『デルモベート』や『アンテベート』は、顔に使っても良い?
記事の内容
回答:ダメ
顔は、身体の中でも皮膚の薄い場所です。
そのため、『デルモベート(一般名:クロベタゾールプロピオン酸エステル)』や『アンテベート(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)』といった、強力なステロイド外用剤は使用できません。
ステロイド外用剤は、その強さによって5つのランクに分類され、塗る場所によって厳密に薬を使い分けます。
そのため、自己判断で勝手な使い方をすると、皮膚が薄くなる副作用を起こしたり、効果が得られなかったりといったトラブルの元になります。
回答の根拠①:「ステロイド外用剤」のランク分類
ステロイド外用剤のステロイドとしての強さは、下記の5つのランクに分類されています。
原則、顔に使用するのは『ロコイド(一般名:ヒドロコルチゾン酪酸エステル)』などのⅣ群までに該当するステロイド外用剤です。
Ⅰ群である『デルモベート』や、Ⅱ群である『アンテベート』は、手足など皮膚の厚い部位に使用するもので、顔への使用には適していません。
回答の根拠②:皮膚の厚さによる吸収比率の違い
ヒトの身体は、どこも均一な皮膚をしているわけではありません。足の裏の皮膚は分厚く、顔の皮膚は薄く、といったように、場所によって様々です。
そのため、同じ薬を塗っても、その吸収のされやすさは全く異なります。
腕の吸収率を1.0とした場合、足の裏では0.14、顔では13.0と、100倍近い差があります1)。単純計算でも、同じ症状にも強さが100倍違う薬を使う必要がある、ということです。
1) J Invest Dermatol.48(2):181-3,(1967) PMID:6020682
こういった観点から、同じ皮膚症状であっても、顔と手では別のステロイド外用剤を使う必要があります。
また、「ワセリン」や『ヒルドイド(一般名:ヘパリン類似物質)』などと混合していても、薬が弱くなるわけではないため、混合しているから顔に使っても良い、ということにはなりません。
薬剤師としてのアドバイス:勝手な使用は、”黒っぽくなってしまう”副作用のもと
顔に、『デルモベート』や『アンテベート』などの強力なステロイド外用剤を使っていると、皮膚が薄くなってくる皮膚萎縮という副作用が起こりやすくなります。
この皮膚萎縮を起こすと、皮膚の下にある毛細血管が透けて見えるようになり、全体的に顔が赤黒い色に見えてしまうようになります。
この皮膚萎縮は、一度起きてしまうと元には戻りません。
特に、顔は身体の中でも皮膚の薄い場所で、こうした副作用が起こりやすい場所です。ステロイド外用剤の勝手な使用は全くお勧めできません。
+αの情報:長期で使用する際は、ステロイド外用剤から『プロトピック』へ切り替える
強力なステロイド外用剤は、あまり長期で使用するべきではありません。特に顔は皮膚が薄く、副作用も出やすいため、なるべく短期間で薬を使う必要があります。
どうしても長期で薬を使わなければならない場合には、ステロイド外用剤から『プロトピック(一般名:タクロリムス)』に切り替えるのが一般的です。
『プロトピック』は、『プロトピック軟膏0.1%』はⅢ群:『リンデロンV(一般名:吉草酸ベタメタゾン)』と同等、『プロトピック軟膏0.03%小児用』はⅣ群:『アルメタ(一般名:アルクロメタゾンプロピオン酸)』と同等の抗炎症作用を持っているとされています2)。
2) 中外医学社 EBM 皮膚疾患の治療 up-to-date,(2015)
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
この記事へのコメントはありません。