■サイト内検索


スポンサードリンク

整腸剤・下痢止め 子どもの薬

/

『ミルラクト』ってどんな薬?~乳糖不耐症のメカニズムと、服用回数の上限

回答:乳糖を分解する酵素の薬

 『ミルラクト(一般名:β-ガラクトシダーゼ)』は、乳児の乳糖不耐で起こる消化不良を改善する薬です。
 消化管内で、「ラクトース(乳糖)」を「グルコース(ブドウ糖)」と「ガラクトース」に分解する酵素として働きます。
ミルラクトの作用

 この薬は哺乳時に毎回投与する必要があります。

 特に用法・用量上の上限は定められていませんが、医師から処方された回数以上の薬が必要になる場合は、授乳回数を減らす、もしくは乳糖の入っていない「ラクトレス」の製品を使うなど別の対応をする必要があります。

 ただし、自己判断で授乳を中断してしまったり、薬無しで授乳して下痢を起こしてしまうことは、乳児の健康にとっても良いものではありません。
 処方された薬では足りないという場合は、医師と『ミルラクト』の追加処方や授乳回数について一度相談することをお勧めします。

回答の根拠①:乳糖不耐症が起こるメカニズム

 ミルクに含まれる糖類である「ラクトース(乳糖)」は、単糖類の「グルコース(ブドウ糖)」と「ガラクトース」が結合した二糖類です。
 通常、消化酵素の一種である「ラクターゼ(乳糖分解酵素)」によって、「ラクトース(乳糖)」は「グルコース(ブドウ糖)」と「ガラクトース」に分解され、吸収されます。

 しかし、何らかの原因で「ラクターゼ(乳糖分解酵素)」の働きが弱いと、「ラクトース(乳糖)」を分解することができず、「ラクトース(乳糖)」のまま腸管に残ってしまいます。
 その結果、浸透圧が上昇して下痢を起こしたり、腸内細菌が乳酸発酵を起こして腹部膨満や腹鳴を起こしたりします1)。
乳糖不耐症のメカニズム
 1) 小児特定疾病情報センター 「乳糖不耐症」

 『ミルラクト』は、この「ラクターゼ(乳糖分解酵素)」の代わりに「ラクトース(乳糖)」を分解することで、下痢や腹部膨満などの症状を軽減します2)。
 ただし、『ミルラクト』は服用後1時間程度は体内で働き続けますが3)、そのまま体内に定着するわけではありません。そのため、授乳・哺乳のたびに飲ませる必要があります。

 2) ミルラクト細粒 添付文書
 3) ミルラクト細粒 インタビューフォーム

回答の根拠②:使用回数に上限は設けられていないが、効果は限定的

 『ミルラクト』は、用法上は使用回数に上限は設けられていません2)。そのため、哺乳のたびに使用することが可能です。

 ただし、先述のように『ミルラクト』は乳糖不耐症を根本的に治療できるものではありません。あくまで、高栄養であるミルクや乳製品などによる栄養管理を容易にする目的で使用します。
 処方された回数よりもたくさん使いたいという場合、薬を増やす前にまず、授乳回数を減らす、「ラクトレス」の製品を取り入れる、といった別の方向からのアプローチも必要です。

薬剤師としてのアドバイス:50℃以上にすると効果が無くなるので注意

 『ミルラクト』は、水やミルクと混ぜてからも5時間程度は安定で、薬の効果にも影響しないことが確認されています3)。

 そのため、薬を混ぜたのにミルクを飲まない、といった事態になっても焦る必要はありません。ただし、50℃以上にすると薬の効果が無くなってしまうため、0~40℃で保管するようにしてください。

+αの情報①:成長するにつれ、みんな乳糖不耐になっていく

 ミルクを摂取するのは哺乳類だけですが、ヒトを除く哺乳類は全て、成長するにつれてミルクを摂取しなくなります。
 ヒトは大人になってもミルクを摂取する機会がありますが、これはミルクが高栄養だから利用しているだけです。

 自然の摂理から考えると、「ラクターゼ(乳糖分解酵素)」は授乳期のみで必要であり、成長するにつれて不要になります。そのため、ヒトでも成長するにつれ「ラクターゼ(乳糖分解酵素)」の活性は低下していきます。
 授乳期を過ぎてから「乳糖不耐症」を起こすことがあるのは、このためです。

+αの情報②:「乳糖不耐症」は治るのか?

 「ラクターゼ(乳糖分解酵素)」の働きは個人差が大きく、どの程度の量のミルクを摂取した時に発症するかは様々です。
 授乳期は多量のミルクが必要ですが、大人になれば自分が大丈夫な範囲で食品を取捨選択することが可能です。そのため、「乳糖不耐症」が大きく問題になるのは、ほとんどは授乳期のみです。
乳糖不耐症と大人の主食

 ただし、中には「乳糖不耐症」であることに気付かず、下痢などの症状を繰り返しているケースもあります。お腹の調子が頻繁に悪くなる場合は、安易に下痢止めを使うのではなく、一度その原因をきちんと病院で診断してもらうことが必要です。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

■主な活動

【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます(2022年)
■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)
服薬指導がちょっとだけ上手になる本(2024年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
南山堂「薬局」、Medical Tribune
薬ゼミ、診断と治療社
ダイヤモンド・ドラッグストア
m3.com

 

【講演・シンポジウム等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

【監修・出演等】
異世界薬局(MFコミックス)
Yahoo!ニュース動画
フジテレビ / TBSラジオ
yomiDr./朝日新聞AERA/BuzzFeed/日経新聞/日経トレンディ/大元気/女性自身/女子SPA!ほか

 

 

利益相反(COI)
特定の製薬企業との利害関係、開示すべき利益相反関係にある製薬企業は一切ありません。

■ご意見・ご要望・仕事依頼などはこちらへ

■カテゴリ選択・サイト内検索

スポンサードリンク

■おすすめ記事

  1. 乗り物酔いのOTC、どんな選び方をすれば良い?~予防・治療の…
  2. 「ARB」と「ACE阻害薬」、同じ高血圧の治療薬の違いは?~…
  3. 「ピボキシル基」を持つ抗菌薬で低血糖が起こるのは何故?~カル…
  4. 『クレストール』と『メバロチン』、同じコレステロールの薬の違…
  5. ステロイド外用剤の『リンデロン』、DP・V・VG・Aの違いは…
  6. 『キサラタン』・『タプロス』・『トラバタンズ』・『ルミガン』…
  7. 『アレジオン』と『パタノール』、同じアレルギーの目薬の違いは…

■お勧め書籍・ブログ

recommended
recommended

■提携・協力先リンク

オンライン病気事典メドレー

banner2-r

250×63

スポンサードリンク
PAGE TOP