「顆粒」・「細粒」・「散」・「ドライシロップ」、同じ粉薬の違いは?~定義の変更と、計量混合加算と自家製剤加算の扱い
回答:粉薬の粒の大きさや、造られ方が異なる~「ドライシロップ」の特別な扱い
いわゆる粉薬には、「顆粒」・「細粒」・「散」・「ドライシロップ」など色々なタイプのものがあります。 「顆粒」と「細粒」は、粉薬の粒の大きさによって区別します。
「散」は、「顆粒」や「細粒」のように粒状に製剤化されていない、粉末状の粉薬のことを指します。
「ドライシロップ」は見かけは粉薬ですが、水を加えて甘い液体にすることを想定したものです。そのため、粉薬とも水薬とも混ぜやすく、調剤上の扱いが特殊(粉と混ぜても、水と混ぜても「計量混合加算」)です。
飲む立場からすれば、水への溶けやすさが違うだけでどれも「粉薬」ですが、調剤や保険適用上は使い分けが必要です。
回答の根拠:「顆粒」・「細粒」・「散」の違い~第十六改正日本薬局方から変わった定義
「顆粒」とは、有効成分を粒状に製剤化した薬のことを指します。「顆粒」のうち、特に粒が小さいものを「細粒」と呼びます。「細粒」と呼べるのは「顆粒」のうち、「18号(850μm)ふるい」を全量通過し、「30号(500μm)ふるい」に残るものが10%以下のものに限ります1)。
1) 第十七改正日本薬局方 製剤総則「製剤各条 1.3.顆粒剤」
「散」は、粉末状の薬のことで、粒状には製剤化されていない薬のことを指します。
日本薬局方の定義が変わった
従来、「顆粒」・「細粒」・「散」は粉の粒子の大きさによって分類されていましたが、第十六改正日本薬局方から定義が変わり、製造方法(粒状に製剤化しているかどうか)によって分類されるようになっています。 しかし、既に粒子の大きさによって命名された薬が広く流通していることから、急な商品名の変更を行うと現場で大きな混乱が起こる恐れもあり、既に販売されている薬については名称変更が行われていません。
実際、「アスコルビン酸【散】」の中には、現在の基準に照らし合わせれば「アスコルビン酸【顆粒】」であるものが含まれているなど、既存の薬は必ずしも新しい定義に基づいた名前にはなっていません。
そのため、日本薬局方の定義においても、「顆粒」のうち「18号(850μm)ふるい」を全量通過し、「30号(500μm)ふるい)」に残るものが5%以下のものを「散」とする、といった古い定義が経過措置として残されています1)。
薬剤師としてのアドバイス:「ドライシロップ」は水やジュースに溶かして飲ませやすい
粉薬のうち、「ドライシロップ」は水やジュースに簡単に溶けます。そのため、粉が細かくて飲みづらいといった場合には、水やジュースに溶かして飲ませることができます。このとき、中には苦味が増すなどして余計に飲みづらくなる組み合わせもありますので、何と混ぜると飲みやすくなるのか、薬剤師に確認するようにしてください。
◆『タミフル(一般名:オセルタミビル)』ドライシロップ
スポーツドリンクやチョコアイスで飲みやすく、リンゴジュースやバニラアイスで飲みづらくなる
◆『クラリス(一般名:クラリスロマイシン)』ドライシロップ
バニラアイスや練乳で飲みやすく、オレンジジュースやスポーツドリンクで飲みづらくなる
◆『クラバモックス(一般名:アモキシシリン + クラブラン酸)』ドライシロップ
オレンジジュースやチョコアイスで飲みやすく、リンゴジュースで飲みづらくなる
「顆粒」や「細粒」も、水に混ぜると飲みやすくはなりますが、水に完全には溶け込みません。そのため、コップの底などに薬が残りやすく、薬を飲み残してしまう恐れがありますので注意するようにしてください。
+αの情報:「ドライシロップ」は自家製剤加算なのか、混合計量加算なのか?
「ドライシロップ」は、水に簡単に溶けて甘い液体の薬になります。このことから、「自家製剤加算」なのか「計量混合加算」なのか、話がややこしくなります。
通常、粉薬である「顆粒」や「細粒」と、水薬である「シロップ」を混ぜた場合、「自家製剤加算」を算定することになります。これは、粉薬をシロップと混ぜて最終的には水剤にするという、異なる剤型に製剤化する、複雑な調剤工程だからです。
ところが、粉薬である「ドライシロップ」と、水薬である「シロップ」を混ぜても、「自家製剤加算」は算定できません。これは、「ドライシロップ」が簡単に水に溶けて調剤が容易であるからです。
そのため、「ドライシロップ」と「シロップ」を混ぜた場合には、「計量混合加算」を算定することになります。
さらに、粉薬である「顆粒」や「細粒」と、粉薬である「ドライシロップ」を混ぜた場合も、算定するのは「計量混合加算」です。これは、粉同士で調剤が容易であるからです。
つまり、「ドライシロップ」は粉薬とも水薬とも混ぜ合わせるのが容易なため、算定できるのはどちらも原則「計量混合加算」になります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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