『ミグシス』ってどんな薬?~頭痛を防ぎ、薬代も安くなる「片頭痛予防薬」
記事の内容
回答:片頭痛そのものを起こさなくする、予防薬
『ミグシス(一般名:ロメリジン)』は、片頭痛の予防薬です。
「トリプタン製剤」やNSAIDsのように”頭痛を感じた時”に飲むのではなく、毎日続けて飲んでおくことによって、片頭痛そのものを起こさなくする効果があります。
頓服薬をあまり頻繁に使い続けていると、薬の使い過ぎで別の頭痛を起こすことがあります。そのため、『ミグシス』で片頭痛を予防し、頓服薬の使用量を減らすことが大切です。
また、『ミグシス』は「トリプタン製剤」と比べても非常に安価です。そのため『ミグシス』を使えば、片頭痛の回数が減る上に、経済的な負担も減らせるという、一石二鳥の薬と言えます。
回答の根拠①:片頭痛を予防するメカニズム~脳血管に作用するCa拮抗薬
『ミグシス』は、『アムロジン(一般名:アムロジピン)』など高血圧の治療に使うCa拮抗薬の仲間です。ただし、血圧に関係する冠動脈や末梢血管には作用せず、主に脳の血管に作用します。
片頭痛は、脳の血管が異常に拡張することで起こると考えられています(※他にも拡延性抑制[spreading depression:神経細胞の電圧変化]なども関係しています)。
『ミグシス』は、この脳血管の異常な拡張を抑えることによって、片頭痛が起こる回数や痛みの強さを軽減し、「トリプタン製剤」やNSAIDsといった頓服薬の使用量を抑える効果があります1)。
1) ミグシス錠 インタビューフォーム
実際、この『ミグシス』を1日2回、8週間続けて服用することによって、64%の患者の片頭痛が軽減することが報告されています2)。
2) 医学書院 「慢性頭痛の診療ガイドライン(2013)」
回答の根拠②:月10回以上の「トリプタン製剤」の使用は、薬物乱用性頭痛につながる
『アマージ(一般名:ナラトリプタン)』や『イミグラン(一般名:スマトリプタン)』などの「トリプタン製剤」は、既に起こってしまった片頭痛に対して、非常に高い治療効果を発揮します。
しかし、3ヶ月以上に渡ってこの「トリプタン製剤」を月10回以上使用し続けていると、薬物過剰による「薬物乱用性頭痛」を引き起こす可能性があります3)。
3) 日本頭痛学会 「物質またはその離脱による頭痛」 第2版.P83-58,8.医学書院,(2006)
そのため、あまり「トリプタン製剤」を頻繁に使うようであれば、使用量を減らすために『ミグシス』などの予防薬を検討する必要があります。
回答の根拠③:『ミグシス』は値段も安い
『ミグシス』は、「トリプタン製剤」と比べると値段も非常に安いのが特徴です。
・予防薬の薬価
『ミグシス』 → 1錠33.5円
・「トリプタン製剤」の薬価
『アマージ』 → 1錠918.9円
『イミグラン』 → 1錠816.4円
『ミグシス』を用法通りに毎日1日2錠を服用した時の薬代は、頓服薬を月に2回だけ使った場合の薬代と変わりません。
つまり片頭痛の予防薬を使うことは、頭痛も防げて、薬代も安くなる、といった一石二鳥の選択肢と言えます。
薬剤師としてのアドバイス:頭痛の程度や頻度、薬の使用量は記録しておこう
片頭痛の治療薬「トリプタン製剤」は非常によく効くため、つい頼りがちになります。しかし、月10回以上も使う状態は、薬の使い過ぎです。
また、片頭痛は生理周期で悪化することもあります。その場合は通常とは異なる方法で予防・治療することがあります。
自分が片頭痛をどの程度、どういった頻度で起こし、薬をどのくらい使っているのかは、きちんと把握しておき、正しく医師に伝えるようにしてください。
+αの情報:片頭痛には、NSAIDsは効きにくい
『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』や『ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)』などのNSAIDsに分類される痛み止めは、肩こりや眼精疲労から起こる「緊張型頭痛」には効果的ですが、「片頭痛」には効きにくい傾向があります。
そのため、痛み止めを飲んでも頭痛が治らないという場合には、安易に薬の量を増やすのではなく、薬の選択が正しいかどうかを考え直す必要があります。
NSAIDsもあまり使い過ぎると胃が荒れたり、「薬物乱用性頭痛」の原因になったります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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