『メバロチン』・『リポバス』・『ローコール』は、夕食後の服用でないとダメ?~スタチンの用法と実際の効果
記事の内容
回答:夕食後の方が、よく効く
コレステロールの合成は、主に夜間に行われます。
そのため、『メバロチン(一般名:プラバスタチン)』などコレステロールの合成を阻害する薬は、夕食後に飲んだ方がよく効きます。
ただし、朝でも効果が無いわけではないため、夜では飲み忘れてしまう場合などには朝食後で服用することもあります。
回答の根拠:コレステロール合成の日内変動と、スタチン服用のタイミング
『メバロチン』などの「HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)」は、朝1回よりも夕1回の方が高い効果が得られることが報告されています。
そのため、飲み忘れなどの問題がなければ夕食後で服用するのが一般的です。
朝夕での効果の違いと、添付文書上の用法
■『メバロチン(一般名:プラバスタチン)』
有効率は朝1回84.4%、夕1回91.2%と、有意差は無かったものの夕1回の方が高い傾向にある1)。
そのため、『メバロチン』を1日1回で服用する場合には夕食後が望ましい2)。
1) 臨床評価.19(1):47-92,(1991)
2) メバロチン錠 添付文書
■『リポバス(一般名:シンバスタチン)』
朝1回よりも夕1回で服用した方が、総コレステロール値やLDL値を下げる効果が高い3,4)。
そのため、『リポバス』は通常、1日1回夕食後での服用が望ましい5)。
3) 臨床医薬.5(10):2041-2074,(1989)
4) Ann Pharmacother.41(1):106-10,(2007) PMID:17200427
5) リポバス錠 添付文書
■『ローコール(一般名:フルバスタチン)』
朝1回よりも夕1回で服用した方が、総コレステロール値やLDL値を下げる効果が高い6)。
そのため、『ローコール』は添付文書上の用法も、1日1回夕食後で限定されている7)。
6) 臨床医薬.11(S1):131-151,(1995)
7) ローコール錠 添付文書
薬剤師としてのアドバイス:飲み忘れがあるなら、朝にまとめることもある
『メバロチン』や『リポバス』、『ローコール』は夕食後に飲んだ方がよく効くため、通常は夕食後で処方されます。
しかし、夕食後に飲み忘れると、翌朝まで時間が空いてしまうことになります。そのため、飲み忘れが起こりやすい場合などは、他の薬と一緒に飲むよう朝にまとめて処方されることもあります。
ただし、『ローコール』のように夕食後が用法上指定されている場合には、保険適用上の注意が必要です。
また、血圧の薬では朝1回と夕1回で大きな違いがあることが近年明らかになってきています。
今後、こうした日内変動の研究が進むにつれ、「HMG-CoA還元酵素(スタチン)」も状況に応じて朝・夕の用法を使い分けることになる可能性も十分に考えられます。
+αの情報:作用が長続きする「ストロング・スタチン」は、朝夕の指定が無い
「HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)」の中でも、作用が強力な「ストロング・スタチン」(『リピトール(一般名:アトルバスタチン)』、『クレストール(一般名:ロスバスタチン)』、『リバロ(一般名:ピタバスタチン)』)は、朝でも夕でも治療効果には差がないことが確認されています8)。
8) J Clin Pharmacol.36(7):604-9,(1996) PMID:8844442
この要因として、「ストロングスタチン」は半減期が長く、効果が長続きすることが考えられています。
※「HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)」の半減期
『メバロチン』・・・・2.7時間
『リポバス』・・・・・・2.3時間
『ローコール』・・・・1.3時間
『リピトール』・・・・・9.4時間
『クレストール』・・・20時間
『リバロ』・・・・・・・・11時間
『リバロ』も、以前は夕食後と指定されていましたが、朝1回と夕1回で体内動態に違いがないことが確認されています9)。
9) リバロ錠 インタビューフォーム
ストロング・スタチンも夕1回の方が良い可能性も
ただし、『リピトール』は、経皮経管冠動脈形成術(※カテーテルでステント処置するもの)をした後に使う場合、朝1回よりも夕1回で服用した方が再狭窄などを防ぐ効果は高かったことが報告されています10)。
10) Am J Cardiol.97(1):44-7,(2006) PMID:16377282
こうした報告があるため、添付文書上は朝夕の指定が無い『リピトール』や『クレストール』、『リバロ』であっても、朝1回でなければならない理由がない場合には、夕1回で服用するのが一般的です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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