『カソデックス』と『オダイン』、同じ前立腺がんの薬の違いは?~交替療法と治療抵抗性
記事の内容
回答:『カソデックス』は、『オダイン』より副作用が少ない
『カソデックス(一般名:ビカルタミド)』と『オダイン(一般名:フルタミド)』は、どちらも「抗アンドロゲン薬」に分類される、前立腺がんの治療薬です。
『カソデックス』は、『オダイン』よりも肝臓への負担が少ない傾向にあります。
しかし、『カソデックス』で治療していると、だんだん薬が効かなくなってくることがあります。その場合、『オダイン』と切り替える(交替療法)ことで、再び効果が得られることがあります。
回答の根拠①:『カソデックス』と『オダイン』の作用と副作用
前立腺がんは、男性ホルモン「アンドロゲン」が深く関与しています。
『カソデックス』と『オダイン』は、どちらも前立腺がん組織への「アンドロゲン」の作用をブロックする「抗アンドロゲン薬」です1,2)。
1) カソデックス錠 インタビューフォーム
2) オダイン錠 インタビューフォーム
『カソデックス』は、『オダイン』よりも肝臓への負担も少ないのが特徴です1)。
※肝臓検査値への影響とその頻度 1,2)
カソデックス・・・AST上昇( 4.1%)、ALT上昇( 3.8%)、LDH上昇(2.3%)、γ-GTP上昇(2.1%)
オダイン・・・・・AST上昇(13.2%)、ALT上昇(13.2%)、LDH上昇(3.8%)、γ-GTP上昇(5.9%)
また、『カソデックス』は「アンドロゲン」受容体に対する親和性が『オダイン』よりも約4倍高いとされています1)。このことから、『カソデックス』は少ない副作用で高い効果を期待できる薬と言えます。
回答の根拠②:効かなくなった場合に、『カソデックス』を『オダイン』に入れ替える方法
『カソデックス』や『オダイン』などの「抗アンドロゲン薬」と、「アンドロゲン」の分泌を減らす「LH-RHアゴニスト」を併用する「CAB(Combined Androgen Blockade)療法」では、次第に薬が効かなくなってくることがあります。
この場合、使用している「抗アンドロゲン薬」を別の「抗アンドロゲン薬」に切り替える、つまり『カソデックス』と『オダイン』を入れ替えることによって、再び病状を改善できることがあります3,4)。
3) Cancer Res.63(1):149-53,(2003) PMID:12517791
4) J Urol.180(3):921-7,(2008) PMID:18635218
薬が効かなくなってきた前立腺がんに対する治療法は限られているため、この「交替療法」はガイドラインでも選択肢の一つとして推奨(グレードB)されています5)。
5) 日本泌尿器科学会 「前立腺癌診療ガイドライン (2012年版)」
『カソデックス』を先に使うことが多い理由
CAB療法では、『カソデックス』と『オダイン』のどちらを優先的に使うべきとする記載はガイドラインにもありません5)。
しかし、「抗アンドロゲン薬」として『カソデックス』を使った方が、『オダイン』を使った場合よりも少ない副作用で高い効果が得られる、とする報告もあります6)。
6) Urology.50(3):330-6,(1997) PMID:9301693
『カソデックス』は1日1回の服用で済むこともあり、『カソデックス』を先に使い、「交替療法」で『オダイン』を使うという方法が多い傾向にあります。
薬剤師としてのアドバイス:前立腺がんは、経過観察で良いこともある
前立腺がんは、自覚症状がほとんどないまま進行することがあります。そのため、「PSA値」の測定は前立腺がんの早期発見に非常に役立ちます。
しかし、「PSA値」を測定することによって、高齢者の生存期間に影響しないような小さな前立腺がんが見つかることもあります。
こうした前立腺がんにまで無理に薬を使うと、無用の副作用でかえって健康を害することに繋がるため、治療を行わずに「経過観察」をする、という選択肢もあります。
検査の目的は、生命を脅かすようながんを見つけ出すことです。
検査で異常が見られたからといって絶対に治療すべきと思い込まず、精密検査を行った上で、どういった治療をすべきなのか、主治医と相談しながら決めるようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 『カソデックス』と『オダイン』は、どちらも前立腺がんに使う「抗アンドロゲン薬」
2. 『カソデックス』の方が、CAB療法でも効果は高く副作用が少ない傾向にある
3. 薬が効かなくなってきた場合、『カソデックス』と『オダイン』を入れ替えることがある
添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較
◆薬効分類
カソデックス:抗アンドロゲン薬
オダイン:抗アンドロゲン薬
◆適応症
カソデックス:前立腺がん
オダイン:前立腺がん
◆用法
カソデックス:1日1回
オダイン:1日3回
◆警告事項の記載
カソデックス:なし
オダイン:肝臓に関する副作用の記載あり
◆肝臓検査値への副作用頻度
カソデックス:AST上昇(4.1%)、ALT上昇(3.8%)、LDH上昇(2.3%)、γ-GTP上昇(2.1%)
オダイン:AST上昇(13.2%)、ALT上昇(13.2%)、LDH上昇(3.8%)、γ-GTP上昇(5.9%)
◆剤型の種類
カソデックス:錠・OD錠(80mg)
オダイン:錠(125mg)
◆製造販売元
カソデックス:アストラゼネカ
オダイン:日本化薬
+αの情報:去勢抵抗性前立腺がんに使う『イクスタンジ』
新薬の『イクスタンジ(一般名:エンザルタミド)』は、『カソデックス』や『オダイン』と同じ「抗アンドロゲン薬」に分類される薬です。
『イクスタンジ』は『カソデックス』や『オダイン』と比べて、「アンドロゲン」受容体に対する作用が強力で、更に複数のシグナル経路からも作用するため、既存の薬が効かなくなってきた「去勢抵抗性前立腺がん」に使います7)。
7) イクスタンジカプセル インタビューフォーム
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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