稀少糖「プシコース」って何?~太らない糖、「グルコース」との違い
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回答:太らない糖~減量やカロリー制限、ダイエットに期待
稀少糖「プシコース」は、ブドウ糖「グルコース」と同じく炭素6つからなる単糖類で、化学式も同じ(C6H12O6)です。
地球上の単糖類は99.9%がブドウ糖「グルコース」で占められ、その他の単糖類は存在量が非常に少なくなっています。その中でも、特に存在量の少ない約60種は「稀少糖」と呼ばれています。
近年、稀少糖の一種「プシコース」にはカロリーが無く、更にブドウ糖「グルコース」の吸収を阻害する作用などを持っていることが研究で明らかになり、”太らない糖”として注目を浴びています。
研究の中心となっている香川県では、稀少糖を使った和三盆糖やうどん等が商品化されています。
回答の根拠①:なぜ「稀少」なのか~「グルコース」が圧倒的な量である理由
そもそも、化学物質としては「グルコース」も一種の単糖類でしかありません。しかし、現在、地球上の単糖類は99.9%がブドウ糖「グルコース」だと言われています。
これは、植物が光合成によって作り出す単糖類が「グルコース」だからです。
地表にある植物、海に棲息している植物プランクトンが、それぞれ日光を浴びて光合成を行い、大量の「グルコース」を毎日作っています。
ヒトをはじめとする動物も、多くが「グルコース」をエネルギー源として利用しています。
しかし、これほどまでに「グルコース」ばかりが生物に利用されているのは何故でしょうか。
「グルコース」は、「グルコース」同士でたくさん繋がる
「グルコース」は、他の単糖類にはない特別な性質を持っています。それは、「グルコース」同士でたくさん繋がる、という性質です。
生物がエネルギー源として利用するためには、同じ糖同士をたくさん繋げて体内に備蓄できる「グルコース」が極めて便利です。体内に糖を備蓄できれば、エサが不足してもすぐに餓死してしまうことはありません。
実際、ヒトは「グルコース」がたくさん結合した「グリコーゲン」をエネルギー源として肝臓に備蓄しています。
他の単糖類は、同じ糖同士でつながることはできません。そのため、たとえば稀少糖「プシコース」を主なエネルギー源とする生物は、体内に糖を備蓄しづらく、飢餓に対して非常に脆弱になってしまいます。
こうした飢餓による自然淘汰の結果、現在の地球上には「グルコース」をエネルギー源とする動植物が繁栄している、と言えます。
回答の根拠②:稀少糖「プシコース」はダイエット効果が期待されている
稀少糖「プシコース」は、様々な生理作用を持つことが近年明らかにされてきています。
まず、砂糖の主成分であるショ糖「スクロース」の0.3%程度のカロリーしかありません1)。そのため、ほぼカロリーゼロの砂糖と言えます。
1) J Nutr Sci Vitaminol.48(1):77-80,(2002) PMID:12026195
さらに、食後の血糖値2)、内臓脂肪3)、体重・体脂肪率4)などへの効果が報告され、生活習慣病の予防やダイエット効果に対する研究が続けられています。
2) 食品加工技術 Vol.31 No.2:33-39,(2011)
3) 国際特許出願公開番号 WO2008/142860
4) 一般財団法人 稀少糖普及委員会 「稀少糖とは」
これらの詳細な作用機序はまだ明らかになっていませんが、「グルコース」と極めてよく似た構造をしているため、腸管での「グルコース」吸収に対して拮抗的な阻害作用を発揮する可能性が示唆されています。
+αの情報:「プシコース」で周りの植物を枯らす「ズイナ」
稀少糖「プシコース」は確かに稀少ではあるものの、「キシリトール」等と同様、自然界に存在する単糖類です。自然界の「プシコース」は、主に東アジアに自生している「ズイナ」の葉に含まれています。
ただし、「グルコース」のようにエネルギー源として利用されているわけではなく、植物の成長を妨げる作用を持っています5)。
5) Phytochemistry.48(2):241-8,(1998) ※PubMed外
「ズイナ」は「プシコース」が含まれる葉を自身の根本に落とすことで、周辺の土壌を高濃度の「プシコース」状態に変化させます。
その結果、「ズイナ」の木の周りでは他の植物は一切成長できなくなり、「ズイナ」は自身の領域で栄養素や日光を独占できるようになります。
周りの他の種族の成長を妨げ、自身の生存競争を有利にさせるという方法は、青カビが作り出す抗生物質「ペニシリン」とよく似た戦略と言えます。
自然界には「プシコース」だけでなく、様々な種類の単糖類が存在します。それぞれの単糖類の特性や生理作用が明らかになれば、それを利用した便利な薬がたくさん作られる可能性もあり、今後の研究が期待されています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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