『ガスロンN』ってどんな薬?~服用回数の少なさと口内炎への適応外処方
記事の内容
回答:1日1回の服用が可能な胃薬
『ガスロンN(一般名:イルソグラジン)』は、胃粘膜を保護する胃薬です。
一般的に、作用が緩和な「胃粘膜保護薬」に分類される薬は、1日に2~4回服用しなければならないものがほとんどです。しかし、『ガスロン』は作用が長く続くため、1日1回で服用することができます。
また、口内炎にも効果があり処方されることもありますが、これは保険適用外の使い方になります。
回答の根拠①:1日1回の服用で済む、「胃粘膜保護薬」
胃薬には大きく分けて、胃酸を減らす強力な「胃酸分泌抑制薬(PPIやH2ブロッカー)」と、胃粘膜を守る緩和な「胃粘膜保護薬(または防御因子増強薬)」の2種類があります。
このうち、「胃粘膜保護薬」には長期投与に対する制限はありませんが、作用時間が短いものがほとんどで1日2~4回服用しなければなりません。
※「胃粘膜保護薬」の服用回数の例
『セルベックス(一般名:テプレノン)』・・・1日3回
『ムコスタ(一般名:レバミピド)』・・・1日3回
『アズノール(一般名:アズレン)』・・・1日3回
『イサロン(一般名:アルジオキサ)』・・・1日3~4回
『ノイエル(一般名:セトラキサート)』・・・1日3~4回
『ガストローム(一般名:エカベトNa)』・・・1日2回
『プロマック(一般名:ポラプレジンク)』・・・1日2回
一方、『ガスロンN』は1日1~2回で使用することができます。これは、半減期が約150時間と非常に長く、1日1回の服用でも血中濃度が安定するからです1)。
1) ガスロンN インタビューフォーム
回答の根拠②:口内炎への効果
『ガスロンN』の適応症は、胃潰瘍や胃炎のみで、口内炎に対する保険適用はありません2)。
2) ガスロンN錠 添付文書
しかし、『ガスロンN』には抗炎症作用や、細胞間の情報伝達を改善する作用があり1)、これらの作用によって種々の口内炎の症状を改善することが知られています。
保険適用外の使い方にはなりますが、口内炎や歯周病に使われることがあります3,4)。
3) 外来診療ガイドライン(2009)
4) 福岡県薬剤師会 薬事情報センター「質疑応答(2008年5月)」
口内炎は放置しても自然に治るものがほとんどですが、痛みが強いと食事ができなくなり、特に高齢者では栄養状態が悪化してしまう恐れがあります。
そのため、飲み薬や『ケナログ(一般名:トリアムシノロン)』や『デキサルチン(一般名:デキサメタゾン)』などの塗り薬によって早く治すことも、時には必要です。
薬剤師としてのアドバイス:服用回数や、飲みやすさで負担は大きく変わる
作用が強力な『ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)』などのPPIも1日1回の服用で済みますが、投与日数に制限があるなど、長期での使用は保険適用上の問題があります。
『ガスロンN』はこうした投与制限を気にせず、1日1回の少ない服用回数で使うことができます。
さらに、『ガスロンN』には口の中でさっと溶けるOD錠も販売されており、服薬の負担は非常に少ない薬と言えます。
年齢と共に薬の数が増えていく傾向にある現代医療において、『ガスロンN』のような服薬の負担を減らせる薬は貴重な選択肢です。
+αの情報:ピロリ除菌後は、作用の緩和な「防御因子増強薬」でも十分な場合も
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の多くは、ピロリ菌が原因で起こっています。そのため、ピロリ菌を薬で除菌してしまえば、潰瘍の再発を抑えることができます。
一般的に、PPIやH2ブロッカーよりも作用が緩和とされる『ガスロンN』ですが、ピロリ除菌後の潰瘍治療では『ガスター』と効果に差がないことも報告されています5)。
5) Scand J Gastroenterol.46(3):287-92,(2011) PMID:21073372
ピロリ菌が原因の潰瘍には、作用の強い胃薬を選ぶことよりも、きちんと除菌してしまうことがより重要です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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