『ディオバン』の用法が、朝から夜に変わったのは何故?~血圧の日内変動
記事の内容
回答:夜の血圧を安定させるため
高血圧には、昼よりも夜の血圧が特に高くなるタイプの高血圧(non-dipper型)があります。
このタイプの高血圧の場合、朝に服用している血圧の薬を1つ夜に変更することで、血圧を安定させることができる場合があります。
薬は、同じ1日1回の服用でも、朝と夜どちらで服用するのかによって、大きく効果が変わることがあります。必ず、医師・薬剤師から指示された時間帯で服用するようにしてください。
回答の根拠①:『ディオバン』を夕方服用することの意義
ARBである『ディオバン(一般名:バルサルタン)』は、基本的に1日1回の服用で安定した効果を発揮する薬です1)。
しかし、夜間の血圧が高くなってしまうタイプの高血圧患者に対しては、朝よりも夕方にかけて服用することで夜間の血圧上昇を抑え、腎保護効果がより高くなることが報告されています2)。
1) ディオバン錠 添付文書
2) Hypertension.46(4):960-8,(2005) PMID:16144987
『ディオバン』に限らず、複数の血圧の薬を使っている場合には、朝服用の薬を1つ夜服用に変えることで、夜間の血圧を安定させ、腎保護効果を高めることができる場合もあります3)。
3) Am J Kidney Dis.50(6):908-17,(2007) PMID:18037091
このように、薬を飲むタイミングを変えるだけで血圧が安定すれば、薬の量や種類を増やすことなく治療効果を高めることができます。
回答の根拠②:高血圧にも色々なタイプがある
ひとことに「高血圧」と言っても、ずっと血圧が高めの普通の高血圧から、朝に血圧が急上昇する「早朝高血圧(Morning surge)」や、病院でだけ血圧が上がる「白衣高血圧」など、血圧がどの時間帯、どういったタイミングで高くなるのか、人によって様々に異なります。
こうした色々なタイプの「高血圧」を、一つの決まった方法だけで治療することはできません。それぞれのタイプに適した治療方法を選ぶ必要があります。
そのために、その人の血圧を24時間継続して測定し、血圧変動の特徴を見極める「24時間自由行動下血圧測定(ABPM)」が行われるようになっています。
薬剤師としてのアドバイス:朝が良い理由、夜が良い理由、用法には意味がある
薬の用法は、なんとなくでは決まりません。
同じ1日1回であっても、上記のように夜の血圧が高くなる高血圧には、降圧薬を夜に服用した方が治療効果は高くなることがあります。
逆に、酷いアレルギーなどに用いるステロイドは、1日1回の場合は朝に服用した方が副作用のリスクを減らせます。
飲み忘れが少ない等の理由から決まることもありますが、多くの場合、薬の用法には意味があります。自己判断で勝手に薬を飲む時間帯を変えたりしないようにしてください。
+αの情報:ARBやCa拮抗薬の1日2回服用の根拠
『ディオバン』などのARBや『アムロジン(一般名:アムロジピン)』などのCa拮抗薬は、1日1回の服用で24時間効果が安定するように設計された薬です。そのため、通常は1日1回の服用で十分に効果が発揮されます4)。
4) 臨床医薬 14(10):1769-1785,(1998)
ところが近年、「高血圧」にも色々なタイプがあることが明らかになってくると共に、高血圧の治療では24時間の血圧を安定させることが重要と考えられるようになってきています。
そのため、本来は1日1回の薬であっても、血圧変動を減らすために1日2回に分けて服用する、といったケースも増えてきています。
こうしたARBやCa拮抗薬の1日2回服用は、日本高血圧学会が策定する「高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)」でも、以下のように記載され、選択肢の一つとして考えられるようになっています。
降圧薬は1日1回投与を原則とするが、24時間にわたって降圧することがより重要であり、1日2回の投与が好ましいこともある。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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