『ゼビアックス』と『ベピオ』、同じニキビ治療薬の違いは?~抗生物質と殺菌剤
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回答:「抗生物質」と「殺菌剤」、菌を退治するメカニズムが違う
『ゼビアックス(一般名:オゼノキサシン)』と『ベピオ(一般名:過酸化ベンゾイル)』は、どちらも尋常性ざ瘡(ニキビ)の治療薬です。
『ゼビアックス』は、「キノロン系」に分類される抗生物質です。
『ベピオ』は、「オキシドール」などと同じ、活性酸素を利用した殺菌剤です。
ニキビの原因”アクネ菌(Propionicaterium acnes)”を退治する、という目的は同じです。
回答の根拠①:抗生物質『ゼビアックス』の特徴
『ゼビアックス』など「キノロン系」の抗生物質は、細菌が増殖する際に必要となる酵素「DNAジャイレース」を阻害し、DNAの複製を止める作用があります1)。
1) ゼビアックスローション インタビューフォーム
既存のニキビ治療薬『アクアチム(一般名:ナジフロキサシン)』や『ダラシン(一般名:クリンダマイシン)』など、ガイドラインでも高いレベル【A】で推奨されている既存の抗生物質と、同程度の治療効果を発揮します1,2)。
2) 日本皮膚科学会 「尋常性痤瘡治療ガイドライン」,(2008)
既に同じ効果の薬があるからといって、新しい薬に存在価値が低くなるわけではありません。既存の薬が何らかの副作用で使えなかった場合でも、次の効果的な選択肢が存在する、ということは、治療の上でも非常に重要です。
また、『アクアチム』や『ダラシン』など既存の薬は1日2回の塗布が必要でしたが、『ゼビアックス』は1日1回の塗布で良く、薬を使う手間が半分で済むのも特徴です2)。
2) ゼビアックスローション 添付文書
回答の根拠②:殺菌剤『ベピオ』の特徴
『ベピオ』は、「オキシドール」などと同様、活性酸素を利用した殺菌剤です3)。
3) ベピオゲル 添付文書
『ゼビアックス』や『アクアチム』、『ダラシン』といった抗生物質は、長期で使用すると薬が効かなくなる「耐性菌」の出現が問題になります。
一方、『ベピオ』は抗生物質のように1~2個の酵素や構造に作用するのではなく、細菌の様々な構造に対して作用するため、耐性が極めて出現しにくいのが特徴です。
実際、『アクアチム』などに対する「耐性」を獲得してしまったアクネ菌に対しても、『ベピオ』は殺菌作用を十分に発揮することが証明されています4)。
4) Antimicrob Agents Chemother.55(9):4211-7.(2011) PMID:21746943
外用剤での「耐性菌」出現が大きな問題になっている海外では、『ベピオ』はニキビ治療の第一選択薬として推奨されています。
薬剤師としてのアドバイス:治療効果の高い組み合わせに期待
現在、ニキビ治療は『ヒルドイド(一般名:ヘパリン類似物質)』+『ディフェリン(一般名:アダパレン)』+抗生物質、という3剤の組み合わせが主流です。
また、『ベピオ』も抗生物質と併用することで治療効果が高くなることから、『デュアック(一般名:クリンダマイシン + 過酸化ベンゾイル)』という配合剤が発売されています。
現状、どの組み合わせ、どの塗布方法が最も治療効果が高いのか、といった明確な結論は出ていません。
たくさんの種類がある中で、自分にとって副作用が無く、皮膚に刺激も少なく、使い続けられる薬の組み合わせで治療することが重要です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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