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解熱鎮痛薬・NSAIDs 副作用

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『ロキソニン』に「小腸・大腸の狭窄・閉塞」の副作用が追加されたことについて

 2016年3月22日付で、『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』の重大な副作用に、「消化管の狭窄・閉塞」を追加1)。

 1) 平成28年3月22日 薬生安発0322第1号 別紙 2  

 これに関して、これまでは安全と思われていた薬に大きな副作用が新たに見つかった、というような論調もありますが、そういうわけでもありません。元から消化器系の副作用の多い薬です。
 「重大な副作用」という表現に惑わされる方も多いようですが、これは頻繁に起こるというものではなく、極めて稀(日本でも毎日万単位で使われている中で、症例は6件のみ)ではあるものの、起こると大きな問題となりかねない、という意味です。

 こうした副作用を避けるために、『ロキソニン』は万能の痛み止めではないことを知り、1回飲んで効かない場合には安易に薬の量を増やすのではなく、痛みの原因をはっきりさせるために病院を受診するようにしてください。

※2016年7月5日追記
 同じNSAIDsである『ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)』にも、同様に「消化管の狭窄・閉塞」の副作用が追加されました。

『ロキソニン』などの痛み止めには、元から消化器系の副作用が多い

 『ロキソニン』や『ボルタレン』など、NSAIDsに分類される痛み止めには、元から胃腸障害の副作用が多いことが知られています。
 用法・用量を守って使っていても、『ロキソニン』では2.25%、『ボルタレン』では6.63%の頻度で、胃粘膜傷害の副作用が起こることが報告されています2,3)

 2) ロキソニン錠 添付文書
 3) ボルタレン錠 添付文書

 NSAIDsは、痛みの元となる「プロスタグランジン」の産生を減らすことで痛みを和らげる薬です。この「プロスタグランジン」は痛みの元となると同時に、胃腸の粘膜を守る作用も持っています。
ロキソニンとプロスタグランジン
 そのため、NSAIDsを使うと、痛みが和らぐと同時に、胃腸の粘膜が荒れやすくなります。

 この副作用は昔から広く知られているため、『ロキソニン』などのNSAIDsを使う際には、『ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)』『ムコスタ(一般名:レバミピド)』などの胃薬を一緒に処方されるのが一般的です。

潰瘍がきっかけとなって腸管が狭窄・閉塞するメカニズム

 今回『ロキソニン』に新たに追加された副作用は、「小腸・大腸の狭窄・閉塞」です。
 これは『ロキソニン』の副作用で胃腸障害や潰瘍が起きたとき、それに伴って腸管が狭窄・閉塞するものと考えられています2)。
胃腸障害から狭窄、閉塞まで
 今後、新たなメカニズムが明らかになる可能性もありますが、現状では従来から知られている薬理作用「胃腸障害」の延長線上の副作用が見つかった、と考える方が妥当です。

 『ロキソニン』がダメなら『ボルタレン』にしよう、といった意見も散見されますが、胃腸障害が元になるのであれば『ボルタレン』でも同様か、あるいは『ロキソニン』よりも高いリスクが考えられます。安易な代替案になりません。

薬を必要以上に飲むと、それだけ副作用は起こりやすくなる

 『ロキソニン』は、ドラッグストアなどでも簡単に購入できます(市販のものは『ロキソニンS』)。また、腰痛や頭痛など、幅広い痛みに早くよく効くため、人気があります。
 しかしその分、必要以上にたくさんの薬を飲むなど、用法・用量を守らずに使われているケースも少なくありません。

 今回の報告例で、どの程度の量・頻度で『ロキソニン』が使われていたのか明らかではありませんが、薬理作用の延長線上で起こる副作用であれば、薬の量が増えればそれだけ起こりやすくなります。

『ロキソニン』は万能の痛み止めではない

 『ロキソニン』は万能の痛み止めではありません。効かない痛みもたくさんあります。

 『ロキソニン』などのNSAIDsを1錠飲んで効かない、という場合は、薬の量が足りないのではなく、そもそも『ロキソニン』が効く痛みではないことを疑う必要があります。

 頭痛であっても、片頭痛であれば「トリプタン製剤」を使う必要があります
 腹痛であっても、胃潰瘍の痛みであればPPIやH2ブロッカーを使う必要があります
 ビリビリとした神経の痛みであれば、『リリカ(一般名:プレガバリン)』『ノイロトロピン(一般名:ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液)』といった神経痛専用の痛み止めを使う必要があります。

 痛み止めを使っても治りが悪い場合には、安易に薬の量を増やすのではなく、病院で医師に症状を正しく伝え、痛みの原因を特定するようにしてください。

 また、インフルエンザの時にNSAIDsを使うと「インフルエンザ脳症」を起こす恐れがあります。インフルエンザの際の解熱・鎮痛には、『カロナール(一般名:アセトアミノフェン)』を使う必要があります。

副作用は正しく知って、必要以上に怯えない

 どんな薬にも副作用はあります。100%安全な薬は存在しません。

 『ロキソニン』は、痛み止めの中では比較的安全な薬のため、広く様々な場面で使用されています。しかし、何の心配もなく使いたい放題にできる薬ではないことは知っておく必要があります。

 たかが痛み止めと油断することなく、必要な時に、正しい方法で必要な量を飲む、ということを徹底するようにしてください。

 薬を飲んでいたら湿疹ができる(薬疹)、目や唇が腫れる(スティーブンス・ジョンソン症候群)、息苦しさや鼻づまりを感じる(アスピリン喘息)、胃が痛む(胃腸障害)など、『ロキソニン』の危険な副作用にはそれぞれ特徴的な初期症状があります。こうした特徴的な症状を知っておき、体調に異変を感じた際はすぐに病院を受診するようにしてください。

 また、一度薬で副作用が起こった場合、同じ薬は避けることをお勧めします。薬は同じ成分でも名前が異なることが多々ありますので、「お薬手帳」などに記録しておくようにしてください。

+αの情報:「アスピリン」の大腸がん防止効果

 胃や腸の炎症や潰瘍は、一時的なものであればすぐに治りますが、長期で続くと大きな問題につながります。

 『バイアスピリン(一般名:アスピリン)』もNSAIDsに分類される薬ですが、この薬は大腸での炎症・ポリープを抑えることで、大腸がんを予防できる効果があるのではないか、と注目されています。つまり、大腸で炎症や潰瘍などのトラブルを長く引きずっていると、大腸がんのリスクにつながりかねない、ということを意味しています。

 このことからも、安易に痛み止めをたくさん使うことは、身体にとっても非常にデメリットが大きいと言えます。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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