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抗ヒスタミン薬 妊娠、授乳

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妊娠中・授乳中でも使える「抗ヒスタミン薬」は?~アレルギー薬の安全性評価

 
 アレルギーの治療に使う「抗ヒスタミン薬」には、妊娠中や授乳中でも比較的安全に使えるものがあります。妊娠・授乳中は全ての薬を使えない、と早合点して薬物治療を諦める必要はありません。

※妊娠中の安全性評価が高いもの
『ポララミン(一般名:d-クロルフェニラミン)』
『クラリチン(一般名:ロラタジン)』
『ジルテック(一般名:セチリジン)』

※授乳中の安全性評価が高いもの
『レスタミンコーワ(一般名:ジフェンヒドラミン)』
『クラリチン(一般名:ロラタジン)』
『アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)』

 また、これら以外にも安全性の報告があり、十分に選択肢になる薬があります。
 このように安全性評価の高い選択肢がある中で、薬を敢えてリスクのある薬や、情報不足の薬を選ぶメリットはありません。「抗ヒスタミン薬」は市販の鼻炎薬・風邪薬にもよく使われているため、妊娠・授乳中は必ずその旨を医師・薬剤師・登録販売者に伝えるようにしてください。

回答の根拠①:妊娠中の安全性評価~オーストラリア基準と疫学調査から

 妊娠中の安全性評価については、豪州医薬品評価委員会・先天性異常部会による「オーストラリア基準」や、各医薬品ごとの疫学調査の報告が選択の基準になります。

 妊娠中に「抗ヒスタミン薬」を使う場合は、安全性が評価されている以下の薬を選び、リスクのある薬やデータ不足で安全性が確立されていない薬は使わないようにしてください。

オーストラリア基準による安全性評価

【A】 これまでに多くの妊婦や妊娠可能年齢の女性に使用されてきた薬だが、それによって奇形の頻度や胎児に対する有害作用の頻度が増す、という”いかなる証拠”も観察されていない。
『ポララミン(一般名:d-クロルフェニラミン)』
『レスタミンコーワ(一般名:ジフェンヒドラミン)』

【B1】動物を用いた研究が十分になされ、胎児への障害が増加したという証拠は示されていない。
『クラリチン(一般名:ロラタジン)』

【B2】動物を用いた研究はまだ不十分だが、入手し得るデータからは胎児への障害が増加するという証拠は示されていない。
『ジルテック(一般名:セチリジン)』
『ザイザル(一般名:レボセチリジン)』
『アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)』

 安全性評価が最も高いのは、歴史が古く使用実績も豊富な第一世代の『ポララミン』や『レスタミンコーワ』です。これらの薬は、疫学調査でも胎児への影響が否定され1)、特に『ポララミン』は妊娠期の薬として推奨されています2)。
 しかし、第二世代の薬でも『クラリチン』3)と『ジルテック』4)は安全性情報が多く、また『ザイザル』は『ジルテック』と同じ扱いができるとされています5)。

 そのため、最近では眠気や口の乾きといった副作用の多い第一世代ではなく、こうした第二世代の薬を使うことも増えています。

 1) JAMA.246(4):343-6,(1981) PMID:7241780
 2) Ann Allergy Asthma Immunol.78(2):157-9,(1997) PMID:9048523
 3) J Allergy Clin Immunol. 2003 Mar;111(3):479-83. PMID:12642825
 4) J Matern Fetal Neonatal Med.11(3):146-52,(2002) PMID:12380668
 5) 南山堂 「薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳 改訂2版」

回答の根拠②:授乳中の安全性評価~Medications and Mothers’ Milkから

 授乳中の安全性評価については、「Medications and Mothers’ Milk」や、各医薬品ごとの授乳を通した乳児への薬物移行量などが選択の基準になります。妊娠中と授乳中では、安全性の評価は全く異なることに注意が必要です。
 授乳中に「抗ヒスタミン薬」を使う場合は、安全性が評価されている以下の薬を選び、リスクのある薬やデータ不足で安全性が確立されていない薬は使わないようにしてください。

Medications and Mothers’ Milk 15th ed.による安全性評価

【L1】最も安全(多くの授乳婦が使用するが、乳児への有害報告なし。対照試験でもリスクが示されず、乳児に害を与える可能性はほとんどない)
『クラリチン(一般名:ロラタジン)』

【L2】比較的安全(少数例の研究に限られるが、乳児への有害報告なし)
『ジルテック(一般名:セチリジン)』
『ザイザル(一般名:レボセチリジン)』
『アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)』
『レスタミンコーワ(一般名:ジフェンヒドラミン)』

 国立成育医療研究センターが公開している「安全に使用できると思われる薬」では『クラリチン』・『アレグラ』・『レスタミンコーワ』の3剤が挙げられています6)。
 妊娠中の安全性評価が高かった『ポララミン』は、授乳中の安全性評価は【L3】と低めで、このリストにも挙げられていない6)ことに注意が必要です。

 6) 国立成育医療研究センター 「授乳中に安全に使用できると思われる薬」

薬剤師としてのアドバイス:妊娠中・授乳中は、母子にとって最大のメリットを考える

 妊娠中や授乳中は、母子の両方にとって最大のメリットを得られるような薬の使い方をする必要があります。同じ薬であっても、妊娠の時期や症状などの状況によって、使うべきか使うべきでないか、の判断は変わることがあります

 自己判断で薬を変えたり中止したりすると、母体の健康を損ない、かえって胎児・乳児に悪影響
を与える恐れもあるため、必ず医師・薬剤師など専門家の指示を仰ぐようにしてください。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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コメント

    • Fizz-DI
    • 2016年 1月 25日

    コメントありがとうございます。
    ご指摘の通り、「妊娠中→授乳中」の誤表記がありました。
    お詫びして訂正いたします。

    • IMO
    • 2016年 1月 25日

    妊娠中は、「Medications and Mothers’ Milk」という別の基準によって、乳児へのリスクを5段階で評価しています。
    妊娠中→授乳中の誤記ではないかと思われます。

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薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)
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【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
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【講演・シンポジウム等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
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