ピロリ除菌中、お酒を飲んではいけないのは何故?~二次除菌の「メトロニダゾール」とアルデヒド蓄積
記事の内容
回答:二次除菌では、アルコールの分解を邪魔する薬を使っているから
ピロリ除菌の際は、お酒を控えるように言われるのが一般的です。
特に二次除菌では、アルコールの分解を邪魔する作用を持つ『フラジール(一般名:メトロニダゾール)』を使うため、少量のお酒で頭痛や吐き気などを催す恐れがあるからです。
これは、お酒を嫌いにさせる「嫌酒薬」と同じ作用です。
なお、一次除菌で『フラジール』は使いませんが、そもそもピロリ除菌の際は下痢や胸焼け・口内炎などの副作用が起こりやすい状態なので、一次除菌であっても飲酒は控える・量を少なめにすることをお勧めしています。
回答の根拠①:「メトロニダゾール」によるアルデヒド脱水素酵素の阻害
ピロリ菌の二次除菌で使用する「メトロニダゾール」には、アルコールの代謝・分解過程のうち、「アルデヒド脱水素酵素」を阻害する作用があります1,2)。
そのため服薬中に飲酒すると、体内では「アセトアルデヒド」の濃度が高まり、頭痛や吐き気といった「二日酔い」と同じ状態になります。
1) フラジール錠 添付文書
2) Br J Clin Pract.39(7):292-3,(1985) PMID:4027157
飲酒によって除菌成功率が低下するといった報告は特にありませんが、特に二次除菌中は飲酒を控えるようにしてください。
※「メトロニダゾール」を含む薬の例
フラジール
ランピオン・・・・PPIの『タケプロン』を使った二次除菌のための3剤セットの薬
ラベファイン・・・PPIの『パリエット』を使った二次除菌のための3剤セットの薬
ボノピオン・・・・P-CABの『タケキャブ』を使った二次除菌のための3剤セットの薬
回答の根拠②:「メトロニダゾール」を使わない一次除菌でも控えた方が良い理由
ピロリ菌の一次除菌では「メトロニダゾール」を使わないため、上記のような嫌酒作用を起こすことはありません。
※一次除菌の薬
PPI/P-CAB + アモキシシリン + クラリスロマイシン
※二次除菌の薬
PPI/P-CAB + アモキシシリン + メトロニダゾール
また、飲酒によって除菌成功率が下がるという報告も今のところ無いため、「絶対に飲酒を止めなければならない」というわけではありません。
しかし、ピロリ除菌の際は薬を3種使い、更に使う抗菌薬の量も多めで、もともと下痢や胸焼け・口内炎などの副作用が起こりやすい傾向があります。
こうした副作用は飲酒によって強まってしまう恐れがあるため、できれば飲酒を控える・量を少なめに抑えるといった対応をした方が無難です。
薬剤師としてのアドバイス:一次除菌でも二次除菌でも、お酒は控えるのがおすすめ
ピロリ除菌は、きちんと薬を飲みさえすれば、二次除菌までで9割以上の人が成功します。
もし二次除菌でも失敗した場合には、三次除菌以降を試すこともできますが、こうした治療は保険が効かないほか、実施している医療機関の数も少ないのが現状です。
敢えて除菌中にお酒を大量に飲むメリットは無いため、除菌中は一旦お酒を控える、あるいはお酒を飲まなくても良い時期を選んで除菌に挑戦する、といった対応をお勧めします。
+αの情報:除菌が成功したかどうかの検査前は、PPI・P-CABの服用に注意
除菌に用いるPPIには、ピロリ菌の活動を抑える静菌作用があります。そのため、PPIを服用中はピロリ菌の検査をしても、正確な検査結果が出ない恐れがあります。
ピロリ菌の検査を行う場合には、現在では最低でも2週間はPPIを中止してから検査を行うよう定められています3)。除菌後に検査をする場合には、服用する薬に注意してください。
3) 日本ヘリコバクター学会 「H.pylori感染の診断と治療のガイドライン(2016)」
また、P-CABの『タケキャブ(一般名:ボノプラザン)』でも同様に検査結果に影響する恐れがあるため、2週間の休薬期間を置くこと、とされています3)。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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