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SSRI・SNRI 神経障害性疼痛治療薬

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抗うつ薬の『サインバルタ』が腰痛に効く?~神経痛へのSNRIの効果

回答:「慢性腰痛症」の適応が追加された

 『サインバルタ(一般名:デュロキセチン)』は、「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)」に分類される抗うつ薬です。

 通常の痛み止めが効きにくい「神経の痛み」に対する効果があることから、2016年3月に「慢性腰痛症」の適応が追加され、鎮痛薬としての選択肢としても注目されています。
※他にも「糖尿病性神経障害」・「線維筋痛症」・「変形性関節症」の痛みに適応があります。

 ただし、もともと抗うつ薬であり精神系にも作用するため、副作用のリスクも少なくありません。そのため、通常の痛み止め(NSAIDs)ではどうしても痛みがとれない場合に使います。

回答の根拠:神経の痛みに対する効果

 『サインバルタ』などのSNRIは、脳で「セロトニン」や「ノルアドレナリン」の作用を高めることによって、うつ病やうつ状態に治療効果を発揮する薬です。

 一方、「下行性疼痛抑制系」という痛みを抑える神経の働きも、「セロトニン」や「ノルアドレナリン」によって活発になることがわかっています1)。
 『サインバルタ』は、「下行性疼痛抑制系」での「セロトニン」や「ノルアドレナリン」の作用を高めることで、痛みを抑える効果を発揮すると考えられています2)。
サインバルタの下行性疼痛抑制系への作用
 1) J Clin Psychiatry.63(5):382-3,(2002) PMID:12019660
 2) サインバルタカプセル インタビューフォーム

下行性疼痛抑制系とは

  「下行性疼痛抑制系」とは、脳幹から脊髄に向かって下行する「抑制性ニューロン」のことです。
下行性疼痛抑制系とは
 通常、何らかの傷害(ケガや炎症)が起こると、その情報はC線維やAδ繊維などの「一次ニューロン」によって「脊髄」に伝わります。
 次に、その情報は「脊髄」から「二次ニューロン」によって「脳」に伝わり、「脳」が”痛み”として感知します。

 このとき、「一次ニューロン」から「二次ニューロン」への情報伝達を弱めるのが、「下行性疼痛抑制系」です。

 この「下行性疼痛抑制系」の働きを高める鎮痛薬には、『リリカ(一般名:プレガバリン)』『ノイロトロピン(一般名:ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液)』など、神経の痛みにも効果を発揮する鎮痛薬があります。
 通常の解熱鎮痛薬(NSAIDs)では、神経の痛みには十分な効果が期待できません

薬剤師としてのアドバイス:慢性腰痛の治療は大きく変わってきている

 慢性的な腰痛に対しては、『ロキソニン』などのNSAIDsの飲み薬・貼り薬を使うのが一般的です。しかし、この治療方法だけでは十分に痛みがとれず、日常生活に支障を来たす人も少なくありません。

 こういった場合に、神経の痛みを和らげるために『リリカ』や『ノイロトロピン』、『サインバルタ』といった薬を使うといった選択肢が増えてきています。

 また、腰が痛く動かせないという生活が長く続くと、「腰を動かすと痛い」という強い認識が脳にトラウマのように植えつけられてしまいます。その場合、肉体的にはトラブルが無いにも関わらず、条件反射で腰に痛みを感じてしまうケースも少なくありません。

 こうした心因性の痛みには薬を使うより、「認知行動療法」を行うことによって改善したという症例も、近年多くなってきています(慢性的な不眠症も、「認知行動療法」で改善することが報告されています)。
 腰が痛い=痛み止めを飲む、という選択肢しか無いわけではありません。長く続く腰痛に悩まされている場合には、今後の治療方針についても医師と相談することをお勧めします。

+αの情報:『サインバルタ』の痛み止めとしての適応症

 『サインバルタ』は、痛み止めとしての適応症が大きく広がっています。

 2016年12月19日には「変形性関節症」による痛みにも適応が追加され、「糖尿病性神経障害」・「線維筋痛症」・「慢性腰痛症」・「変形性関節症」の4つの痛みに使えるようになっています3)。

 3) サインバルタカプセル 添付文書

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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