『アシテア』と『ミティキュア』、同じ減感作療法に使う薬の違いは?~抗原量と効果、錠剤の溶けやすさと漸増方法
記事の内容
回答:抗原量が多い『アシテア』、錠剤が溶けやすい『ミティキュア』
『アシテア』と『ミティキュア』は、どちらもダニアレルギーの「減感作療法」に使う同じ成分の薬です。
治療に使う抗原の量が多いのは『アシテア』、錠剤が溶けやすいのは『ミティキュア』です。
抗原の量は異なりますが、今のところ効果・副作用に大きな違いは確認されていません。そのため、薬の飲みやすさや、薬の量の増やし方によって使い分けるのが一般的です。
回答の根拠①:使われている抗原は同じ~全世界共通のダニ
「減感作療法」は、アレルギーの原因となる抗原(アレルゲン)を敢えて投与することで特殊な免疫反応を起こし、アレルギー反応を弱めてしまうという治療方法ですが、詳しいメカニズムはまだ明らかになっていません。
『アシテア』と『ミティキュア』は、どちらも「ヤケヒョウヒダニ」と「コナヒョウヒダニ」という2種の培養ダニの抽出液を精製した薬です1,2)。これは、ダニアレルギーの主な原因となる抗原(アレルゲン)が、全世界共通で「ヤケヒョウヒダニ」と「コナヒョウヒダニ」だからです3)。
1) アシテアダニ舌下錠 添付文書
2) ミティキュアダニ舌下錠 添付文書
3) Curr Allergy Asthma Rep.2(5):401-11,(2002) PMID:12165207
回答の根拠②:抗原量の多い『アシテア』~抗原量と効果・副作用の関係
『アシテア』と『ミティキュア』では、治療に使う抗原の量が異なります。
※『アシテア』と『ミティキュア』の投与量 1,2)
アシテア・・・・・初期量は100IR、維持量は300IR
ミティキュア・・・初期量は3,300JAU、維持量は10,000JAU
『アシテア』の100IRは19,000JAU、300IRは57,000JAUに相当するため4)、治療に使う抗原の量は『アシテア』と『ミティキュア』で大きく異なります。
4) アシテアダニ舌下錠 インタビューフォーム
『アシテア』と『ミティキュア』は、同じ条件で効果を検討しているわけではないため、単純に有効率を比べることはできません。従来、「減感作療法」を行う場合には、使う抗原量が多いほど治療効果が良いとされてきました5)が、5倍以上も抗原量が異なるにしては、治療効果や副作用にはそこまで目立った違いはありません。
5) 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol.93 No.10,(1990)
抗原量の多い・少ないが「減感作療法」にどういった影響を与えるのか、まだよくわかっていない部分も多く、これから使用実績が増えていく中で解明されることが期待されています。
JAU(Japanese Allergy Units)とは
JAU(Japanese Allergy Units)とは、日本アレルギー学会により設定されたアレルゲン活性単位です。
「コナヒョウヒダニ」と「ヤケヒョウヒダニ」のアレルゲンエキス22.2~66.7μg/mLが含まれるものを100,000JAU/mLとする、と定義されています6)。
6) Arerugi.63(9):1229-40,(2014) PMID:25492878
回答の根拠③:溶けやすい『ミティキュア』~崩壊までの時間
『アシテア』は、完全に溶け切ってしまうまで舌下に置いた後、飲み込みます1)。『アシテア』の錠剤は、およそ3分以内に溶けてしまうように設計されています4)。
『ミティキュア』は、舌下に1分間置いた後、飲み込みます2)。『ミティキュア』の錠剤は、10秒以内に溶け切ってしまう非常に溶けやすい薬です7)。
7) ミティキュアダニ舌下錠 インタビューフォーム
このことから、『ミティキュア』の方が溶けやすく、短い時間で服用できる薬と言えます。
薬の増やし方も違う
「減感作療法」では、急に薬を増やすと強いアレルギー症状「アナフィラキシー・ショック」を起こす恐れがあります。そのため、『アシテア』と『ミティキュア』も、少しずつ増やしていく必要があります。
※薬の増やし方 1,2)
