花粉症や鼻炎の点鼻薬、使い続けても大丈夫?~「ステロイド」と「血管収縮剤」の違いと薬剤性鼻炎
記事の内容
回答:「ステロイド」の点鼻薬は続けて使う、「血管収縮剤」の点鼻薬はピンポイントで使う
花粉症や鼻炎などに使う点鼻薬には、「ステロイド」と「血管収縮剤」のものがあり、使い方は大きく異なります。
「ステロイド」の点鼻薬は、くしゃみ・鼻水・鼻詰まりを抑えるもので、しばらく続けて使う必要があります。
「血管収縮剤」の点鼻薬は、鼻づまりを一時的に解消するためのもので、症状が酷い時にだけ使う薬です。
特に、「血管収縮剤」の点鼻薬を使い過ぎると、薬が原因で鼻水・鼻詰まりになる「薬剤性鼻炎」を起こす恐れがあるため、使い続けるのは1~2週間程度に留める必要があります。
同じ点鼻薬でも、成分によって使い方や目的が全く異なるため、明確な区別が必要です。
回答の根拠①:「ステロイド」の点鼻薬の目的~使い方と安全性
病院でよく処方される『アラミスト(一般名:フルチカゾン)』や『ナゾネックス(一般名:モメタゾン)』などは、「ステロイド」の点鼻薬です。
鼻粘膜の炎症を抑える作用があるため、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった鼻炎の3大症状全てに効果があります。また、使い続けても特に際立ったリスクはないため、軽症から重症まで全ての段階で第一選択薬として推奨されています1)。ただし、1回使ってすぐ効くというわけではないため、しばらく続けて使う必要があります。
1) 日本アレルギー学会 「鼻アレルギー診療ガイドライン」 (2016)
「ステロイド」としての副作用はほとんどない
「ステロイド」は副作用が強いという印象が強いですが、点鼻薬の「ステロイド」は鼻の粘膜でしか作用せず、吸収されて全身へ移行することはほとんどありません。
実際、全身への移行率の指標となる「生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)」は、1%にも満たないことが確認されています2,3)。
※「ステロイド」の点鼻薬の生物学的利用能(バイオアベイラビリティ) 2,3)
アラミスト・・・・0.5%
ナゾネックス・・・0.2%未満
2) アラミスト点鼻液 インタビューフォーム
3) ナゾネックス点鼻液 インタビューフォーム
回答の根拠②:「血管収縮剤」の点鼻薬~使い過ぎで起こる「薬剤性鼻炎」
「血管収縮剤」は、鼻粘膜の血管を収縮させ、一時的に鼻づまりを解消する効果があります。市販の点鼻薬にもよく配合されています。
この「血管収縮剤」の点鼻薬は使うとすぐに(5~15分で)効くため、用法・用量を守らず何度も使ってしまう人が少なくありません。
しかし、「血管収縮剤」の点鼻薬を使い過ぎていると、だんだん効かなくなってくる上に、鼻粘膜が腫脹してアレルギーでもないのに鼻炎や鼻づまりになる「薬剤性鼻炎」を起こす恐れがあります4)。この症状が出始めると、ますます「血管収縮剤」の点鼻薬を使うようになってしまうため、悪循環に陥ってしまいます。
4) ORL J Otorhinolaryngol Relat Spec.56(3):157-60,(1994) PMID:7515487
そのため「血管収縮剤」の点鼻薬は、鼻づまりが重症な際に1~2週間に限って使用する、とガイドラインでも規定されています1)。あくまで、鼻づまりを一時的に解消することを目的とした薬であることに注意が必要です。
薬剤師としてのアドバイス:「ステロイド」と「血管収縮剤」はきちんと区別する
「ステロイド」の点鼻薬は、「血管収縮剤」の点鼻薬のように使ってすぐ効くわけではありません。
「血管収縮剤」の点鼻薬は、「ステロイド」の点鼻薬のように安全性が高く、くしゃみ・鼻水にまで効くわけではありません。
こうした誤解があると、「ステロイド」の点鼻薬を1~2回使っただけで「効かない」と思って使うのを止めてしまったり、「血管収縮剤」の点鼻薬を何ヶ月も使い続けて「薬剤性鼻炎」を起こしてしまったり、といった事態につながります。
点鼻薬の成分が「ステロイド」なのか「血管収縮剤」なのかによって、使う目的も正しい使い方も違うため、きちんと区別して使うようにしてください。
+αの情報:ステロイドと血管収縮剤の見分け方
点鼻薬の成分が「ステロイド」と「血管収縮剤」のどちらなのかは、薬の有効成分を見ればおよそ見分けることができます。
ただし、中には例外的なものもあるため、わからない場合は薬剤師・登録販売者に確認するようにしてください。
「ステロイド」の点鼻薬
『ナゾネックス(一般名:モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物)』
『アラミスト(一般名:フルチカゾンフランカルボン酸エステル)』
『フルナーゼ(一般名:フルチカゾンプロピオン酸エステル)』
『リノコート(一般名:ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)』
・・・など、「~ゾン〇〇酸エステル△△」といった成分名のもの
「血管収縮剤」の点鼻薬
『プリビナ(一般名:ナファゾリン)』
『トラマゾリン(一般名:トラマゾリン)』
・・・など、「~ゾリン」で終わる成分名のもの
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
この記事へのコメントはありません。