『セフゾン』と、鉄剤の飲み合わせが悪いのは何故?~3時間の服用間隔をあける意義と、キレート形成の種類
記事の内容
回答:『セフゾン』の吸収が悪くなるから
『セフゾン(一般名:セフジニル)』は、鉄を含む薬やサプリメントと一緒に服用すると、吸収率が90%近く低下してしまいます。
その結果、薬としての作用を十分に発揮できず感染症を治療できないばかりか、耐性菌を生むリスクにもつながります。
『セフゾン』と鉄剤との併用はできるだけ避け、やむを得ない場合でも3時間以上の間隔をあけて服用するなど、同時服用しないよう注意が必要です。
鉄は、『フェロミア(一般名:クエン酸第一鉄)』など鉄を含む貧血薬のほか、栄養補助食品やサプリメントなどにも含まれていることの多い金属元素です。
病院や薬局ではお薬手帳で併用薬を確認してもらうだけでなく、服用中のサプリメントなども必ず医師・薬剤師に伝え、適切な服用方法の指導を受けるようにしてください。
回答の根拠:3時間あけて服用する、という次善策
『セフゾン』は、鉄剤と同時服用すると、吸収が90%近く低下することが報告されています1)。
1) セフゾン錠 インタビューフォーム
当然、90%も吸収が低下してしまうと、薬としての役目を果たすことはできません。そのため、基本的に鉄を含む薬やサプリメントとの併用は避ける必要があります。
しかし、貧血の治療などで鉄剤をどうしても併用しなければならないケースもあります。その場合は同時服用を避け、3時間以上の間隔をあけて、それぞれを別々のタイミングで服用する必要があります。
3時間の服用間隔をあけることで、25%程度の吸収低下にまで軽減することができます1)。
ここで注意すべきは、3時間あければ全く問題ないというわけではなく、3時間あけても25%程度の吸収低下が起こる、ということです。
貧血治療などでやむを得ない場合を除き、サプリメントなど不要不急のものであれば併用は避けることをお勧めします。
また、『セフゾン』は何週間も続けて服用する薬ではありません。状況によっては、『セフゾン』を服用する間は一時的に貧血の薬を中断する、といった対応をするケースもあります。
こうした判断は、その人の感染症や貧血の状況を見極めた上でのものですので、自己判断では絶対に薬を調節せず、必ず医師・薬剤師の指示に従うようにしてください。
薬剤師としてのアドバイス:『セフゾン』だけではない、抗生物質と金属の相互作用
『セフゾン』と鉄に限らず、抗生物質と金属の相互作用には様々なものがあります。
金属を含む薬としてよく使われているものには、以下のようなものがあります。こうした薬、あるいは金属元素を含むサプリメントを服用している際は、必ずその旨を医師・薬剤師に伝えるようにしてください。
※金属元素を含む薬の例
マグネシウム:『マグミット(一般名:酸化マグネシウム)』などの便秘薬
鉄:『フェロミア(一般名:クエン酸第一鉄)』などの貧血薬
亜鉛:『プロマック(一般名:ポラプレジンク)』などの胃薬
アルミニウム:『アルサルミン(一般名:スクラルファート)』
ランタン:『ホスレノール(一般名:炭酸ランタン)』
薬に限らず、サプリンメントでも金属元素を含むのであれば同様に吸収の低下が起こることに注意が必要です。
サプリメントの服用について、医師や薬剤師には伝えていない、といったケースは多々見受けられますが、不利益を避けるために、必ず伝えるようにしてください。
なお、食品であれば、通常の食事として摂取している限り、急激かつ大量に摂取することはあまり起こり得ません。そのため、牡蠣など金属元素が豊富な食品であっても、常識の範囲内で食べることに神経質になる必要はありません。
+αの情報:キレートを形成する例
『セフゾン』と鉄は、同時に服用すると「キレート」と呼ばれる複合体を形成してしまいます。
鉄と「キレート」を形成してしまった『セフゾン』は、腸で吸収することができずそのまま排泄されてしまうため、薬として作用を発揮できません。
このように、「キレート」を形成してしまう抗生物質と金属は、他にも色々な組み合わせがあります。
※金属とキレート形成する抗生物質の例 2,3,4,5,6)
キノロン系
『クラビット(一般名:レボフロキサシン)』+アルミニウム・マグネシウム・鉄
『グレースビット(一般名:シタフロキサシン)』+アルミニウム・マグネシウム・カルシウム・鉄
『アベロックス(一般名:モキシフロキサシン)』+アルミニウム・マグネシウム・鉄
テトラサイクリン系
『ミノマイシン(一般名:ミノサイクリン)』+カルシウム・マグネシウム・アルミニウム・ランタン・鉄
『ビブラマイシン(一般名:ドキシサイクリン)』+カルシウム・マグネシウム・アルミニウム・鉄・ビスマス
2) クラビット錠 添付文書
3) グレースビット錠 添付文書
4) アベロックス錠 添付文書
5) ミノマイシン錠 添付文書
6) ビブラマイシン錠 添付文書
これらの組み合わせは、『セフゾン』と鉄ほど大きく吸収が低下するわけではなく、2時間以上の間隔をあけて服用することで影響を軽減することができるとされています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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