アシテア・・・・・通常、100IRから始め、3日後に200IR、6日後に300IRまで増量
ミティキュア・・・通常、3,300JAUから始め、1週間後に10,000JAUへ増量
ただし、これはあくまで基本的な増やし方で、実際には使う人の状況に応じてもっと長い間をかけて増やしていくこともあります。
薬剤師としてのアドバイス:治療できる医療機関は限られている
『アシテア』と『ミティキュア』では、現在のところ治療効果や安全性に大きな違いは確認されていません。そのため、特に厳密な使い分けの基準もありません。薬の値段もほぼ同じため、現在のところは飲みやすさや扱いやすさといった点で使い分けるのが一般的です。
※薬価の比較(2018改訂時)
アシテア:100IR(63.90)、300IR(190.30)
ミティキュア:3,300JAU(64.70)、10,000JAU(189.40)
ただし、減感作療法では「アレルギーの原因物質を摂取する」ことから、急激なアレルギー症状(アナフィラキシーショック)を起こすリスクがあります。そのため、十分な対応がとれる医療機関でしか処方・調剤してもらうことができません。
ポイントのまとめ
1. 『アシテア』と『ミティキュア』の成分は、どちらも同じ2種のダニ抗原
2. 『アシテア』は抗原量が多く、『ミティキュア』は10秒で溶ける
3. 抗原の量は多い方が良いのか、少ない方が良いのか、まだよくわかっていない
添付文書・インタビューフォーム記載事項の比較
◆使う抗原(アレルゲン)
アシテア:ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ
ミティキュア:ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ
◆適応症
アシテア:ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎に対する減感作療法
ミティキュア:ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎に対する減感作療法
◆製剤に含まれる抗原量
アシテア:100IR(19,000JAUに相当)、300IR(57,000JAUに相当)
ミティキュア:3,300JAU、10,000JAU
◆用法・用量
アシテア:1回100IRから開始、3日ごとに100IRずつ増量し、300IRまで増やす
ミティキュア:1回3,300JAUから開始、2週目に10,000JAUに増やす
◆錠剤の溶けやすさ(崩壊性)
アシテア:3分以内
ミティキュア:10秒以内
◆臨床試験での有効率
アシテア:平均調整鼻症状スコア(FAS)が-1.11(vs.プラセボ)
ミティキュア:総合鼻症状薬物スコアが-1.15(vs.プラセボ)
◆臨床試験での主な副作用の発生率
アシテア:咽喉刺激感(21.0%)、口腔浮腫(20.0%)、口腔そう痒(18.3%)、耳そう痒(10.4%)
ミティキュア:咽喉刺激感(12.9%)、口腔浮腫(16.9%)、口腔そう痒(14.5%)、耳そう痒44例(7.0%)ほか、喉や口の不快感(20.9%)など
◆製造販売元
アシテア:塩野義製薬
ミティキュア:鳥居薬品
+αの情報①:小児にも適応追加
『アシテア』と『ミティキュア』どちらも5歳以上での安全性と有効性が認められ、2018年2月に小児への使用が承認されました(用量同じ)。ただし、「舌下投与」が正しく行えることが条件です1,2)。
+αの情報②:アレルギーの原因になる「ダニ」の除去にも注意を
ダニアレルギーの対策には、アレルギーの原因となる「ダニ」を生活環境からできるだけ除去することも大切です。
医療機関でもダニ対策のパンフレット等が配布されていますが、独立行政法人「環境保全機構」がダニ対策の方法をYoutubeに動画でアップしているものがあり、非常にわかりやすくまとまっています。
▼独立行政法人 環境保全機構「ダニ対策の実践 5/6」
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
【追記】
独立行政法人 環境保全機構のダニ対策動画を「+αの情報」に追記しました