薬局の問診票は何のためにあるの?~質問の意図と、答えることによって得られる指導の例
記事の内容
回答:病院とは全く異なる意図、薬の安全・効果的な使用のため
薬局に初めて行った際、問診票の記入をお願いされます。
これに対して、「病院でも書いたのに、何故また書かなければならないのだ」という不満をよく耳にします。
病院では、正確な診断をし、最適な治療方法を選択するために、問診票を記入します。
薬局では、安全かつ効果的に薬を使うために、問診票を記入します。
体調の悪いときに面倒をおかけしている点はごもっともですが、病院と薬局では質問の意図も全く異なります。
詳しくお答えいただければ、それだけ薬剤師ができるアドバイスの幅も広がりますので、改めてご協力をお願い致します。
もし、問診票を書いても具体的なアドバイスを一つももらえない、という場合には、今すぐ他のまともな薬局や薬剤師を探す必要があります。
回答の根拠:問診票、それぞれの具体的な質問意図
住所・電話番号
もしお渡しした医薬品に重大な欠陥が見つかった場合には回収、新たな副作用が見つかった場合には注意喚起をするなど、持続的なアフターケアを行うことができます。
症状、診断名
窓口では症状や病名を声に出して言いにくいこともあります。そういった場合でも確実な処方監査を行えるように、問診票での記入をお願いするケースがあります。
極端な話、何らかのシステムエラーによって、全く症状に合わない他人の薬が処方箋に記載されている、といった可能性はゼロではありません。そのため、薬剤師は症状と薬が合致しているかどうかを確認する職務上の義務があります。
これまでに起きた薬の副作用
以前に薬で副作用が起きた場合、同じ成分の薬はもちろんのこと、同じ系統の薬でも同様の副作用が起こる可能性があります。
ここに正確な副作用歴が記載されていれば、二度目の副作用を未然に防ぐことができます。
他の医療機関で治療中の病気
例えば、アレルギーの薬には緑内障や前立腺肥大の症状を悪化させるものがあります。また、痛み止めは胃・十二指腸潰瘍の症状を再発させる可能性があります。
ここに正確な病歴が記載されていれば、こうした病気を悪化させるような副作用を未然に防ぐことができます。
服用している薬やサプリメント
薬には飲み合わせの悪いものが多数あります。一見、何の関係もなさそうな水虫の薬と睡眠薬でも健康を害する可能性のあるものがあります。
また、鉄やカルシウム・マグネシウム・亜鉛などの金属元素や、クロレラやセイヨウオトギリソウなどの成分を含むサプリメントや健康食品でも、薬の効果に大きな影響を与えるものがあります。
自分の身を守るためにも、服用している薬やサプリンメントは正確に薬剤師に伝えるようにしてください。
提示したお薬手帳に全て記載してある場合には、いちいち書かなくとも、その旨を伝えるだけでもOKです。
自動車運転など
薬が関係した自動車事故は、近年盛んに報道されています。
アレルギー薬など、副作用で眠気を催すものがあります。また、瞳孔を開く目薬などを使うと、通常の日差しでも目が眩むようになるものがあります。
こういった薬を使用した後、何も気にせず普段通りに自動車の運転をしたり、高所など危険な場所で作業することは、危険です。
不要不急の場合は運転や作業を交代してもらうなどの対応をし、交代できない場合でも普段よりも注意深く運転・作業するよう、念押しの注意喚起を行います。
食事の回数、時間
薬は、食前や食後など、基本的に食事のタイミングと関連して処方されます。これは、食事は朝・昼・晩と、ある程度決まった時間に規則的に行われることが多いからです。
しかし、人によっては朝食を食べなかったり、朝食と昼食の間が短かったり、夕食の時間が不規則であったり、生活スタイルは様々です。
そういった場合でも、薬の効果が切れたり、副作用が出たりしないような服用間隔、服用方法を、その人の生活スタイルに合わせてアドバイスすることができます。
お酒
薬の中には、効果・副作用に大きく影響するためアルコールを控えるべきもの、アルコールの酔い方が悪くなるので控えた方が良いもの、適量であれば問題ないものの大量の飲酒は控えるべきものなど、様々なものがあります。
そのため、どの程度の飲酒量かが正確にわかれば、そのままで良いのか少し減らした方が良いのかなど、より的確なアドバイスが可能です。
タバコ
喘息の治療薬「テオフィリン」など、タバコによって薬の効果に影響するものがあります。また、こうした薬を服用中、喫煙を急に止めると、薬の効果が強くなったり弱くなったりする可能性があります。
タバコとの相互作用のある薬は多くはありませんが、正確に伝えておくことで、余計なトラブルを防ぐことができます。
飲めない剤型
色々な剤型が販売されている薬であれば、薬剤師から医師へ剤形変更を打診することもできます。ただし、錠剤とカプセルとで保険適用が異なる薬などは、変更することができません。
カプセルが飲めないからといって分解したり、錠剤が大きいからと砕いたりすると、薬の効果に影響し、副作用を起こすこともあるため、勝手に薬に手を加えないようにしてください。
妊娠と授乳
添付文書上では、妊娠や授乳に対しては画一的な表記しかされていません。そのため、この情報に基づいたWeb上の情報もまた、ほとんどの薬が”使えない”ことになっています。
こうした情報を鵜呑みにして、自己判断で服薬を中断してしまうと、母体の健康を損ない、母子ともに大きな悪影響を与える恐れがあります。
医師・薬剤師は、添付文書の情報だけでなく、FDA基準やオーストラリア基準など、様々な安全性評価と、その人の症状からメリット・デメリットを総合的に考えて薬を使います。妊娠・授乳をしている場合には、その旨を必ず医師・薬剤師に伝え、相談するようにしてください。
子どもの体重
小児の薬は、体重1kgあたりの用量が定められています。そのため、同じ5歳の子どもでも、大きな子と小さな子では薬の量が異なる場合があります。
最新の体重を正確に薬剤師に伝えるようにしてください。
ジェネリック医薬品(後発品)への変更
厚生労働省は、医療費削減のためにジェネリック医薬品の使用を推進しています。全てをジェネリック医薬品に変える、全て変えない、といった極端な選択は、あまり賢いとは言えません。
ジェネリック医薬品に変更するメリットとデメリットを正しく理解し、薬の種類や差額によって個別に選択することをお勧めします。
薬剤師としてのアドバイス:適当に書くメリットはありません
面倒だといって、雑な問診票を書かれる方は少なくありません。確かに面倒なのはわかりますが、雑に書いてもメリットはありません。受けられるはずの指導を受けられないだけです。
何のために書かなければいけないのか、質問の意図がわからない場合には薬剤師に尋ね、何を答えれば良いのかを確認するようにしてください。
きちんと貴方の安全や健康を考えてくれる薬剤師であれば、質問の意図を説明し、答えた内容に応じた具体的な指導をしてくれるはずです。
もし、質問の意図も説明できず、具体的な指導もしてもらえないのであれば、きちんと頼れる薬局や薬剤師を別に探す必要があります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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