鼻に「ワセリン」で花粉症に効く?~花粉症の救世主と呼ばれる根拠と、目の周りへの使用の是非
記事の内容
回答:鼻であれば、害もないので試してみると良い
鼻にワセリンを塗ると、花粉症が楽になる、と話題になっています。
確かに、鼻に入ってくるはずだった花粉が「ワセリン」に引っ付いて体内に入って来なくなると、花粉症の症状は和らぎます。
「ワセリン」には特に目立った副作用もないため、効果を実感できるのであれば試してみる価値はあります。
ただし、効果が報告されているのは鼻に対してのみで、目の周りに塗った場合の効果を検証したものはありません。万が一目に入った場合の雑菌や不純物などのリスクからも、目の周りへの安易な使用はお勧めできません。
回答の根拠①:目立った害のない「ワセリン」
「ワセリン」の製剤である『プロペト(一般名:白色ワセリン)』には目立った副作用がありません。添付文書には、薬に対する過敏症として接触性皮膚炎が1つだけ記載されています1)。
過敏症とは、薬に限らず食べ物でも起こるような、個別のアレルギー反応のことです。一度、皮膚に使ってみて問題なければ、その後の副作用の恐れはほぼ無いと考えて差し支えありません。
1) プロペト 添付文書
そのため、花粉症に対する効果を実感できるのであれば、試してみる価値はあると考えられます。
回答の根拠②:鼻炎に対する軽減効果
鼻の周りに「ワセリン」と、それ以外のクリームを塗布したケースを比較すると、「ワセリン」を塗布したグループで鼻炎症状が軽減されたとする報告があります2)。
2) Am J Rhinol Allergy.27(4):299-303,(2013) PMID:23883812
「ワセリン」は、いわゆる”べたつき”が強く、花粉などの微粒子をより吸着しやすい性質があるなどの要因が考えられています。
回答の根拠③:目の周りには、安易に使わない
通常の「ワセリン」製剤は、眼科用としては使用できません。これは、薬に微粒子が含まれているため、眼に入ると角膜などに傷を付けてしまう恐れがあるからです。
そのため、眼科用として使う場合には、より精製度の高い『プロペト』を選ぶ必要があります3)。
3) プロペト 添付文書
また、一度別の容器に移し替えるなど手を加えた場合、その工程で雑菌や異物が混入する恐れがあるため、厳密にはその『プロペト』を眼科用として使用することはできません。
このように、眼に使用する塗り薬は、通常の塗り薬よりも厳密な管理が必要です。そのため、目に入る恐れのある使い方をする場合には、『プロペト』などのより安全な薬を選ぶか、そもそも薬が目に入らないよう注意しなければなりません。
さらに、医師・薬剤師の指示と異なる使用方法で起こった副作用は、補償の対象外となるため、万が一のことを考え、「ワセリン」を安易に目の周りに使用することは、お勧めできません。
薬剤師としてのアドバイス①:皮膚にトラブルを感じたら、必ず病院へ
「ワセリン」は副作用もほとんどなく、塗り薬としては最も安全な薬の一つです。しかし、それでも全く副作用のリスクが無いわけではありません。
また、塗り薬は使っているうちに雑菌が繁殖したり、不純物が混入する恐れがあります。こうした雑菌や不純物によるトラブルは、「ワセリン」がいくら安全な薬でも起こり得ます。
何らかの異変を感じた場合には、必ず病院で診察を受けるようにしてください。
薬剤師としてのアドバイス②:花粉症の治療は、「抗ヒスタミン薬」が基本
鼻に「ワセリン」を塗ることの効果は、物理的に体内に入ってくる花粉の量を減らすという意味で、マスクと同じようなものです。
既に体内に花粉が入ってしまい、花粉症の症状が出ている場合には、「抗ヒスタミン薬」などの薬で治療する必要があります。
「ワセリン」があるから薬を飲まなくても良い、と勝手な自己判断はしないようにしてください。
+αの情報:目への花粉の侵入を防ぐには、適切な「まつ毛」の量と長さが必要
「まつ毛」は、目への異物の侵入を防ぐ役割を持っています。
短過ぎると、盾としての機能が十分に果たされず、目に異物が入ってきやすくなります。
長過ぎても、まばたきによって目の周りに余計な気流を生み、目に異物が入ってきやすくなります。
花粉症で目の症状が酷い場合には、付けまつ毛を一旦外すなど、治療を最優先させることをお勧めします。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
ご回答いただき、ありがたいです!
薬剤師さんからステロイドや
プロトピックとアレルゲンの経皮吸収
についてお答えしていただき
安心することができました。
たしかに荒れたままの肌でいる
方が食物抗原等が入りやすく
注意すべきと最近目にしました。
ご回答ありがとうございました!
これからも読者の一人として
ブログから学ばさせていただきます。
>かっちんさん
コメントありがとうございます。
ステロイドやプロトピック等の塗り薬でもアレルゲンが吸着されるかどうか、という点について、現段階でわかる範囲でお答えさせていただきます。
確かに、ステロイドやプロトピック等の塗り薬も軟膏である以上、ホコリなどの微粒子が付着しやすくなる可能性は考えられます。しかし、花粉症でワセリンに効果があったのは、鼻は呼吸によって空気の出入りが頻繁に行われているからであり、皮膚のように空気中にさらされているだけの状態では、アレルゲン等の付着にそれほど違いは起こらないと考えるのが妥当です。
また、皮膚には角質層のバリア(https://www.fizz-di.jp/archives/1007694084.html)もあるため、分子量の大きなアレルゲンが薬と一緒に吸収されてしまうことはありません。基本的に、ステロイドやプロトピックを使って皮膚の状態を改善する方が、角質層のバリアも強くなり、アレルギー症状は改善していきます。
こうした点から、ステロイドやプロトピックによってアレルゲンの経皮吸収が増えるということは考えられない、というのが薬剤師としての意見になります。
初コメントになります。
こちら様のブログは様々な薬
についてとても参考になります!
ワセリンと花粉の付着による
花粉症軽減とは驚きました。
塗り薬と付着でふと疑問に思った
点を質問してもよろしいでしょうか?
塗り薬を塗った状態の肌に
ホコリ、花粉、ハウスダスト、ペットの毛、
洗剤などが付着すると
ステロイドやプロトピックの塗り薬は
吸収性があると思うのですが
抗炎症の薬理成分の吸収
以外にもアレルゲンも同時に
吸収されてしまう可能性は
あると思われますか?
よろしければなのですが
ご見解いただけましたら。