が入っておらず、既に鼻炎で粘膜が過敏になった状態でも、より少ない刺激で使える点鼻薬と言えます。

匂いや液だれが気になる場合にも

 保存料や防腐剤の特有の匂いが気になる場合や、薬を使ったあとの液垂れが気になる場合にも、粉末の点鼻薬である『エリザス』が選ばれることがあります。

回答の根拠④:子どもの年齢制限

 『アラミスト』・『ナゾネックス』・『エリザス』では、年齢によって使える薬と使えない薬があり、噴霧する回数も異なります。

 『アラミスト』は、2~15歳未満は1回1噴霧、15歳以上は1回2噴霧で使います1)。
 『ナゾネックス』は、3~12歳未満は1回1噴霧、12歳以上は1回2噴霧で使います4)。
 『エリザス』は、16歳以上に1回1噴霧で使います5)。

※成人の使用量
アラミスト・・・・15歳以上、1回2噴霧
ナゾネックス・・・12歳以上、1回2噴霧
エリザス・・・・・16歳以上、1回1噴霧

※小児用量
アラミスト・・・・2~15歳未満、1回1噴霧
ナゾネックス・・・3~12歳未満、1回1噴霧
エリザス・・・・・なし

 成人と同じ噴霧回数に切り替わる年齢も異なるため、注意が必要です。

薬剤師としてのアドバイス:点鼻薬は、鼻の通っている時に使う

 ステロイド点鼻薬は朝や夜といった使う時間の指定はありません。そのため、忘れず毎日点鼻できるタイミングであれば、いつ点鼻しても問題ありません。

 ただし、点鼻する際にはできるだけ鼻通りをよくしておく必要があります。
 そのため、朝起きてしばらくは鼻づまりがマシな人は朝に、お風呂上がりに鼻づまりがマシな人は入浴後に、それぞれ1日の中で最も鼻が通っているタイミングで使うことをお勧めしています。

ポイントのまとめ

1. 『アラミスト』は、眼の症状にも効果が期待できる
2. 『ナゾネックス』は、最もバイオアベイラビリティが低く、長期使用に適している
3. 『エリザス』は添加物がなく刺激が少ないため、鼻の粘膜が過敏な人でも使える
4. それぞれ使える年齢が異なり、噴霧回数が切り替わる年齢も違うことに注意

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆適応症
アラミスト:アレルギー性鼻炎
ナゾネックス:アレルギー性鼻炎
エリザス:アレルギー性鼻炎

◆有効成分
アラミスト:フルチカゾンフランカルボン酸エステル
ナゾネックス:モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物
エリザス:デキサメタゾンペシル酸エステル

◆薬の性状
アラミスト:液
ナゾネックス:液
エリザス:

◆使用回数
アラミスト:1日1回
ナゾネックス:1日1回
エリザス:1日1回

◆成人の使用量
アラミスト:2噴霧(15歳以上)
ナゾネックス:2噴霧(12歳以上)
エリザス:1噴霧(※臨床試験は16歳以上で行っている)

◆子どもの使用量
アラミスト:2~15歳未満は1噴霧
ナゾネックス:3~12歳未満は1噴霧
エリザス:なし

◆バイオアベイラビリティ
アラミスト:0.5%
ナゾネックス:0.2%未満
エリザス:14%

◆デバイスの使用回数(通常、成人の2週間分)
アラミスト:56噴霧
ナゾネックス:56噴霧、112噴霧(長期用:成人の4週間分)
エリザス:28噴霧

◆保存料の添加物
アラミスト:ベンザルコニウム塩化物
ナゾネックス:ベンザルコニウム塩化物
エリザス:なし

◆製造販売元
アラミスト:グラクソ・スミスクライン
ナゾネックス:MSD
エリザス:日本新薬

+αの情報①:ステロイドと血管収縮剤の点鼻薬は、使い方が異なる

 ステロイドの点鼻薬は、症状がひどい時に使うものではなく、症状の悪化を防ぐために続けて使う薬です。

 アレルギーの時の点鼻薬はあまり使わない方が良い、と認識しておられる方が少なくありませんが、これは鼻づまりを一時的に解消するための「血管収縮剤の点鼻薬」のことであって、「ステロイドの点鼻薬」のことではありません

 血管収縮剤の点鼻薬は、使い過ぎると薬が原因の「薬剤性鼻炎」を起こす恐れがあります6)。そのため、どうしても酷い時に限って使い、長くとも1~2週間の使用に留める必要があります3)。「ステロイドの点鼻薬」と「血管収縮剤」の点鼻薬は、きちんと区別して使うようにしてください。

 6) ORL J Otorhinolaryngol Relat Spec.56(3):157-60,(1994) PMID:7515487

+αの情報②:花粉症の治療では「ステロイドの点鼻薬」が最も効果的

 花粉症などのアレルギー性鼻炎の治療には、『アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)』や『ザイザル(一般名:レボセチリジン)』など内服の「抗ヒスタミン薬」がよく使われますが、治療効果は「ステロイド点鼻薬」の方が優れています7)。点鼻薬は使い勝手が悪くあまり人気のない製剤ですが、効果を重視する際はしっかりと「ステロイド点鼻薬」を使い続けることを強くお勧めします。

 7) Am J Respir Med.2(1):55-65,(2003) PMID:14720022

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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